6-20.サム、再度潜入任務をする!後編
オレはレクトの国に潜入して情報を収集している。今は敵の本拠地になってしまったギルド中央本部2階の事務所の天井裏に忍び込んでる。
事務所には数人いるようだな···。なんせ覗き穴がないんでな。わずかな声だけしか聞こえない。天井がちょっと分厚いから音が通らないんだよな〜。
だが、うちの一家の暗殺術にはわずかしか聞こえなくてもはっきりと聞くことができる便利な技があるんだぜ!
さてさて···、何を話してるんだ?
『ガハハハ!先日はうまくおびき出すことに成功したぜ!バカな連中だ!』
『やっぱり高ランクの冒険者証を見せたら、あっさり信用するわねぇ〜!食べられると思った時の驚いた顔と、恐怖して絶望した顔が最高だったわ!』
『ホント、人間はバカだよねぇ〜!ワナだと知らずにまったく警戒しないんだもん!あっさりと連れされちゃうからね〜!みんないい顔してたからおいしかったよ!』
『あの町の連中も、連れ去った犯人がまさか俺たちだなんて思ってないんだよなぁ〜!その俺たちが犯人だってのに、俺たちに依頼を出しやがるんだよ!ホント、笑っちまうぜ!ははは!』
話しているのは4人。声質からして最初のヤツから体格のいいおっさん、若い女、少年と若い男といったところだな···。
どうやら近くの町で人狩りをやったんだな···。冒険者証を見せて信用させて連れ出したか、商隊を丸ごとさらったのか···?
町では人さらいが横行したせいか、冒険者ギルドに依頼を出したのか···。そして来た連中が、よりによって魔獣同化能力者の冒険者だったってか···。金払って来てもらって、味方だと思ったら敵だったなんてひでえ話だな···。
こりゃ、バレたらレクトを奪還しても冒険者は信用されねえな···。それは後で考えるか!
そんな事を考えてたら、知ってる声が聞こえてきた!総帥と···、キャビの町でオレが相手した男だ!
「どうだ?食料は確保できたか?」
「おうっ!ペルトンもフランシスもイナの3つは問題ないぜ!」
「ちょっとずつ確保してるわ〜。でも···、もって2〜3ヶ月ってところかしらねぇ〜!」
「ぼく、最近どんどん食欲が増してて、前のペースじゃあ、おなか空いちゃうんだよ。成長期なのかなぁ〜?もっと早く食い尽くしちゃうかもねぇ〜!」
「連中はバカだから、最後まで俺たちの食料になってるなんて気づかないだろうなぁ〜」
「そうか。こちらでも順次手は広げているが、あまり遠いと効率が悪すぎる。今も何人かはチームで向かわせて、集団で連れ去るように指示している。思った以上に食料確保が難しいな···。失敗作が少なかったのもあるのだが」
「だって〜、もう人が住んでる町や村が少ないんだもん!そうだ!ぼく、いい事考えたよ!どうせなら、この国の中で繁殖させちゃえばいいんじゃない?」
「おっ!?それいいかもな!連れ去ってきて、無理やり繁殖させればいいんだ!」
「でもぉ〜、それって収穫するまでに時間がかかり過ぎない〜?」
「そうだぜ···。ある程度成長してないと、ガキ過ぎたらマズいからな···。せめて成人するくらいでないと···」
「それも長期的に我らが生きるためには必要だろう。そういえば先日向かわせたヤツは帰ってこないな···。途中で魔獣化して正気を失ったか···?まぁ、集団で連れ去る作戦を少々修正するとしよう。メスは繁殖に必要だから食うな。オスは食う事にしよう」
「え〜〜!?オスって結構不味いよ〜!ぼくはイヤだなぁ〜!」
「好き嫌い言わないの。今はガマンしておけば、すぐにおいしいエサを食べれるわよ!」
「では、今後は近場はほかの連中に任せて、ワシら『ベスティアリッター』が新規開拓に出るとするか!」
···どこまでもフザケた連中だ。お前らも元は人間だろ?もう人を食料としか考えてねえな。
予想通り、周囲の町の人間をちょっとずつさらってやがるのか···。一気に襲ったらすぐにいなくなっちまうからな。
今後はベスティアリッターなるあの4人が遠方の町を襲いに来るのか···。どうする?あの4人はまともに相手するとマズそうだな···。
とりあえず、もう少し様子をみるか···。日中の様子も確認したいしな。
しかし、ヤツらはこんな深夜だというのにまったく眠そうにないな···。もしかすると、睡眠がいらなくなってるのかもな。
どうやらベスティアリッターの連中は部屋から出たようだ。キャビの男と総帥のみになったようだ。
「なかなかいい出来になってるじゃないか?私とお前以上じゃないか?」
「そうだな···。これまで多くの能力者を作ってきたが、あの4人は驚くほどだ···。災厄戦争の際に現れたという『魔獣人』に近いだろうな。同化しても人の姿に戻れるというのもな」
「『魔獣人』···。神ではなく人によって創られた戦闘種族···。記録にも残っていない幻の存在が、ついに現れるとはな···」
「ははは!まぁ、食欲がハンパないのが欠点だが···。大量に人をさらってきて、ここで繁殖させればいいだけだ。繁殖力だけはあるからな」
「思った以上に食料問題が深刻化している···。かつての災厄戦争の時ならまだしも、今の時代に人が少ないというのがこういうところで問題になるとはな。ボイド様が魔獣同化能力者が多すぎとおっしゃったのはこういうことだったのだな。···計画を阻む者は?」
「人はいねえな。Sランクの連中ぐらいか···」
「未だしっぽを出さないな···。何か企んでるのかもな」
「そうだとしても、ここを攻略するのはムダだ。すぐに食料にしてやるさ!」
「···ふっ、そうだな。ここにいるのはSランクすら倒せるほどの連中だ。それに···」
「ああ。ちゃんと仕込みも済んでるからな!」
やっぱオレらを警戒してるか···。前回は無計画に突っ込んで返り討ちに遭っちまったが、今回はそうじゃねえ。後で目のものを見せてやるぜ!
それと···、気になる事を言ってたな···。仕込みだと?内容はわかんねえが、あいつら特定の連中以外は道具だと思ってやがるな···。
ホント、ひでえ話ばっかだな···。魔獣同化能力を持てたとしても、使い潰す気だぜ···。
さてと···。誰もいなくなったから、こんなところからズラかるぜ!
オレはまた煙突から屋根に出て、壁の外に出た。とりあえず夜の様子はわかった。あとは日中の様子だな···。少し休むか。
3時間ほど木の上で仮眠をとり、再び壁の内側に入った。誰もいない物見櫓の上がちょうどいいな。登って上から見下ろす。
ここからは暗殺術の『望遠鏡』で遠くまではっきりと見通す。魔獣同化能力者たちがどういう生活をしてるかを見ないとな。
生活は至って普通だった···。まぁ、見た目が魔獣になりかけてるやつがちらほらいるが、変な行動をしてはいないな。
そして、魔獣も自由に闊歩していた。まさに共存だな···。お互いを襲わない不自然な平和な状況で、信じられねえ光景だけどな。理性もねえし正気でもねえ。人の姿をしていても人かどうかもわからねえから、余計に不気味だぜ···。
こんな連中がほかの町にまで居やがるのかよ···?散歩してたらいきなり首を噛まれるなんてのは勘弁してほしいぜ···。
「グァアアア!!ヒト!ヒトヲクワセロォーー!オレガ!オレガァーー!キエテシマウーー!!ギャアアア!!」
ある場所で雄叫びを上げる人がいた。体はほぼ魔獣化してしまっているな···。ということは···、自我が失われて心まで魔獣に乗っ取られちまったってか···。
って、まさか!?町中をうろついてる魔獣は魔獣化してしまった人って事か!?
なるほどな···。だから襲わないんだ。姿が変わっただけって事でな···。
···よし。とりあえずこんなところか!さっさとおさらばするぜ!
敵方の主力がついに登場しました!総帥とキャビの町にいた大男含めて6人がラスボスとしてこの後ライくんたちと対決します。
というわけで、人数がめっちゃ多いので最終章のラストバトルはなんと17話連続という内容になってしまいました···。あまりに激闘で書くのに疲れ切ったので、実はコストダウンして人数を減らした世界線で書いてみたんですけど、そうすると話が薄っぺらくなってしまってボツになってしまいました···。
こういった経緯から、ここから先が大スランプになって書けなくなって苦しい状態が長く続くハメになってしまいました···。戦闘シーン苦手なのにね~。なんでこんな苦行をしちゃったんでしょうか?
しかし、それも昨日終わりました!完結確定しておりますので、どうぞご安心してお読みいただければと思います。
さて次回予告ですが、サムくんは無事にマイカ村に戻ってレクトの状況を報告しました。そして奪還作戦の決行は3日後に決まります。その会議の内容をお伝えしますよ。
それではお楽しみに~!




