5-9.いったん退くか!?
オレたちは魔獣同化した冒険者をライたちに任せてギルド本部へ向かった!ところが道中で小さな子どもがオレたちの前に立ち塞がったんだ!
「ねえねえ!お姉ちゃんたち!ぼくと遊んで〜!」
「悪いけど、今それどころじゃないのよ。ここは危ないから、おうちに帰りなさい」
「え〜〜?せっかく···、力をもらったんだから、試させてほしいなぁ〜!」
「えっ!?」
「コルメ!そいつは敵だ!」
「まさか!?こんな小さな子が!?」
「あははは!同化〜!!」
「···させない!秘技、疾風迅雷!疾風!」
ウインが魔獣化させる前にトランスして攻撃をしたが···、攻撃を受け付けなかっただと!?
「···これが効かない!?」
「二人とも!離れろ!!」
「グガァアアアーーー!?ハアッ!ハアッ!アハハハ!!スゴイネ〜!トッテモキブンイイヨ〜!サア!ボクトアソボウ!!」
小さな子が···。トラのような4本足の魔獣になっちまいやがった···!次の瞬間!トラが消えた!
「ガハッ!?」
「···グウッ!?」
「うぐぅ!?」
「きゃあ!?」
とんでもない速さで4人攻撃してきやがった!トルムとコルメは竜気まで貫通してやがる!?
「アハハハ!キモチイイネェーー!コレマデイツモイツモイジメラレテタボクダケド、コンナスバラシイチカラヲクレタンダヨ!イジメタヤツラハミナゴロシニシテ、クッチャッタケドネ!トッテモマズカッタヨ!」
これは仕方ねえな···。母ちゃんに怒られるだろうけど、真のトランスをしねえと勝てねえな!そう思ってると···!?
「アハハハ!!いいぜぇ〜。今のはいい痛みだったぜ!···これは思いっきり楽しめそうだなぁ〜?」
「キミガアソンデクレルノ?イイヨ!ソレジャア『ナグリアイッコ』シヨウ!」
「タイマン勝負か!いいぜ!全力でかかってきな!!」
あちゃー!アルムが出ちゃったわ!ならここはアルムに任せた方がいいか?
「アルム!任せていいんだな!?」
「当たり前だろうが!こんな楽しい楽しい戦いの邪魔したら、3人まとめて叩き潰すぞ!?」
「わかったぜ!···死ぬなよ」
「誰に対して言ってやがんだ!?···テメエの心配してろ!」
よし!ならアルムに任せよう!
そうして先に進むと、今度は3人組が立ちはだかった!
「あなたたち···、叛逆者のSランクね?よくもここにのこのことやって来たわね?」
「あぁ?追い出したのはテメエらだろうが!?」
「頭の悪いガキは嫌いよ?あなたたちのせいで···、どんなに頑張っても、ランクを上げても報酬は上がらなかったのよ!」
「報酬はギルドが決めることだ!オレたちは関係ねえだろうが!?それに、オレたちはスタンピード退治やってたんだ!そんじょそこらの魔獣を退治するのとはワケが違うんだ!そんな簡単なこともわからんお前らの頭の方が悪いぜ!」
「なんですって!?言わせておけば···!まぁいいわ。私たちは力を得た。もうあなたたちの時代は···、ここで終わりよ!同化!!」
そう言って今度はこの3人組が魔獣同化しやがった···。こんなところで立ち止まってたら、いつギルドにたどりつけるんだか···。
「···ウイン。しょうがねえから、アレやるか。···母ちゃんに怒られるけどさ」
「···仕方ない。···私もやれば、私は怒られない」
「おい!?ちょっと待てや!!なんでオレばっかり怒られるんだよ!?」
「···日頃の行い?」
「ちょっとウイン、サム!言い合ってる場合じゃないでしょ!?」
「おっとコルメ、そうだった!そんじゃあウイン!やるか!」
「···ん!」
「「はぁあああーーーー!!」」
オレたちは真のトランス状態となった!目が黄金に輝き、顔に浮かぶ紋様が淡く光りだす!
この状態になればこの星の魔力の源である『龍脈』と魔力を共有することができるんだ!
この力は神狼族が神によって創られた戦闘種族であるという証!そして、魔獣を倒してこの世界を平和に導くための力なんだ!!
ただ、オレもウインも母ちゃんのように長時間維持することができねえんだ。とてつもない魔力を制御するのに気力と体力を使っちまうんだよ。
だから短時間で終わらせる!
「ホウ?ワタシタチトオナジヨウナノウリョクモチガイタトハ!アナタタチヲタベタラ、サゾカシツヨクナレルデショウネ!」
「食べたら食あたり起こすぜ?···ウイン!一気に決めるぞ!」
「···ん」
「「Wエクスプロージョン!!」」
爆裂系の最上位の魔法を、ウインと一緒に合体魔法として撃ち出した!神狼族は最大でも10人しか身内がいねえ。しかも共有能力があるから、魔法の波長も一緒だ。
合体魔法は同じ出力で同じ波長でないと相殺したり制御不能になってしまう。だからこそ、オレたちは合体魔法が使えるんだぜ!
ズドーーーーン!!
町中で大爆発が起きて、周囲の家屋が吹っ飛んだ!誰もいねえってわかってたから、手加減なしでぶっ放させてもらったぜ!
煙が晴れると···、3人が倒れていた。原形とどめてねえけどな。
バカな連中だ。力が欲しいあまりに悪魔に魂を売り渡して人じゃなくなっちまい、そしてこんな末路になった。哀れとも思えねえな。
「さて、次行くぞ!···どうした?コルメ?」
「どうやら···、通させてくれないらしいわよ?」
「なに!?ま、まさか!?」
そう、原形を留めていない肉の塊がうごめきだしたんだ!まさか!?再生しやがるのか!?
「クリメイション!」
「···フレアバースト!」
「インフェルノ!!」
コルメが真っ先に上位の火魔法をぶっぱなし、ウイン、オレと続いて撃ち込んだ!焼け焦げた肉のにおいがかなりキツイ!
「ふぅ~。とんでもない連中ね···。まさか原形とどめてない状況から復活しようとするなんて···」
「···このトランス状態でここまで苦戦するなんて」
「これはギルドにたどり着くまでにオレたちのスタミナが切れるな。トランス中は魔力無制限だが、トランスもそんなに長くは続かねえ!···いったん退くか?」
「その方が良さそうね!奴らに時間を与えるのはこっちが不利だけど···、ここでやられるわけにはいかないわ!」
「···くやしいけど、退くのも大事」
「それじゃあ、撤収するぜ!」
その時だった!新手が現れやがった!
「待ちな!せっかくここまで来たんだ。オレたちにも歓迎させてくれよ?」
そう言って、道の前後を塞がれてしまった!相手は20人···。これはきついぜ···。
「せっかくSランクが戻ってきたんだ。生まれ変わったオレたちの実力を試させてくれや?なぁ~?」
「お前ら···。自分に何されたか、わかってんのか!?」
「ああ。わかっているとも!魔獣の力強い生命力をこの体にたっぷりと注入してもらったってなぁ!これまで魔獣退治なんて、なんて愚かな事をやっていたんだって後悔してるんだ。今はすこぶるいい気分だぜぇ~?」
「どうする?」
「片側を突破するわよ!トルムと合流して、ライとテオを回収しましょう!」
「そうするか!コルメ!頼んだぜ!」
「ええ!町中だろうが、思いっきりぶっ放すわ!ウォーターウォール!!」
コルメが水魔法使った!この魔法は分厚い水の壁を作り出して前進させる魔法だ!しかも適度に弾力まであるから、弾き飛ばすし、攻撃も貫通させない!
「アースウォール!」
オレは反対側に高い土の壁を作り出した!相当魔力をつぎ込んだから、そう簡単には越えられないぜ?
「行くわよ!ウイン!サム!」
「···ん!」
「あばよ!」
オレらは前方に猛スピードで進む水の壁の後ろを走った!これで勝ったと思うなよ!?
サムくんたちも大苦戦となってしまいました。
魔獣同化能力者は個人の資質と心に闇の部分が大きいほど力が強くなるという特徴があります。そのため、心の闇が大きいと子どもでも大人を圧倒してしまう極端な力を持つことがあるんですね。
本文中であるように、サムくんとウインちゃんはまだ真のトランス状態を長時間維持できません。とてつもない魔力を制御するのが非常に難しいからです。前作をお読みいただいた方からすれば『あれ?なんで?』って思われるかもしれませんね。
前作のハルちゃんは神狼族最後の1人(厳密には2人なんですが)になってしまったために種の生存本能が強烈に発現してしまい、強大な力の制御がいとも簡単にできてしまったからなんです。
お子さんフユくんとナツちゃん、そして孫のモンドくんとフーちゃんもそれを受け継いだためにできていたんですね~。
ただ、いくら両親の能力を受け継ぐ神狼族でも650年も浮遊大陸に避難してしまっていたために、能力の劣化は避けられなかったという現実がありました。使いどころがほとんどなかったというのもありますね。こればかりは仕方ありません。慣れたらちゃんと使いこなせるようになりますからね。
さて次回予告ですが、撤退を決断したサムくんたちの前に1人の少女が立ちはだかります!どうも魔法をかなり使いこなせる魔獣同化能力者のようですよ?たった1人なのにサムくんたち3人を完全に足止めしてしまうほどの強敵に、どう立ち向かうのでしょうか!?
それではお楽しみに~!




