5-8.ライ、ピンチに陥る!?
おはよう!今日はレクトへ出撃だ。
一昨日に追い出されて戻る時には攻める事になるなんて···。どうしてこんな事になってしまったんだろうか?
一応、女将さんには『今日帰らないかもしれないから、いったんチェックアウトしておくよ』って伝えておいた。
なんか心配そうな顔をしていたけど、『また来るね!』って笑顔で言っておいたよ。
そしてSランクみんなでギルドへ向かうと、カソドさんたちとレートさんたちが見送りに来ていたよ。
「ライくん。···行くんだね?」
「···はい、カソドさん。なんとかしてみせます」
「ライくん···。気をつけるんだよ」
「レートさん···。わかってます。必ず戻ってきますね」
あいさつをした後、ボクたちはコルメの転移でレクトの壁の外に転移した。いきなりギルド直行もできるんだけど、おそらく魔獣同化能力者たちで固めているんだろうから、多勢に無勢の状況は避けたい。
ただのスタンピードならこれでもいいんだけど、相手は1人だけでもスタンピード級な強さだ。普段以上に慎重にならないとね。
門から入ろうとすると門は跳ね上げられており、掘りの手前では行商人たちが困り果てていたよ。一応状況を聞いておこうか。
「すいません。どういう状況なんですか?」
「見ての通りだよ···。一昨日の午前中から橋を跳ね上げられてるらしくてね···。門に呼びかけても反応すらないんだ。どうして橋を上げてるか、まったくわからないから困ってるんだよ。このままじゃお手上げだから、もう引き上げようと考えてるんだ。キミたちもそうじゃないのかい?」
「いえ、ボクたちは様子を見に来ただけなんです。ありがとうございました。もしかすると何かあったかもしれませんから、おっしゃる通り引き上げた方がいいですよ」
「それもそうだな···。ここで待っていても状況が良くなりそうにない。それじゃあな!」
完全に封鎖してるようだね。中で悪い事をしているのは確実のようだ。
「ライ?壁を飛び越えましょうか!」
「そうだね、コルメ。···中は戦場だろうね。気をつけて行こうか!」
「「「「おう!」」」」
門から離れた死角の場所にやってきた。ここなら誰にも見つからないってサムが言ってたからね。
そしてテオとトルム、コルメに飛んでもらって、みんなでレクトの国に侵入した!
誰もいないぞ···?すると、サムがヒソヒソ声で言った。
「(おそらく全員連れ去られてるんだろう。急いだほうがよさそうだぜ!)」
「(わかった。じゃあ、行こう!)」
そうしてボクたちはギルド本部へ向かったんだ。すると···、交差点の角から誰かが出てきて声をかけてきた!
「ん〜?テメエらはSランのバケモノどもじゃねえか!なにしに戻ってきやがったんだ?」
この人はこの前にサムに突っかかってきた冒険者だ。この人もまさか···?
「ライ!ザコに用はねえ!行くぞ!」
「うん!わかった!」
「おい待てや!!オレ様を無視するなんていい度胸じゃねえか?あぁん!?」
「無視する程度のヤツなんか相手にしてられるほどオレたちは暇じゃねえんだ!失せろ!」
「···くっくっく!ははは!あーっはっはっは!!」
「な、なんだ?」
「様子がおかしいですね···。まさか···」
「オレ様はなぁ〜?すんばらしい力を得たんだよ···。コイツは最高にヒャッハーだぜぇーー!!生まれ変わったオレ様の力を見せてやる!!同化!!」
やっぱり!?コイツも魔獣同化能力者にさせられてる!!人の姿から巨体の2足歩行の魔獣になったよ!
「ヒャハハハ!!サイコウニイイキブンダゼェ!!イマナラエスランクナンテ、ゴミドウゼンダ!!」
ここはボクとテオで相手するほうが良さそうだ!
「みんな!ここはボクとテオがやる!先に行って!」
「あとは頼んだぜ!」
「わかったぜ!気をつけろよ!」
「···ムリは禁物」
そう言ってみんなは先に行った。···さあ、ボクものんびりしてはいられない!ここは一気に決める!!
「テオ!サポートよろしく!」
「おう!」
「はぁあっ!!」
ボクはトランス状態になった!身体能力が上がった状態でないと、生半可な攻撃は通用しない!
「いくぞ!秘技!紅葉!!」
ボクは一気に敵の懐に入り込んで横一閃した!しかし!?
『ン〜〜?ソノテイドカヨ!?エスランクノチカラハ!!』
「くそっ!」
「ライ!これでも食らいな!ストーンランス!!」
ボクが避けるとすぐにテオのストーンランスが飛んで来て、敵の首に突き刺さった!!しかし!?
『キカンナァ?ソノテイドカ?』
「こ、こいつ!?」
「前にやったヤツ以上に強い!」
こっちはトランスまでやってるんだ!全力全開でやってるんだよ!それが···、まったく効いてない!?
『ナラ、コンドハオレノバンダ!!』
「な!?ガハッ!?」
「ライ!グハッ!?」
い、今のは···、なんだ···!?まったく見えなかった···。つ、強すぎる···!
横を見ると、テオも倒れていた。竜気を貫通する威力だ···。ボクの防御なんて、いくらトランス状態でもテオよりも弱いんだから···。
マ、マズい···!このままだと···、サムたちが···、やられてしまうかもしれない···!
『エスランクナンテ、コノテイドダッタノカヨ?オレサマガツヨクナリスギタダケカ!?ガハハハ!イイキブンダゼェ〜。ソレジャア、オマエラヲクッテヤル!ソシテ、オレサマハモットツヨクナレル!!』
くそっ!食べられてたまるか!もっと···、もっと信じるんだ!アキさんの賢者の遺産の力を!!
「うぉおおおおーーー!!」
『ナ、ナンダァ〜?』
なんとか立ち上がれた···。トルムに教えてもらった自動回復魔法が効いてきた!まだ全快じゃないけど···。これで決めてやる!!
「皆伝秘技!万仭剣!!」
前回もこれで決めた!今回も···、これで!!
賢者の遺産の中にある、アキさんの息子さんが、今回もサポートしてくれたよ···。だけど、前回のように手取り足取りではなかった。ボクが振るう剣の軌跡を、ちょっとだけ修正してくれただけだった。『あとちょっとかな?よく頑張ってるね!』って応援してくれたよ···。
『ギャァアアアアーーーー!!』
「はあっ!はあっ!き、決まった···!」
ズシーーーン!!
敵の巨体が倒れた!な、なんとか倒せたよ···。一気に力を使い果たしたから、トランスも解けてしまった。そして、ボクはゆっくりとテオに向かって行った。
「テオ!大丈夫!?」
「う、う〜ん···。ライ···?」
「うん。なんとか倒せたよ」
「そうか···。最近、オレって役に立ってないなぁ〜」
「そんな事ないよ!テオがいるから、ボクは安心して戦えるんだから!」
「そうか···。ありが···!?危ねえ!!後ろだ!!」
「え?グハッ!?」
···え?···な、なにが?目の前が···、どんどん···、暗く···、なって···。
「ライーーー!!」
「フーーー!フーーー!イマノハシヌカトオモッタゾ!!コノオレヲ、ココマデキズツケタキサマ!!クッテヤル!!」
「く、くそったれ!!」
ライが···、目の前で不意打ちを食らってしまった!手足があり得ねえ折れ方してやがる···。もしかして!?首も折れてるんじゃねえか!?早く···、早く助けねえと!!
しかし、今のオレではどうしようもねえ!!···逃げるしかねえな!!
「おいバケモノ!!」
「ナンダァ!?トカゲ!!」
「フラッシュ!!」
「ナァッ!?ウギャーー!!メガーー!?メガーーーー!?」
へへっ!雷魔法のフラッシュは強烈な光で目くらましをしてやる魔法だ!今のうちにライを連れて飛んで逃げるぜ!!
予想通りレクトの中は魔獣同化能力者だらけになってました!門が閉じられていたのは住人たちが逃げ出させないようにして連行するためです。
レクトは国レベルなので人口が周辺の町に比べてかなり多いので、魔獣同化能力者の数もかなり多いと考えられます。先に向かったサムくんたちもこのあと襲撃を受けてしまいますよ。
そして、ライくんが後ろから致命的な一撃を受けてしまいました!もうここまでのレベルになってくると、防具があんまり意味なくなってしまうんですよ。倒したと思って油断して背後を見せてしまったところを襲われてしまい、テオくんが機転を利かせて逃げることができましたが、ライくんが初めて敗北したシーンでもあります。いくら賢者の遺産を継承したと言っても限界はあるんです。
さて次回予告ですが、サムくんたちの前に別の魔獣同化能力者たちが立ちはだかります!なんとか倒すのですが、次々に新手が現れて多勢に無勢な状況に陥ってしまいます。サムくんたちはどうするのでしょうか!?
それではお楽しみに~!




