6-24.レクト奪還大作戦!その3
ボクたちは中央本部に向けて走っていた。道中にも魔獣化してしまった人たちや魔獣同化能力者たちが襲いかかってきた!
やっぱり羽が生えたり、ありえないところから腕が生えてたりとむちゃくちゃな魔獣が多い!
ただ、多少なりとも人としての知性があって手ごわいはずなのに、今の魔獣は普通の魔獣とそう変わりない程度の知性なんだ。作戦とか連携とかも一切なく、見かけたら攻撃してくる!といった感じだ。
ただし、パワーがすさまじい!竜モードのアルブさんが力で押し返されるほどのパワーなんだ!でも、トルムはどうもやりやすいようで、
「確かにパワーはすさまじいですね。でも···、当たらなければ意味はないですよ!!黒竜怒掌!!」
ズドーーーーンッ!!
「グハァッ!?」
「ふぅ~。力一辺倒なので対処しやすいですが、いかんせん数が多いですね」
だいぶ対処の方法がわかったようで、苦戦することなく倒していった。
そうして···、ついに中央本部に到着した!
「それじゃあ、オレとヴィンター、アルブでここには誰も入れんようにしておく。まぁ、戦闘状況によっては建物がなくなるだろうけどな」
「ありがとうございます、エムスさん!ここからはボクたちSランク組で対応します!」
「···気をつけるのですよ」
「···(コクン)ママも」
そして、ボクたちは中央本部の建物に入った。中の大ホールは誰もおらず、気持ち悪いほど静かだった···。
依頼掲示板を見ている冒険者も、食堂でお酒を飲んで騒いだり、ちょっとしたことでケンカをしていた冒険者も···、食堂のおばちゃんも受付の人も、武器屋のおっちゃんも···。
誰一人おらず、ホールには倒れたり壊されてるイスやテーブル、依頼掲示板が散乱していた···。
ホールに入って警戒しているボクたち。すると、奥から2人の男が出てきた!1人はボクたちを追い出した総帥と···、サムがキャビの町で見たという男のようだ···。
「フンッ!もうここまで来たか···。町のゴミどもでは足止めすらならんかったか」
「ここまでの大量のドラゴン族を呼ぶとは···。どこまでも我らの邪魔をしてくれるな!」
···なんだ?こいつらは?町の人を魔獣同化能力者にしたのに、何てことを言うんだ!?
「ゴミだなんて···。なんでそんなに酷いことを言えるんですか!?」
「役割も果たせぬ道具はゴミだろう?全生命力を瞬間的に使い果たすよう仕込んでパワーアップさせたというのに···。お前たちも使えぬ道具はゴミとして捨てるだろ?同じ事だが?」
「まさか!?『アニマ・ルイナ』を!?」
「テオ!?ま、まさか!?」
「ほう?古代の禁忌魔法を知ってるとは···。さすが寿命だけは長いドラゴン族なだけあるな」
「何をーー!?」
「テオ!挑発に乗っちゃダメ!···あなたたちを倒す前に聞きたいことがあります」
「なにっ!?」
「クソガキィ···!!」
ボクの挑発は効いたみたいだね。総帥がさらに怒った顔になったよ。
「あなたたちの目的はなんなのですか!?関係ない町の人たちまで魔獣同化能力を無理やり与えるなんて!!」
「はっ!ガキにはわからんよ···。なぜ人は魔獣と争ってるんだ?」
「···は?それと何の関係があるんです?」
「簡単なことさ。魔獣は人を襲い食う。そして、お前たち人も魔獣を襲って食い、素材としている!」
「それが?当たり前ですよ。火の粉が降りかかるなら払うでしょ?」
「そして、その戦いはこの世界ができてから、一切終わってない。どうしてだ?」
「············」
「ガキよな···。こんな簡単な問いにすら答えられんとは···。生物の頂点に立ってないからだよ」
「え···?」
「生物の頂点、つまり、すべての生物を支配することだ!これまで魔獣は、その強大な力で人を何度もねじ伏せようとした!しかし、人は知恵でそれに卑しくも対抗してきた!」
「············」
「結局は膠着状態が長く続いた···。そのバランスを崩したのが災厄戦争だったのだよ」
「···意味がわからないです。それのどこが目的なんですか?」
「···これだからガキは理解しない。今は魔獣側が優勢だ。人は残りわずか···。だが、それでも生き残ってる。そこで我らは考えた。人が魔獣の力を持てば、すべての生物の頂点に立てるとな!」
「それがあなたの目的···?」
「そうだ!古き魔獣も人もひれ伏せ、次の頂点に立つ者は、我ら魔獣同化能力者!そして『魔獣人』なのだよ!」
「『魔獣人』?ですって?」
「そうだ!魔獣のパワーと高度な知性を持つ人の力を併せ持った最強の戦闘生物!神が創りしドラゴン族や神狼族を超える存在!それが魔獣同化能力者であり、魔獣人だ!我らが頂点!我らによって、世界から争いは起こらなくなるだろう···。そんな崇高な考えに···、貴様らは邪魔だ!」
そういう事か···。この人たちは魔獣と人を超えた存在を創って、力で支配しようって考えか···。
争いがなくなれば、確かに平和だ。でも、その形はいびつだ。みんなが幸せにはなれない平和だ!
「そんな考えは間違ってます!」
「ほう?どこが?」
「あなたも人だったんでしょう?どうしてそこまで魔獣の肩を持つんですか?魔獣と人とは共存できません。神様も···、ドラゴン族や神狼族を創った理由は魔獣討伐です!ですから、ボクたちはあなたたちを倒します!」
「フンッ!あくまで人を頂点に立たせるのが正しいと···。我らは魔獣、そして魔獣人を頂点とするのが正しいとする!もはや話し合う余地などない!」
「そうですね···。これ以上話しても平行線ですね」
「その通り!我らを止めたくば、力でねじ伏せてみせろ!!」
「ええ!ここで悪夢を終わらせてやる!!みんな!いくよ!!」
ボクたちは一斉に構えた。しかし···、総帥ともう1人は構えもせずにまったくの無防備だ。
何か、あるぞ?
「どうした?あれだけの啖呵を切っておきながら、かかってこないのか?」
「···じゃ、私が」
ウインが前に出た。そして···、
「···皆伝秘技、秋風冽冽」
ウインの足元が白くなり、足元が急に冷えだしてきた!そして次の瞬間!
ズババババッ!!
「···凍れ」
パキーーーーン!!
···すごい!ウインが斬った斬り口から氷が突き出して、さらに氷漬けにしてしまったんだ···。
しかし!
「フフフ···。この程度か?」
「···だろうね。···この程度で親玉がくたばれば良かったけど」
なんと!?氷漬けにされてボロボロにされたのに平気そうだった!そして···!
「ぬぅおおおおおーーー!!」
パリーーーン!!
氷が砕け散ってしまったんだ···。キズも塞がりかけている。
「ふぅーーー。冒険者ギルドの情報にない技を使ってきおったか。どうやら、貴様らは手の内を隠して活動をしていたのだな?」
なるほど···。冒険者の時の情報は持っているってことか。となると、冒険者の時の技は対策されていそうだね。総帥のその言葉に対して、コルメが返した。
「当たり前でしょ?少なくともあんたたちほどのバケモノな魔獣はいなかったもの。奥の手を見せるなら、さらに奥の手は持ってるわ」
「ほう?誉め言葉として受け取っておくとするか」
「勝手にしなさい。もっとも···、それをほかの人に自慢なんてさせないけどね!」
さあ!ここからが本当の戦いだ!!
総帥たちの企みが明らかになりました。人が魔獣の力を得ることで進化し、生物の頂点に立って支配することでした。
支配欲というのは誰にでもあるものですが、総帥たちは究極の欲ですね。そこまで生に執着があるということです。
別のなにかの力を得ることで進化して···、という展開は昔からありますね。某ロボットアニメとか···。
本作ではその力を人類の敵側に求めました。その結果が今のレクトの状態ですね。
じゃあ人が、いいの?と言うと、必ずしもそうではありません。要はバランスが大事って事なんですよ。
さて次回予告ですが、ライくんたちは総帥と大男に立ち向かいます!しかし、攻撃が通じません!総帥はなんの魔獣と同化してたのでしょうか?
明日と明後日は夜勤なので朝に投稿します。
明後日で第6章完結なので、明後日は昼にネタバレ集を投稿します。
それではお楽しみに〜!




