5-11.テオ、禁断の技を使う!?
想定以上に強かった!魔獣同化能力···。ライから聞いてた話よりも格段に上だった!
どういう事だよ!?うちにも秘伝書があるが、そんな内容じゃなかったと思うんだがなぁ〜。
いや、考えるのは後だ!とにかく走ってトルムのいたところに向かった!
ちょ!?ボロボロじゃねえか···!?自動回復魔法が常時かかってるのに血まみれになってたんだよ!周囲はがれきまみれになっていて、同化したガキは息絶えていた···。
「トルム!?」
「···ひどい」
「あなたがここまでやられるなんて···」
「へ、へへっ···。ドジッちまったぜ···。最近、ここまでの強敵を相手にしてなかったからなぁ〜。でも···、強烈な痛みを味わえたぜ···」
「トルム!?」
「···気を失ってる。···すさまじい戦いだったみたい」
「こりゃ、ライとテオも危ないかもしれねえ!急ぐぞ!」
戦闘狂のアルムですらこのザマだ···。しかも相手はガキだった!ライの相手は元冒険者だ。胸騒ぎがするぜ!
オレがトルムを担いで走っていると、正面にあった建物がいきなり崩壊しだした!
出てきたのは···!?ライが相手していた元冒険者の魔獣だ!!
「ガァアアア!!ドコイキヤガッタ!?ン!?キサマラ、コンナトコロニイタカ!!」
「ちょっと待て!?コイツが生きてるって事は、ライは!?」
「まさか!?テオも!?」
「···マズいね」
「ナニヲゴチャゴチャト!アノガキトトカゲハドコイキヤガッタ!?コタエロ!!」
「知らねえよ!!知ってたら合流してとんずらするところだぜ!」
「ナラ、オマエラヲクッテヤル!!」
「くそっ!こんなところで時間食うわけにはいかねえのによ!」
どうする!?オレもウインも、かなり限界だ!真のトランスも限界だから使えねえ!現状でも魔力が残り少ねえから回復魔法かけちまうと転移ができなくなっちまう!グズグズしてたら後ろから連中がやって来ちまうぞ!?
すると、コルメから提案があった!
「ウイン!時間稼いで!残り少ないけど、あたしの最強魔法で消してみせるわ!」
「···了解!」
「頼むわよ!40秒で準備するから!」
ウインが敵に向かっていった!嫌らしい攻撃で相手の気を引きつけている!!
その間にコルメは魔力を超圧縮し始めた!両手両足に超圧縮した魔力を集めて、コルメの最強魔法をぶっ放す気だ。
「···くっ!?···コイツ、剣術まで!?」
「キカヌキカヌゥ!!ソノテイドノオモチャナドキカヌワ!!」
「···残念。···倒すのが目的じゃない」
「ウイン!待たせたわね!これでキメる!!ドラゴンキャノン!!連発よーーー!!」
「ナッ!?ギャァアアアアーーー!?」
ズドーーーーン!!
「うわっ!?」
「···ぐっ!」
目の前でとんでもない爆発が起きた!あまりの爆風でオレもウインも吹き飛ばされてしまった···。
「あはは!気持ちいいんだけど···、もう魔力が空っぽよ···。サム、ウイン···。あとは···、任せたわ···」
そう言ってコルメは気絶してしまった。魔力を使い果たしちまったからな。
「ウイン!コルメを!」
「···わかってる!」
コルメをウインが担いだその時だった!スマホに救援要請が来た!ライだ!!これで場所も判明したぞ!
「ウイン!場所がわかったぞ!国の外だ!」
「···急ぐよ!」
そうしてオレたちはレクトの町をなんとか脱出することに成功したんだ。予断は許さねえが、とりあえずは逃げ切ったな···。
そしてライのいる場所に着いたら···、血まみれのライに回復魔法をかけ続けている竜モードのテオがいた!
「サム!?ウイン!?」
「テオ!ライは!?」
「不意打ち食らってしまって虫の息なんだ!オレの回復魔法をかけ続けて、なんとか命をつないでるんだが···!オレももう魔力が残ってねえんだ!力を貸してくれ!!」
ライの姿はひどかった···。首の骨が折れてるようだった···。両手両足も折れてるようで···、よくこの状態で生きてると思っちまうぐらいひどい状況だった···。
しかし···、オレとウインも、協力してなんとか転移できる程度だ···。どうする!?
「···サム。···先に転移」
「しかし!?」
「···このままじゃ全滅する!···テオ、わかって」
「···そうだな。頼む!」
「···いくぜ、ウイン!」
「···ん。転移!」
そうしてダイナモの町に転移できた。ただ···、オレとウインはまだこの町の事はよく知らないので、人がいない外壁近くに転移しちまった!オレはすぐにテオに確認した!
「テオ!ライは!?」
「まだなんとか···。でも、回復魔法をやめたら···」
「くそったれ!!もう···、どうにもならないのかよ!?」
「···こんな事になるなんて」
このままだとライが死んじまう!!何か···、何か手はないのか!?
いろいろな方法を考えてると、テオがつぶやき出した。
「サム、ウイン···。オレが今からやる事は、ライには絶対に伝えないでくれ」
「テオ?どういう事だよ?」
「···今からオレの命と引き換えに···、ライに回復魔法をかける」
「おい!?何する気だよ!?」
「うちの秘伝書に書かれていた禁断の技だ。ご先祖様はこの技で大魔王を倒したらしい。本来はこれを使うような事態にならないように立ち回れ!という戒めなんだがな···。自分の命と引き換えに大切な人を助ける場合に使う技があるんだ。それを···、ここで使う!」
「おい待て!そんな事したらテオは!?」
「···存在そのものが消えちまうらしい。魂にダメージがいくらしくてな。ご先祖様は運良く生き残れたらしいが、オレがそうなるとは限らない」
「そんな!?」
「···サムとウインにはわからねえだろうな。オレは···、本来この時代に生きてるはずがなかったんだよ。病弱な体を捨てて賢者の遺産の管理者となって···、継承完了したら消えるはずだったんだよ。それが···、こうして新しい体をどうしてか得ることができて、ライと一緒に楽しい時間を過ごせたんだ。病の苦しみもない、まるで夢のような素晴らしい時間を···。だから、オレが生き残ってライが死んじまったら意味がないんだ!!」
「···待って!···まだ、何か」
「もう時間がねえんだ!!···サム、ウイン。心配してくれてありがとな。オレの『夢』は···、ここまでだ。···さよならだ!!」
「待て!!」
「···待って!!」
「···『アニマ・ルイナ』!!」
テオが叫んだ瞬間!とてつもない魔力がテオからあふれ出した!!どこにこんな魔力が残ってやがったんだ!?
「うぉおおおおーーーー!!」
テオはそのほどばしる魔力をすべて、ライへの回復魔法につぎ込んだ!!すると、ライの体がどんどん治っていったんだ···。
しかし!!
「ぐっ!?ぐぁああああーーー!!」
「テオ!?」
「···テオ!!」
今度はテオが苦しみだした!するとテオの魔力の放出が一気に小さくなっていった···。
「な···、なんとか···。間に···、合った···」
そう言った直後、テオは倒れて体が縮み始めた···。
「サム!!」
ウインがいきなり叫んだ!その叫びでオレはハッとした!
「テオに残りの魔力を全部注ぐ!急いで!!」
「わ、わかった!!」
『自分の魔力を他人に注ぐ』。この行為は非常に効率が悪いんだ。魔力の波長がまったく違うから、その人の波長に合わない部分が全部ムダとなってしまうんだ。
しかし、全部ムダになるわけじゃないんだ。ほんのわずかだけど供給ができるんだ。ウインはそこに賭けたんだろう。
···ここなら倒れても安全か。だったら全魔力、テオを助けるためにつぎ込んでやる!!
テオくんが禁断の『アニマ・ルイナ』を使用してしまいました!
この技は前作のリオくんが大魔王ムーオに一撃食らわせるために使用しましたね。子孫であるテオくんも使ってしまいました···。ただ、テオくんはライくんを回復させるという目的ではありますが。
この展開は作者がやりたかった展開でしたね〜。なかなかライくんがピンチにならなかったので、こういった窮地を用意しました。前作でもそうでしたが、なかなか負けイベントってキャラが嫌うんですよ。『なんとか見せ場用意するから!』ってことで渋々やってもらいましたけどね(笑)。
さて次回予告ですが、ライくんの意識が戻る直前、ライくんは不思議な体験をします。テオくんがライくんに『生きろ!』と言って去ろうとしていたのです···。
意識が戻ってサムくんから状況を聞き、賢者の遺産のサポートもあってライくんはテオくんを復活させようと決意しますよ〜!
それではお楽しみに〜!




