1-9.食堂で出会ったおじいさん
ダイナモの町にたどり着いたボクたちは、門番さんからオススメされた『まんまる亭』という宿に宿泊することになったんだ。
部屋に入ると、ここもベッドが2つしかないシンプルな作りの部屋だったね。トイレと洗面は別だった。
それじゃあ、さっそく夕食をいただこう!フロントのお隣が食堂なんだよ。
うわぁ~!人がいっぱいだね!なんだか村の祭りみたいな雰囲気だよ〜!
「いらっしゃい!2人だね?」
「はい!」
「じゃあ···、そこの通路の奥の席でお願いね」
ボクたちは奥の方の席に案内された。イスは木箱で···、机は大きなタルだったね。へぇ~。こんな使い方があるんだね。
「注文は何にするんだい?」
「え?注文?」
「そこの壁に書いてるだろ?」
「ごめんなさい···。見てませんでした···」
「そうかい。この時間は混むから、早めに注文しないと売り切れるよ」
「わかりました!すぐに選びますね!」
···そういえばお店で食べたことってなかったなぁ〜。メニューを見ると、料理の名前の横に数字が書いてあるね。これが支払うお金なのかな?
いろいろあるんだけど、名前だけだとわかんないんだよね···。どれがいいのか悩んじゃうよ〜!
「う〜〜ん···。どれがいいんだ?」
テオも悩んでいたよ。すると、腰に剣をつけている顔が赤くなったおじいさんに声をかけられた。
「どうしたぁ〜?何にするか迷ってんのかぁ〜?」
「はい···。ボク、こういうところで頼むのは初めてで···」
「なら『オススメ!』って書いた品にしとけ。その店が自慢したい料理だぞ」
「なるほど···」
「あと、『定食』って書いてたらパンとスープがだいたいセットになってるぞ」
「ありがとうございます!助かりました!」
「子どもだけでこんなところにいるって事は···、お前さんら、避難民だろ?」
「そうなんですが、ボクたちは旅してるんですよ」
「···それなりの腕のようじゃな?」
「えっ!?」
「言わんでもわかるわい。ただの子どもじゃあないってな」
「すごい···」
「事情は知らんし聞く気もないが、その身なりだと悪い大人にだまされるぞ?」
「そうなんですか?」
「···こりゃマズいの。ちょっと説教してやるとするか。こっちに座れ」
「えっ!?でも···」
「いいから言う通りにしとくんじゃ。悪い事はせんからな!ホッホッホ!」
「テオ···?」
「まぁ、いいんじゃねえか?いろいろ聞き出してやろうぜ!」
「そうするか···」
ということで、どうやら酔っ払ってるっぽいおじいさんとお食事をすることになっちゃったんだ···。
そうそう!注文だけど、ボクは『お肉が日替わり!から揚げ定食』、テオは『分量はコックの気分次第!焼肉定食』を頼んだよ。どっちもオススメって書いてあったからね!
「さて···、自己紹介しておくかの。ワシはアノドという。かつて冒険者なんて荒くれた仕事をしとったのぉ〜」
「ボクはライです」
「テオだぜ!」
「さてと···、さっき事情は聞かんと言ったが、ちと1つだけ質問に答えてもらおうかの。なぜ旅しとるんじゃ?」
「村が魔獣に滅ぼされて···。村から出た事なかったので、いろんなところを見てみようと思ったんです」
「なるほどのう···。そっちのドラゴン族もおれば多少は問題なかろうな」
「じーちゃん、ドラゴン族知ってるのか?」
「まあな。若い頃に1回助けられたわい。命の恩人じゃなぁ〜」
「どんなヤツだった?」
「まぶしいほどの金色の髪をしとったのぉ。意味はわからんが、『ひーろー?の務めを果たしたまでだぜ!』と言っておったな」
「金竜だな···。親戚にもいたけど、オレ以外にもドラゴン族がいたんだな。···あれ?なんか聞いたことあるセリフのような気が···?」
「そんなわけで助けられた恩返しができそうだったんでな。それにライは危なっかしいのぉ〜」
「ボクってどんな感じで危なっかしいんですか?」
「···目じゃ」
「···目?」
「そう、目じゃ。ライの目は美しい。非常に透き通った青色で、純粋な目をしとる。しかし、その奥底には力強さもあるな。···かなり危険じゃな」
「そうなんですか···」
「まずワシからの1つ目の助言じゃ。『他人を信用するな』」
「えっ!?」
「もちろん、ワシを信用せんでいい。信用した時点でいいカモにされるでの。気づいた時にはもう手遅れ。金も武器も防具も、すべて根こそぎ盗られるでの」
「それは···、アノドさんの経験···、ですか?」
「···鋭いな。その通りじゃ。これから旅するなら、世界を観るじゃろう。···状況は日に日に悪化しておる。生き残るには弱いもの、バカなものを食う方が楽じゃから、ライがそのバカなものにならないようにするには···、相手を信用しないのが手っ取り早い」
「···わかりました。でも···、ボクはアノドさんを信用しますよ?」
「···なぜじゃ?」
「親切に教えてくれました」
「···テオと言ったな?ライは将来、大きな事をやらかすぞ?お主が気をつけてやれ」
「元からそうするつもりだぜ!」
「ちょっとテオ!?ヒドい!!」
「ホッホッホ!ライにはいい相棒がおるのぉ〜!」
「も〜!」
「こうして親切にしてくるヤツほど、陥れてやろうとする者がほとんどじゃ。甘い言葉には気をつけるんじゃぞ」
「わかりました!」
「···こりゃ、いっぺん痛い目をみんとわからんな」
話をしていたら料理がやってきたよ!ちょっと!?多くない!?その場でお支払いをしておいたよ。
「すっげぇ量だなぁ〜!いっただっきま〜す!」
「いただきま~す!うん!おいしい~!」
ボクたちが食べてる間、アノドさんはちびちびとお酒を飲んでいたよ。
「ふぅ~!おなかいっぱいになったよ~!」
「オレもだぜ···。オススメって品は外せないな!」
「さて、じゃ続きじゃ。2番目は『逃げるタイミングを見逃すな』じゃな」
「逃げるタイミング···?」
「ライ、それにテオはそこそこの実力を持っておるとみた。となると···、ここまでの道中で魔獣を倒したじゃろ?」
「はい。犬っぽい群れを倒しましたね(さすがにレックスデラックスは言わない方が良さそうだね)」
「オレが魔法でやったけどな」
「···マッドドッグの群れをやったのか!?はぁ~、これは思った以上に危険じゃな···」
「え?」
「今のお前たちは、すでに力に溺れておる。普通の人以上の力を持っているから、使いたくて仕方ないんじゃ。だから、引き際を見誤って自滅する。強いからこそ負けてしまって命を落とすんじゃ」
「············」
「心あたりありそうじゃな?まぁ、今気づいておいてよかったの。···だいたいこれに気付くのは人生が終わる時じゃ」
「············」
「特にライはいつ命をなくしてもおかしくないのぅ」
「え···?」
「ライ···。お主は村を魔獣に滅ぼされたと言ったな?お主の行動目標は···、『この世の中から魔獣をすべて殲滅し、これ以上自分と同じ目に遭う人をなくす』ではないか?」
「············」
「やはりな。それが『力に溺れてる状態』じゃ。じゃが、考え自体は崇高なものじゃ。じゃからこそ、『逃げるタイミング』を見逃してはならん。ライが命を落とせば、すべて意味がなくなってしまうからな」
「···はい」
アノドさんは···、何者なんだ?ここまで全部的確に言い当ててきてるよ。
ライくんにアドバイスしてくれるこのアノドさんはただ者ではなさそうですね~!引退した冒険者のようですが、相当実力がありそうな感じがしていますね~。
アノドさんを救出した金竜は前作のリオくんの孫であるアトラちゃんの子孫ですね!アトラちゃんはスマホに入っていた特撮ものにハマってしまい、必殺技を魔法で再現して前作では大暴れしていましたね。どうも子孫もヒーローに憧れて活動をしているようですよ。相手は悪人ではなくて魔獣ですけどね。地上の人々からすればまさにヒーローの活躍と言えるでしょうね~!
さて次回予告ですが、アノドさんのお説教の続きです。そして最後に一筆書いた手紙を冒険者ギルドの受付に渡せと言ってきます。そして翌日に冒険者ギルドへ向かいますよ~!
それではお楽しみに~!




