1-11.ギルド長からライへの質問
先日、風邪で朦朧としている中でカッターを使った際に気づかずに左親指をザックリ切ってしまいまして···orz
というわけで本日は指の治療で松江しんじ湖温泉にやってまいりました!
松江しんじ湖温泉の泉質は塩化物・硫酸塩泉でして、塩化物泉の殺菌作用と硫酸塩泉の軟膏の作用によって切り傷の治りが早くなるとされており、特に硫酸塩泉は別名『きずの湯』と呼ばれてるんですね~。
まだ本調子じゃないので、ドライブは危険と判断して電車で来れる硫酸塩泉の温泉地として松江しんじ湖温泉にしたんですね。ドライブなら兵庫県浜坂にある七釜温泉がお気に入りなんですけどね~。
ついでに松江城で満開の桜の花見をしてきました!外国人だらけでした(笑)。インバウンドはさんいんちほーにも来てましたね~。さんいんちほーはいいところが多いですよ~。
「次の方~!受付しますよ~!」
隣のカウンターに並んでいた冒険者の人と言い合いしてたらボクたちの番になっちゃってたよ···。
「あら?かわいらしい子ね。冒険者じゃないんでしょ?どうしたのかな~?もしかして依頼?」
「おはようございます。ボクはライ。こっちはテオです。旅をしていて、ここで装備を整えろ!って言われて来たんです」
「え!?旅をしているの!?···本当に?」
「はい。ボクが住んでた村が魔獣に滅ぼされて···。それで今はいろんなところを見て回ろうと思ってここまで来たんです」
「身分証はあるのかしら?」
「はい。こちらです」
「···ちょっと待ってね。···あった。確かに滅ぼされたって情報がこっちにも来てるから本当か」
「あと、昨日食堂で会ったおじいさんから、この手紙を受付で渡すように言われたんですけど···」
「どれどれ···。えっ!?こ、これは···」
「え?何か···?」
「ごめん!ちょっとそこのベンチに座って待っててくれるかしら?」
「は、はぁ···」
受付の人が慌てて階段を上って行っちゃったよ。驚いてたけど、あの手紙には何が書いてあったんだろうね?
10分後、大きな体格のおじさんが受付の人と一緒に降りてきたよ。すると、周囲がザワザワし始めた!···え?どういう事?
そのおじさんはボクたちが座っているベンチにやって来た!
「···なるほどな」
···え?どういう事?よくわからないけど、おじさんは変に納得しちゃったよ···。
「ついてこい」
そう言われて、ボクたちはそのおじさんの後を追っていったんだ。
さっき受付の人が上がった階段を上がり、一番奥の部屋に案内された。立派な部屋だったよ。奥に紙が両側にたくさん載った大きな机、壁には本棚があって、いっぱい詰まってたね。その机の前にあるソファにそのおじさんは座った。
「なにをボーっとつっ立ってる?反対側に座りなさい」
「あっ!はい!」
怒られちゃった···。おじさんの言うとおりに反対側のソファに座って、おじさんと対面した状態になったよ。
「アノド様の手紙は読ませてもらった。かなりワケありな子だとな」
「え?アノド様?」
「昨日食堂で会ったと言ったそうだな?あの方は···、この町の英雄だったお方だ」
「えっ!?」
「ただの酔っぱらったじーちゃんだったぞ!?」
「今は引退されて悠々自適な生活をされておられるのでな」
「どういった方だったんですか?」
「この町を一から作ったのだ。そして周辺から逃れてきた難民を受け入れ、ここまで発展させたのだよ。そして最上級のSSランクの冒険者だったのだよ」
「すごい人だったんだ···」
「そうは見えなかったけどなぁ~」
「確かにあのお方は周囲に気取られないようにされておられたから、知らない者からすればそうだろうな」
「手紙にはなんて書いてあったんですか?」
「『かなり危なっかしい2人組の子がいる。ワシの方で生き残る術を説教しておいたから、武器防具などの準備をアドバイスしてやれ。そして冒険者登録を特別に許可するように』との事だ」
「えっ!?」
「オレたちが冒険者だって!?」
「冒険者は一定以上の実力ある10歳以上との規定がある。それは、最低限身を守るための実力が備わってないとすぐに命を落とすからだ。あとは最低限の知識を持っている事も条件となっている。何も知らない子どもはだまされやすいからな。アノド様はキミたちには冒険者になれる資格が十分にあるとみられたようだな。私としては心配だが···、冒険者登録を承認する。今、受付で冒険者証の発行手続きを進めているから、それまでは私の質問に付き合ってもらおう」
「は、はい···」
なんだか、知らないうちにとんでもないことになってないかな!?冒険者···。それってボクでも大丈夫なのかなぁ~?
「自己紹介が遅れたな。私はここの冒険者のギルド長、そしてこの町の町長でもあるカソドという」
「ボクはライです」
「オレはテオだぜ!」
「ではまずライ。キミに質問する。キミの出身はマイカ村との事で、魔獣に滅ぼされたという情報が入ってきている。本当だな?」
「はい···。ボクは唯一の生き残りです」
「つらい目に遭ったのだな···。では、次の質問だ。どうしてそこまでの実力を身に着けているのだ?キミの体格には見合わない力を感じるのだが?」
「それは···。ごめんなさい。お答えできないです」
「それは、アノド様から『力を見せつけるな』との言葉を守っているからか?」
「···はい」
「私はこの町の町長、そしてギルド長でもある。得た情報については漏らすことは一切ない。だから、話してもらおうか?」
「···ごめんなさい。お話できません」
「なぜだ?」
「アノドさんから『他人を信用するな』と言われました」
「ギルド長を信用できないだと!?」
「···本当にごめんなさい!アノドさんは信用していますが、それでもこのお話はアノドさんすら話しませんでした!」
「···わかった。今の質問はなかったことにしてくれ」
「ありがとうございます」
「では次だ。旅をしているとのことだが、目的は?」
「ボクは村から出たことがありませんでした。村が滅ぼされ···、ボク一人では村では生きられないし、今まで村の外に出たことがなかったので、外を見てみたいと思ったんです。目的···、可能であればボクと同じ目に遭う人をなくしたいです」
「大きく出たな···。とてもその幼さで至る考えではないぞ?その志を下にいる連中に聞かせたいぐらいだよ。具体的にどうするのだ?」
「それは···、そうですね···。とりあえず魔獣を倒せばいいと思っています」
「ふむ···、なるほどな。アノド様が心配されたのも納得だ」
「え?」
「魔獣を根こそぎ倒してしまえば、キミみたいな人は本当になくなるかな?」
「そうではないのですか?」
「ああ。その考えはアノド様が現役時代に考えていた事とまったく同じなのだよ」
「えっ!?そうなんですか?」
「ああ。あの方はここら一帯の魔獣をかつて、すべて狩りつくしたのだ」
「うひゃ~!あのじーちゃん、すごいじゃねえかよ!?」
「しかし、結局はすぐに魔獣がやってきてしまったのだよ。そこでアノド様は再度狩りつくした上で、狩った魔獣の素材と報奨で得たお金で防壁を築き、誰もが安全に住める町をお作りになったのだ」
「す、すごい人だったんだ···」
「わかったか?魔獣を狩りつくしても終わりがないのだ。町を作ったのもそうした考えの延長戦で最初はうまくいったが、結局は受け入れられる避難民の上限を超える人々が集まってしまい、やむをえず外壁の内側に封じ込める方法を取らざるを得なかったのだよ。でないと食料は有限だからだ。全員がこのままでは飢えてしまうのでな」
「············」
「避難民を見捨てたのではないのは理解してくれ。可能な限りの援助はしているのだが、残念ながら全員には行き届かないのだ。しかし···、まさかアノド様とまったく同じ考えをする者がいたのは驚きだ。しかもその幼さでだ。もしかしたらキミは将来すごい人物になるのかもな」
「···ボクはそんなすごい人物になる気はありません。やれるだけのことをやるだけです」
「そう言い切れるのがすごいのだよ。キミは幼いのにまるで私よりも年上の大人と話している気分だ···。それも強さの秘密のひとつなのかな?」
「···はい。詳しく話せませんけど」
「わかった。私からは以上だ。次にテオ、キミへの質問だ」
カソドさんからの質問は終わった。まさかアノドさんが昔、ボクと同じ考えをしていただなんて···。でも、結局はうまくいかなかった。ボクは···、うまくいくのだろうか···?
なんと、ライくんとテオくんは特別に冒険者になってしまいました!
これにもちゃんと理由があります。それはこの後に明らかになりますけどね。
あと、カソドさんの話にも出ましたが、難民はおいそれと救うことができません。ある程度までなら援助できますが、食料などの物資のリソースには限度があります。最優先は町の住民です。その余りを捻出するぐらいしかできないんですね。現代ほど物資が豊かではないので、このあたりは非情にならざるを得ません。でないと共倒れして飢えてしまうからです。
そういった現実を、このあとライくんは見せつけられる事態になってしまいます。
さて次回予告ですが、カソドさんからテオくんに質問です。なんでライくんと一緒にいるか?などの質問に対してテオくんはどう回答するのでしょうか?
それではお楽しみに~!




