5-10.魔獣同化能力者の猛攻!
オレたちはギルド中央本部へ向けて進んでいたんだが、思っていた以上に魔獣同化能力者たちに足止めを食らってしまった!
真のトランス状態って、そう長く続けられないんだよなぁ~。確かに魔力はほぼ無限なんだけど、制御が非常に難しくて精神的にきついんだよ。
どうも始祖様はずっとやってられたらしいし、ご先祖様もかなり長くできたそうだぜ?ただ、今のオレとウインじゃ15分ぐらいが限界だ。
これは単に弱くなったって事じゃねえぞ!使う機会がほとんどないから慣れてないだけだ!訓練しようにも、とんでもない力過ぎてやれねえだけなんだよ!
結局はいったん退く事にしたんだ。おそらく、中央本部へ向かうほど戦力が強くなってくるだろうしな。
コルメが作ったウォーターウォールを前に走らせて、その後ろをオレたちが走って逃げていた。このウォーターウォールは弾力があって、前方からの攻撃や物を弾き飛ばすんだ!逃げる道中で魔獣同化能力者から魔法攻撃を受けたが、全部はじき返してやったぜ!
ただ、それも長く続かなかった!!前方にいたやつが火魔法を使ってきた時にそれは起こった!!
ドォーーーーン!!
「きゃっ!?」
「なにっ!?」
「···ぐっ!?」
ウォーターウォールが爆発しやがっただと!?オレたちは走っていたのに反対方向へ思いっきり吹っ飛ばされてしまった!
「あははは!変わった魔法よね?でも···、こんなに簡単に壊れちゃったわ!」
「くっ···、なんだ?テメェは?」
歩いて近づいてきたのは、小さな少女だった。まさか···、こいつもか!?
「うち?うちはね?魔法使いなんだよ~!」
「そんな事は聞いてねえ!お前も魔獣同化能力者か!?」
「そうだよ~!今まで魔法の練習をしてもまったく使えなかったの。でもね?『魔法を使えるようになるよ』って言われてついていったら、本当に魔法を使えるようになったのよ!こんなふうにね!!」
そう言って気絶していたコルメに左腕を向けた!ヤベエ!!
オレはとっさに右へ飛んでコルメを抱いて思いっきり跳んだ!
ドーーーン!!
ついさっきまでいたコルメの場所が爆発した!いくらドラゴン族でも、気絶している時にあれをくらったらまずいぜ···。
「う、う~~ん···。え?サム!?」
「やっと目が覚めやがったな!とんでもない魔法使いが現れたぞ···」
「え?もしかして、あの少女?まさか!?」
「ああ。魔獣同化能力者らしいぞ。魔法が使えなかったのに、使えるようになったらしい」
「···そう。それじゃあ、あたしがちゃんとした魔法の使い方を見せてあげないとね!」
そう言ってコルメは翼を広げて少女のところに降り立った!
「やってくれるじゃないのよ?あたしのとっておきの魔法を潰してくれたお礼をしなくちゃね!」
「あれがとっておきだったんだ~!じゃあ、今度はうちのとっておきをみせてあげるね~!」
そう言った直後、少女の足元に巨大な魔法陣が現れた!次の瞬間!!
「きゃっ!?な、なによ!?これ!!」
「うぐっ!?か、体が重い!?」
「···動きづらい!」
急にオレたちの体が重く感じた!どういうことだ!?
「あははは!どう?うちの魔法は?すごいでしょ~!」
「な、なにをしたのよ!?」
「···魔力吸収陣。うちの魔法は魔法陣を使うの。さっきの水の壁も、通った場所に魔法陣を仕掛けてたの。それを踏んだから爆発魔法が発動したってわけ」
「魔力吸収ですって!?伝説の魔法じゃないのよ!?それを魔法陣で!?ありえないわ!」
「でも、うちはこうやって使ってるよ?この魔法陣の中では魔法は使えない。いい加減、現実を見たら?お・ば・さ・ん?」
「なっ!?···いい加減にしろぉーーーーーー!!」
ドズンッ!!
コルメがキレた!!竜モードになって、思いっきり地面を踏んづけて魔法陣を潰しやがった!!
「へぇ~!ドラゴン族の本当の姿って、こんななんだね~!」
「あんたにはお仕置きよ!悪ガキをお仕置きするのに、手段なんて選ばないわよ!!覚悟しなさい!!」
「じゃあ···。うちも···。同化」
少女が魔獣化した!しかし、体型はほとんど変わってない?
「ソレジャア、ハジメマショ!」
そう言って、また同じ魔力を吸収する魔法陣を展開してきた!今度は地面と空中に同時で出しやがった!
「マジかよ!?クソッ!!」
「···根こそぎ吸われる!?」
「さっきよりも強力じゃないのよ!?どういう事よ!?」
「カンタンヨ!スッタマリョクでマホウジンヲイジシテルカラ」
「···ということは、長引くほど吸われる魔力が加速度的に増えるって事ね。なら!さっさと終わらせる!!」
「モウムリデショ?コンナニタクサンスイトッタンダシ!」
「おあいにく様。その吸収、魔力が強いところから奪ってるわね?」
「ソウヨ。ソノホウガタックサンスエルカラネ!」
「···本当にバカね。自ら弱点を言っちゃうなんてね!」
「ハ···?」
「これが答えよ!はぁあああーーー!!水鉄砲!!」
コルメが両腕に魔力を圧縮し始めた!両腕が光始めるが、それもすぐに収まってしまう!
その時だ!コルメの左腕はそのままで右腕の圧縮を弱めたようだ。
そして、圧縮を弱めた右腕で魔法を放った!!
パンッ!!
大きな音がして、少女の頭、首と胸には穴が開いていた。
「···ガハッ!?ソ、ソンナ!?マホウハツカエナイハズ···!」
「そうね。あんたが言った通り、魔力を集中させた左腕から思いっきり吸われたわ。でも、そっちばかり吸われて、右腕はほとんど吸われなかった。だから、右腕から魔法を放ったってわけ。この魔法は魔力消費量が非常に少ない、あたしの一家のご先祖様が開発した魔法よ」
「ソ、ソンナ···」
「あんたの敗因は、魔法陣の効果を過大に見過ぎていたことよ」
どうやら倒せたようだな···。魔法特化の魔獣同化能力者かよ···。だからそんなに体が強靭じゃなかったってことか。
「コルメ、やったな!」
コルメはすぐに人型に戻った。
「ええ···。でも、ほとんど魔力が残ってないわ···。撃ててもあと1発ってとこね。まさか、こんな方法で魔力がなくなってしまうなんて思わなかったわ···」
「···強敵だった」
「まったくだぜ···。これ以上は戦闘継続はムリだ!さっさとおさらばしようぜ!」
「そうね···。まさかここまでの強敵だったなんて···」
「···想定外」
オレだって想定外だって!こりゃトルムやライとテオも心配だな···。無事でいてくれるといいんだがな···。
しかしオレのこの願いは、このあと叶わないと知ることになってしまうんだ···。
特にコルメちゃんとしては天敵のような相手が登場しましたね。魔法が使えないとコルメちゃんは体術が苦手なので手が出せなくなってしまいます。
そこで短期決戦で挑みました。なかなかの頭脳戦になったと思いますよ。サムくんもウインちゃんも、魔力量が多いので魔法を多用するので、非常にやりにくい相手となります。
どんなに強くても、相性の問題は非常に大きいですね。不利になった場合にどう立ち回るか?がポイントなんですが、これって膨大な経験がないと対処できませんからね。今回の戦闘で全員魔力が枯渇に近い状態にさせられてしまったため、これ以上の戦闘が継続できなくなってしまいました。
さて次回予告ですが、サムくんたちは重傷のトルムくんと合流後、ライくんのスマホから救援要請が来たのでそこへ向かいます。すると、今にも死にかけているライくんに必死で回復魔法をかけているテオくんがいました。
しかし!サムくんたちも魔力が枯渇状態かつ真のトランスができないほど消耗してたために回復魔法がかけられませんでした···。
そして···、テオくんは禁断の技を使うことを決断します!ライくんは助かるのでしょうか!?
それではお楽しみに〜!




