6-15.食うか食われるか!?
「レン!町の人たちを!ボクはこいつを!」
「大丈夫か!?人族はドラゴン族よりも弱いんだぞ!?」
「大丈夫!この神器の変装セットがあるから!」
「無茶すんなよ!」
「ありがとう!テオもレンを手伝ってあげて!」
「おう!気をつけろよ!」
「わかってる!さあ!いくぞーー!!」
「クソガキがーー!我らに歯向かったことを後悔させてやる!!」
魔獣同化能力者は斧を構えた。同化はまだしないようだね。人の姿を捨てるにはまだ早いのか、それとも人として未練があるのか···?
ボクも魔力剣を構える。相手もかなりできるようだ。スキがない!
「どうした?ビビっちまったかよ!?来ないならこっちからいくぜ!」
「秘技、斬月」
相手の攻撃が読めない以上、ヘタに突っ込むのはマズい。まずはカウンター技である斬月で攻撃パターンを見極める!
特に考えもなしに突っ込んできた?何かあるかもしれない!斧を振り下ろしてくる直前で斬月を発動させて相手の懐を横一文字に切り裂いた!
「うぐぅ!?」
「···え?」
···あれ?あっさり決まっちゃったけど?斧を落としてうずくまってしまったよ?
それが相手の作戦だって気づいたのはその直後だった!
「バカが!」
「なに!?ぐわっ!?」
うずくまった相手が急に動き出して、ボクに足払いをかけてきた!不意を突かれた形になって思いっきり倒れ込んでしまったんだ!
「くそっ!」
「もう遅いわ!死ねぇい!!」
隠し持っていたナイフを突き出してきた!避ける間もない!!
ドスッ!!
「へっ!ザコが!バカなガキだぜ!」
「バカじゃないよ。最初から一撃は受けるつもりだったから、これも作戦のうちだよ」
「なにっ!?バカな!?」
危なかったぁ〜!とっさに代わり身で受けたからノーダメージだよ。お互い化かしあいは引き分けってところかな?
やっぱりこの『なりきり!伝説の神狼族セット』はすごい!暗殺技も簡単にできちゃうから、さっきみたいに技を繰り出す時間が少なくても問題なく出せるのは助かるね!
さてと···。相手のお腹は切り裂いたはずなのに、もう傷が塞がってる···。やっぱり再生能力があるようだ。これは厄介だなぁ〜。以前にサムたちが相手した連中には肉片から再生しだしたって話もあるしなぁ〜。
「ちっ!テメェ、普通のガキじゃねえな?」
「そうだね。それなりに強い方とは思ってるけどね。上には上がいるけどさ」
「けっ!このまま見逃す気もねえな?」
「うん。魔獣同化能力者は全員倒させてもらうよ」
「そうかよ···。我らを食おうというのだな?」
「あなたを食べてもおいしくなさそうなので、遠慮します」
「そうか···。オレはお前を食ってみたい!それだけの強さだ···。食えばさらに強くなれるぞ!」
「そうですか···。ボクも食われるわけにはいきません。ここで···、殺らせていただきます!」
「やれるもんならやってみやがれ!!」
相手は斧を振り上げてまた突っ込んできた!振り下ろす斧を避けて一撃を加えようとすると、振り下ろした斧を今度はありえない速度で振り上げてきた!魔獣の力で筋力が増強されてありえない動きもできるようだ!
大きな斧なのに片手でナイフを振り回すように取り回してくる!重量と速度があるから、一撃でもくらうと非常にまずい!
「ちっ!ちょこまかと動きやがって···」
「そんなに身軽に動かれるとはね。これは思った以上に厄介だ」
「ははは!これこそが魔獣の素晴らしきパワーだよ!身体強化魔法も加わってるから無敵だぁ!貴様らみたいな弱い人をやめて、本当に良かったぞ!」
「そうですか···。アノドさんがかつて言っていた『力に溺れてる』って、こういう状況なんだな。他人がやってるのを見て初めてわかるよ」
「フンッ!生意気なガキだ!ではこれで終わりにしてやる!」
「じゃあ、ボクも新必殺技で相手しましょう」
「ぐぉおおおおおーーーーー!!」
「はぁあああああーーーーー!!」
お互い、次の一撃で決めるために力を蓄える!さらにボクはトランスもした!なりきりセットのおかげで強化されたボクのトランス!その力を今!思いっきり振るう!
「死ねぇーーーー!!」
「皆伝秘技!水鏡月虹!!」
···それは一瞬の出来事だった。ボクはその場を動いていない。
「···ガハッ!?な···!?なん···、だと···!?」
相手は胴を横一文字に真っ二つに切れていた。上半身と下半身が別のタイミングで地面に倒れこんだ。
皆伝秘技である水鏡月虹は、非常に単純な技だ。ただ横一文字に剣を振るうだけなんだ。けれども、その一撃は非常に切れ味が鋭い!魔力剣は魔力を込めれば込めるほど切れ味が増すけども、それにも限界がある。この技はそんな切れ味をさらに強化するべく、振るう一撃をさらに鋭くするために編み出された秘技なんだ!
剣速が月の光で見える虹が水面に映る時のようにはっきりと見えないぐらい素早いんだ。だから、相手もボクが剣を振るった事すら気づいていないぐらいだ!
「ク···、クソ···。ならば···!やむを得まい!!アッ!同化!!」
「なに!?この瀕死の状況で!?」
「グゥオオオオーーーー!!」
死の間際で同化を使ってきた!分断された上半身と下半身がつながって元に戻ったよ!?
そして···、4本足の巨体の魔獣の姿になった!頭には大きなツノまで生えてきていたよ!!
「フーーー!フーーー!ユルサン!!ユルサンゾーーー!!キサマラゼンイン!コノバデクイツクシテヤルーーー!!」
これはかなりやばそうだね···。それじゃあ···、こっちも奥の手を使うとするか!
「テオ!」
「おうよ!アレだな!」
「うん!それじゃあいくよーーー!せーーの!!」
「「インテグレーション!!」」
「ナ!?ナンダト!?」
周囲がまぶしい光に包まれ、それが収まると背中に白銀の翼をまとい、全身に白銀の鎧を着たボクが立っていた!
「ま!?まさか!?これがあたいの実家にあった秘伝書にも書いてある合体変身魔法!?」
「そうだよ、レン。アキさんとリオさんがかつてやっていた姿とは違うらしいんだけどね」
「か、かっこいいぜ!まさにヒーローだぜ!!」
ははは。ボクが『ひいろう』って、そんなかっこいいものじゃないけどね。さあ!これで終わりにしよう!
「タカガウスッペライヨロイヲキタトコロデ、ナニモカワルマイ!タタキツブシテヤル!!」
「『いくぞーー!!究極秘技、雷騰雲奔』」
「ナァッ!?メガーーー!?ギャアアアアーーーー!!」
そう、この技はボク自身が光り輝き、相手に対して無数に切りつける秘技だ!トランス状態でも繰り出せるけど、合体変身しているからさらに威力は増している!!
ボクの得意魔法である雷魔法も駆使した技だ。ボク自身が雷となって、すさまじい速さで相手を切り付けていく技だ!もちろん、剣には雷魔法付与されているから、切り口から雷が体内へ入って体の中までも焼き尽くしてしまうんだ!
「グ···、ウゥ···」
「···これで終わりです」
「アァ···、ワレラハ···、タベルガワニタッタノニ···。ホロボサレルノカ···」
「···そうです。あなたたちは、踏み越えてはいけない線を越えてしまったんです」
「フフフ···。ハハハ···。コンナギジュツヲウミダシタノモ、ヒトダゾ···?オマエタチモ···、イズレ···。グフッ!」
「············」
『ライ、気にするな。ただの負け惜しみだ』
「そうだね、テオ···。でも、こいつの言ってることも真実だよ。かつての人たちも···、死にたくないために力に溺れてしまったんだろうね」
『かもな···。でも、そんな時代はとっくに終わってる。これからは、オレたちが平和な未来を創っていくんだ』
「···うん。そういえばレンは?」
「こっちは終わってるぜ!みんな無事だ!」
「···よかった」
こうして、グランドの町の襲撃は終息に向かっていたんだ。
この魔獣同化能力者の言い分もある意味正しいんです。生き残るために劣勢側にそのままいるのか?と言われると優勢側になりたいという気持ちが出てきます。
そのために立場を変えるというのは今の世の中ではよくある事です。転職もある意味こういう考えからする場合が多いんです。
だからといって、ライくんはそれを許すことは絶対にありません。ライくん自身が魔獣に対して強烈な恨みとトラウマがあるためです。両親が殺されましたからね。幼少期のトラウマというのは強烈で、その後の人生を大きく左右してしまうんです。
今回のライくんは『なりきり!伝説の神狼族セット』のおかげで新必殺技を2つ出しました。ここからの新必殺技は4文字熟語を多用していきます。いい勉強になりましたよ。
さて次回予告ですが、グランドの町の中の様子をお届けします。グランドの町が襲われて防壁が破られた以上、次の襲撃もあると考えたライくんはある提案をします。どんな提案なのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




