1-12.初心者冒険者になりました!
「わかった。私からは以上だ。次にテオ、キミへの質問だ」
冒険者ギルドに来てアノドさんからの手紙を渡したら、なんとギルド長でもありこの町の町長さんでもあるカソドさんと面会することになっちゃったんだ。
ボクへの質問が終わったので、次はテオに質問するようだよ。
「キミはドラゴン族なのだな?」
「おう!見ての通りだぜ!」
「なぜライとともにいるのだ?」
「それはどういう意味だ?オレが誰と一緒にいようが、アンタには関係ないだろ?」
「かつてドラゴン族は地上にいる魔獣を退治してくれていた。しかし、災厄戦争の末期にドラゴン族の力に人族が手をつけてしまい、身の危険を感じたドラゴン族は全員この地上を去った。この伝説は本当だろ?」
「ああ、事実だぜ。もっとも実行したのはご先祖様で、オレ自身は経験してないけどな」
「ドラゴン族は人族を忌み嫌ってるはずだ。なのになぜ、人族であるライと一緒にいるのだ?」
「悪いがそれには答えられないな。それに、その『ドラゴン族が人族を忌み嫌ってる』ってのは間違いだ。確かに人族はドラゴン族に対してひどいことをしたのは事実だ。だけど、それはいずれ起こることだとわかっていたからな」
「なんだと!?そうなのか!?」
「ああ。だから、その時が来てしまったと知ったから、あっという間に地上を去れたんだよ」
「事前にそうなると知ってたのか···」
「それにその戦争の前、今から1000年以上前にも同様のことがあったんだよ。その時は人族じゃなくて異世界の神が原因だったが、それで黒竜が滅びかけたんだ。さらにはドラゴン族と交流が深い種族は同じく人族に騙されて滅びかけたんだ。さすがにそこまでは知らんだろう?」
「そんな事が···!?」
「ドラゴン族は人族よりも長寿だからな。そのあたりの記録も残ってたのさ。だからその考えはおそらく、ドラゴン族が去ってスタンピードが頻発してしまった時に人族が勝手に考えた戒めなんだろうな」
「そういう事だったのか···」
「どうもあのじーちゃんは昔に金竜に出会ったって言ってたな。オレの他にも地上にいるのかもしれないけどな」
「では、テオは人族のことは?」
「なんとも思ってねぇよ。オレはオレの意思でライと旅をする。ただし、オレに盾突くヤツがいたら命はない。それだけだ」
「わかった。これ以上は聞いてもムダのようだな」
「わかってくれて嬉しいぜ!」
今、ボクは新事実を知ってしまったんだ···。1000年以上前、つまりアキさんたちが生きていた時代にも、ドラゴン族が滅亡寸前までになってしまった事があったんだね···。だから浮遊大陸へみんな避難しちゃったんだ。
コンコン!
ちょうど質問が終わると、扉がノックされた。
「入れ」
「失礼します。冒険者証ができました」
「わかった。ライ、テオ。私からは以上だ。ここからはこのポーラがキミたちを担当する。今日1日はギルドにて冒険者について知り、そして準備をするがいい」
「はい。ありがとうございました!」
「ありがとな!」
「···生き残れよ」
「えっ···?はい」
「それじゃ、二人はこちらへ」
ボクたちはカソドさんの部屋から退出して、次はポーラさんの後に続いて別室へ向かったんだ。
「はい!ではライくんとテオくんね。まずは自己紹介ね。あたしはポーラ。初めて冒険者となった人に冒険者について説明する担当なのよ。よろしくね!」
「「よろしくお願いします」」
「礼儀正しいわね~!下の連中にも見習ってほしいものだわ~。まずは冒険者証ね。身分証も兼ねてるから、キミたちの身分証は悪用されないようにこちらで回収して処分させてもらうわね」
「えっ!?」
「冒険者証には身分証と同じことが書いてあるから大丈夫よ~。ほら!」
冒険者証には『Fランク 出身地:マイカ村』って書かれていたよ。ちゃんと村の名前も書かれていたので安心したんだ。でも···、このFランクって?
「ああ、ランクの説明をしてなかったわね!それは冒険者の『信用度』を表しているの。依頼をちゃんとこなして依頼主から感謝されると信用が上がって、所定のポイントを超えるとCランクまでは自動的に上がるのよね~。それ以上はギルドの中央本部で審査があるのよ」
「へぇ~。ボクとテオは最初だからFなんですね?」
「そういう事。最上級はSSSランクなんだけど···。ここまで上り詰めた人は現在1人だけね」
「すっげーヤツがいるんだな~」
「この町をお作りになったアノド様ですらSSランクだったしね~。次はお仕事の受注方法ね!入った時に壁に張り紙があったでしょ?」
「はい。みんな真剣に見てましたね」
「あれが依頼掲示板ね。早い者勝ちだから、みんな早朝から探しているのよ。依頼にはランク付けがされてるわ。現状のランクよりも1つ上までしか原則受注できないから、注意してね」
「ということは、ボクたちはEランクの依頼までですね?」
「賢いわね~!そういうことよ。ちなみにランクが上がれば受け取る報奨金も多くなるし、町で冒険者証を見せたら割引してくれるお店もあるわよ~。ギルド内のお店も割引してくれるわ」
「へぇ~。それは便利そうですね」
「依頼を受ける場合は張り紙をとって受付で手続きをしてね。2つ以上受注してもいいわよ。ただし、期限があるから気を付けてね。破ったら罰金とか降格とか冒険者証はく奪なんて処分もあるからね」
「わかりました」
「あと、Fランクだったら関係ないんだけど、ランクが上がったら強制的に依頼されたり指名依頼なんてのもあるわ。強制的な依頼は魔獣に町が襲われた!といったところかしらね?今のところ月に1回程度あるぐらいね。それほど規模が大きくないからみんな率先して受けてくれるけどね!お金もいいし」
「そうなんですね」
「あと、魔獣退治依頼を請けた場合に素材とかを売却できるのよ。受付カウンターの右側にあるんだけどね」
「あ!あのカウンターはそういうことだったんですね?」
「あら?もう知ってたのね。なら話は早いわ。素材収集依頼なんてのもあるけど、品質が悪かったら達成にならない場合もあるから、気を付けてね!」
「あの~?ボクたち、ここまでくる道中で魔獣を退治しちゃったんですけど、その素材って買い取ってくれるのですか?」
「···え?魔獣を退治したの!?そりゃものによっては買い取るけど···、どこに持ってるの?」
「このカバンにしまってます。下で出した方がいいですか?」
「量が少ないようだから、ここじゃダメなのかしら?」
「この部屋の床全部の大きさになると思いますけど···」
「···ちょっと待って!?ライくん、もしかしてそのカバンはマジックバックなの!?」
「え?マジックバック?」
「見た目以上に収納できる超貴重品よ!?古代遺跡でまれに発掘されて、お店で売ってるとしたら10億ジール以上はするわよ!?」
「ええーーー!?こ、これって、そんなにするんですか!?」
「···あ~、だからギルド長直々に出ちゃったのかぁ~。ライくん?買取は裏で担当者を限定して行うわ。でないと、下の連中に強奪されてしまうわ!何か用がある時は必ず受付で私を呼んでね!」
「わ、わかりました···」
「こりゃとんでもない大型新人だわ···。それじゃ、さっそく裏へ行きましょうか!」
う~ん···。賢者の遺産ってすごすぎたんだなぁ~。これ以上は見せちゃマズそうだよ~!
今回テオくんが語った過去の話は前作の『アキの異世界旅行記』のお話で登場したエピソードですね!
こういった細かい部分については歴史として伝わってないんですね。そもそも歴史というのは強者が作ってしまうというのが現代でもありますので、不都合な部分や隠したい部分については一切伝わることはありません。
そして今回冒険者にはランク制度がついていることが判明しました。1000年前ではランク制度ってなかったんですが、新たに登場していました。これにも理由があり、この後明らかになりますよ。
さて次回予告ですが、初心者冒険者となったライくんたちは冒険者ギルドの施設の説明を受けるために素材買取コーナーと武器屋に案内されます。ここでもライくんの持つ神器にびっくりされてしまいます。
それではお楽しみに~!




