5-12.ライ、テオを救う方法を模索する
ここは···、どこだろう?
何もない···、暗い場所だった。どうしてボクはこんなところにいるんだろう?
魔法は···、使えそうにない。それにボクの格好は冒険者の格好だった。普段着じゃないけど、ボクはどうしたんだろうか···?
その時、目の前が急に明るくなった!誰かがやって来たけど、その人の背後が明るすぎて顔がよく見えないんだ···。誰だろう···?
『ライ。お前はまだ生きなきゃいけねえんだ。こんなところで倒れちゃダメなんだ!』
え···?どういう事?ボク、倒れてるの?そういえば体が冷えてきたような感覚がし始めたよ···。
『オレの命をかけて、お前を助ける!これを使えば···、もう会うことは···、ないだろうなぁ〜。ライと一緒に過ごすことができて···、楽しかったぜ!···元気でな』
そう言うと、その人がにこやかにほほ笑んだような気がした後、輝きだした!そして···、光る階段を上って行こうとしていたんだ···。
待って!?どこに行くの!?さっきの言葉は!?待ってくれーーー!!
「ん···?」
「おっ!?ライ!目が覚めたか!?」
「···サム?」
「大丈夫か!?どこか痛むところはないか!?」
「···ちょっとまだボーっとしてるけど、大丈夫みたいだね」
「良かった〜!もう1週間も意識が戻らなかったから···」
「え···?1週間···?さっきの人は···?」
「さっきの人?どういう事だ?」
「夢···?ボクを···、命をかけて···、助けるって···」
「···くっ!」
目が覚めたら、ボクはベッドで寝かされていたんだ···。そして、ボクの横にサムがいたんだ···。
夢の話をしたら、サムが苦しそうな顔をしたんだ···。どういう事なんだろう?
そういえばテオはどうしたんだろう?いつもなら横にいそうなんだけど···。
「サム···?テオは···?」
「············」
「え···?サム···?」
「テオに口止めされてんだけどよ···」
「どういう事?テオは?」
「············」
「答えて!テオは···!?」
「···お前の横にいる」
「···え!?」
サムがいる方とは反対側を見ると···!?そこには翼の生えた、小さな猫がいたんだ···。目を閉じたままだ。
「テオは···、瀕死のライを助けるために···、自らの命をかけて···、回復魔法を使ったんだ···」
「そ、そんな···!?」
「オレとウインが残る魔力すべて振り絞ってテオの魔力を、ほんのわずかだが残してやることに成功はしたんだ···。なんとか命だけは助かったんだが···、こんなちっこい姿になっちまったんだよ···」
「じゃ、じゃあ···。あの夢は···、テオだったんだ···」
「夢の内容はオレにはわからんが、ライを助けようという意思だったなら···」
「ボ、ボクのせいだ···。ボクのせいで···、テオの···、命を···」
「ライ!それは違う!絶対に違う!!」
「···サム?」
「···テオには口止めされてたが、もうそんなの知るか!テオがどんな気持ちで命をかけてライを治したのかを言ってやる!!テオは···、お前に感謝してたんだ。本来なら生きてるはずがないのに、病のない体でお前と一緒に過ごせたのが、夢のようだってな!!」
「あ···」
「お前が遺産を継承してなかったら、テオはこの世界から消えていたのかもしれないんだぞ!?だから!ライが死んで自分だけが生き残るなんて意味ない!ってな!」
「············」
「···わかったか?テオはそういう気持ちでお前を救ったんだ。だから、お前のせいじゃない!!」
テオ···。そんな事を考えててくれたんだ···。ボクの事を···、そんなふうに思ってくれてたんだ···。
「···サム?テオは生きてるんだね?」
「かろうじてだがな···。体はこんなに小さくなっちまったし、以前みたいな魔力がまったく感じられねえんだ。おそらく、禁断の技を使っちまった影響だろう···」
「なんとか···、ならないの?」
「···オレではどうしようもねえ。トルムもコルメも、どうしていいかわからんそうだ。そういえばテオのご先祖が大魔王と決戦した際に使ったって言ってたが···」
そうか···。手の施しようがないのか···。
でも、もしかしたら賢者の遺産の知識にないかな?テオのご先祖様って、リオさんだよね?だったらアキさんが何か知ってないだろうか?
『ライくん!テオは助けられるよ!』
「えっ···?アキさん?」
「どうした?ライ?」
「サム、ちょっとごめん!賢者の遺産がボクに話しかけてくれてるんだ!」
「そ、そうか···。そういう能力なんだな···」
アキさんによれば、テオは助けられるようだ!それを聞いたボクはホッと安心したんだ···。
まず、テオが使った禁断の技は『アニマ・ルイナ』という名前で、魔力の源である『魂の器』を自ら崩壊させて、魔力を瞬間的に暴走状態にして威力を極端に上げるものらしい。
人はそれぞれ魂の器があり、魂の力で魔力が生まれて器に貯まり、その魔力を使って魔法が放てるんだ。つまり、器が大きければ大きいほど魔力を貯める事ができるんだ。
さらに魂が強いと生まれる魔力が多くなるんだ。魔力を鍛えるということは、魂を鍛えるのと同じって事だね。
そして器は魔力を使うことで大きくなるって事だそうだ。
テオはこの魂の器を意図的に破壊したので、瞬間的に魔力の出力が増えたけど、器が崩壊してるので魔力が貯まらない状態らしいんだ。
さらに、魂自体も傷ついてるので起きることができないそうだ···。リオさんは軽かったらしいので意識があったらしいよ?
そして···、ここからが重要だ。
テオを治すには魂の器を治せばいいんだけど、そのためにはテオの魂の世界に入って直接治さないといけないそうだ。アキさんは実際にリオさんを治したそうだよ!
なんと!無限収納カバンには魂の器を治す薬が入ってるらしいんだ!アキさんが言うには···、
『それは···、『ガーデニング資材』だよ!無限収納カバンにちゃんと一式入ってるでしょ?リオを治した時のあまりだけどね。道具も一式あるよ!』
「···えっ!?アキさん!?ガーデニングってお庭のお手入れをする材料と道具ですよね!?魂の器をこんなので治せるんですか!?」
「ど、どうしたんだ!?いきなり叫んで!?」
ボクが急に叫んじゃったから、サムが驚いちゃったよ···。遺産の知識と会話を始めると、独り言を言ってるような状況になるのが欠点だなぁ〜。
「ごめん!サム!え?アキさん!本気で言ってます!?」
『そうだよ〜!ボクはこれを使ってリオの魂の器とリオの魔力の源泉の彫像を治したんだ』
「じゃあ···、あとはボクがテオの魂に入る方法があればいけるんですね?」
『そうだね~!でも···、地上にはそんな大魔法使える人はいないんじゃないかな?浮遊大陸に行ってみたらどうだい?』
「浮遊大陸···。わかりました。アキさん!ありがとうございました!」
アキさんからすごい助言をもらえたよ!さすがだなぁ〜!
これでテオを治す方法がわかったんだ!次は大魔法が使える人を浮遊大陸で探すよ〜!
魂の器の話は前作の本編第2章で登場しており、本作でも同様の手法で治療することができます。
今回は前作で使用した資材と機材が一式無限収納カバンにありました。前作で使用しなかった分ですね〜。
問題はどうやってテオくんの魂の器に入るか?なんですよ。相当高難度の魔法なので地上に使い手がいないんです。
というわけで次回予告ですが、テオくんの魂の器を修復すべく、ライくんたちは浮遊大陸へ行こうと決断します。行く前にダイナモの町でカソドさんたちにしばらく留守にするとあいさつに向かいますよ〜。
それではお楽しみに〜!




