5-5.潜入捜査
「そんじゃあ行ってくるぜ!コルメ!頼んだぜ!」
「ええ!夕食までには戻るわね〜!」
「サム、コルメ!気をつけてね!」
ダイナモの町の外壁の外でコルメは竜モードになり、サムが乗ってキャビの町を目指して飛び立ったよ。
「···心配だなぁ〜」
「ライ、大丈夫ですよ。サムはすごい人ですから!」
「···やる時はやる」
トルムもウインもまったく心配してなかったよ。信頼感がすごいんだね。
さて、今日はやることがないので、避難民の皆さんへ炊き出しをしようかな?と思っていたら、避難民の皆さんはダイナモでなんとか職にありつけて働いて生活をしているんだって。
どうやらボクたちの頑張りを見てやる気になったらしい。大した事してないんだけどなぁ〜。
というわけで、今日はのんびり過ごすことにしたんだ。そうだ!トルムとウインに町の案内をしてあげることにしよう!
さ〜て!久しぶりの潜入任務だぜ!今回はちょっと危ないかもしれないけど、オレの腕だったら問題ねえ。なんとでもしてやるぜ!
「サム?もうちょっとで聞いてた場所よ」
「おし!コルメ!もうちょい上昇できるか?なるべく高度を稼いで、まずは上空から様子を探るぜ!」
「わかったわ!」
コルメが急上昇して高度34000フィート(約10234m)まで上昇した。単位がややっこしいが、これはこのスマホを持ち込んだご先祖のアキの元の世界の単位らしい。そして、このエーレタニアは偶然にもご先祖様が用いている単位がそのまんま使えるんだ。ご先祖はすげえ人だったんだな!
ちょうど小さい綿雲があったので、そこに隠れながら下を覗いた。暗殺技には『望遠鏡』っていう、超長距離を見ることのできる技もあるんだぜ!
キャビの町はかなり小さな町だ。1000人程度が住んでるんじゃねえか?人影が見えねえが···。
上空からでは特に変わったところはない。どこにでもあるような普通の町だった。これじゃあよくわかんねぇなぁ〜。とりあえず町の形状はわかったぜ!
「コルメ!ちょいと離れた場所に降りてくれ。やっぱわかんねえから、直接中に入ってくるぜ!」
「わかったわ!···でも、サムが戻るまで暇よね〜」
「適当にブラついてくれ。魔獣は倒すなよ。変に怪しまれかねんからな」
「あ〜、これはしまったわね···。暇つぶしを考えてなかったわ」
「スマホであにめ?を見てりゃいいだろ?」
「それもそうね!帰る時はすぐに連絡してよ?」
「わかってるって。そんじゃあ行ってくるぜ〜!」
さ〜て···。お宝···、じゃなくて···、情報を得るぜ〜!
気配を消し、透明化の暗殺術を使えば誰もオレに気づかないぜ〜!こうして門をくぐらずに飛び越えて町に侵入した。
···ん?妙だな?誰もいないぞ?門番はいたから、誰か住んでるのは間違いないはずだ。
しかも、家はほとんどが廃屋だった。人が住んでる気配が一切しねえ。崩れたりしてないから、上空から見ても気づかなかったってわけか。
さて、どうしたもんか···。とりあえず町中を歩き回るとするかねぇ〜。
そうして1時間ほどブラついた。ここまでで人は一人も見かけることはなかった。人の気配がまったくしねえんだよ···。
さらには最近生活をしているという雰囲気すらなかった。井戸のふたは開きっぱなしだし、家のドアも開きっぱなしだ。かなり荒れ果ててるな。
魔獣が暴れたっていう形跡すらない。まるで···、普段の生活から人だけがいきなりいなくなったって感じがするな。
···こいつは普通じゃあねえな。思っていた以上にヤバい案件っぽいぞ!?さっさと情報を集めて帰るぜ!
最後にギルドへ向かった。ここには人の気配がしている。誰かいるのは間違いなさそうだな···。
入口の扉は閉まっていて、窓は木板で塞がれていた。おいおい···、尋常じゃねえな!まぁ、だからといってオレが侵入できねえなんて思ってやしないか?それなりに入り方ってのがあるんだぜ?
扉はカギがかかってるが、こんなものはオレのご先祖が編み出したカギ開け魔法であっという間に開けれるんだぜ!
扉を開けてさっと中に入った。窓が塞がれているから、中は真っ暗だぜ···。でも、オレには暗殺技の『暗視』がある!
···うん。ここはギルドでいえば食堂と受付だな。誰もいねえな〜。まぁ、だからこそ侵入できたんだけどな!
さて···、2階には誰がいるかな?
···いた。2人いるな。男と女だな。
「さて···、これでこの町の素材は使い果たしちまったな」
「使えそうなおもちゃはだいたい1割未満ってところかしら?昔に比べて質が落ちてるわね〜」
「そりゃそうだろ?昔に比べて生活の質が落ちてるんだ。栄養たっぷりの畑で育った野菜と、スカスカな栄養しかねえ畑の野菜じゃあ、根本的に違うからな」
「まぁいいわ。ここは使い尽くしちゃったから、次の町でおもちゃを作ればいいだけよ。候補はあるんでしょ?」
「おう。この周辺で最も大きなところであいつが本格的に動き出したらしいぜ」
「うふふ!そろそろ終わりかもねぇ〜。なんせ700年近く遊んでるからね〜!あの大戦争が1番華やかで楽しかったわね〜!」
「災厄戦争ってやつか···。もっと早くに生まれておけば、面白いものが見れたのになぁ〜!」
「そうね〜!華やかなのもいいけど···、最後の1人がいなくなってすべてが無となる瞬間もたまらないわよ〜!それはまもなくってところかしらね?」
「抵抗勢力をこういうやり方でつぶすというのも、なかなか面白いな」
「そうよ〜!正面突破で絶望していく姿もいいけど、仲間割れさせてお互いがいがみ合って自滅していくのもいいわよ〜!信じていた仲間に裏切られるあの瞬間の絶望した目なんか···!あぁ~!思い出すだけで快感だわぁ〜!」
···とんでもない会話してやがるぜ。素材ってのは住民の事か?1割がどうのこうのって···。残りの9割はどうなったんだ?
···とりあえず、今の会話は録音させてもらった。今も録音中だ。もうちょっとここを調べた方がよさそうだな···。
また1階に降りてきた。さっきの連中の話だと、ここで何かやってたのは間違いないはずだ。となると···、地下だな!
···ちょっと賭けになるが、やってみる価値はありそうだな。
これもご先祖様のオリジナル魔法だ!右手に魔力を集中させて、それを床に軽く当ててやった!
すると、魔獣レーダーに地下の様子が映し出されるんだ!『地震波?』っていうものを応用したそうだぜ?
レーダーには地下に空間があることがわかった。って事は、秘密の階段があるな!そこにあるってのはお見通しだぜ!
「何の音だ?誰かいるのか!?」
おっと!?さっきの探査魔法の音で気づきやがったか。だが今のオレは透明化してるから見つからないぜ?
「···聞き間違えか。ネズミか?」
ほらな?さっきの男が降りてきたけど、また2階に戻ったぜ。
さてと···。次は···、これだな。この本棚の裏が隠し階段だ。もちろん、ここも暗殺技である『すり抜け』でスルッと通り抜けるぜ!
階段を降りていくと強烈なニオイがしてきた!地下室の廊下の両側に小部屋が6つある。覗き窓を覗くと!?
人の亡骸だらけだった···。原形をとどめてないのまでありやがる!中には異形になった者まで···!?骨だけの人までいやがった!
反対側には魔獣の死体だらけだった···。
まさか···!?おもちゃって!?オレは1番奥の部屋を確認した!そこの部屋は···、実験場だった!!
見たことのない機械が並んでいる!!人が入るぐらいの容器もあった!今は空っぽだが···。
予想以上にヤバかった···。すぐに脱出するぜ!
「そうはいかないわよ〜?」
なっ?!気づかれた!?姿を消しているのに!?
「1匹ネズミが侵入したってのはお・み・と・お・し!ただの賊なら放置だったけど···。ここを見られちゃったなら生かして帰すわけにはいかないわよ?」
ハッタリだ!今のオレは完全ステルス状態!見破られるわけねえ!
「···あら?気のせいかしら?じゃあ···、これならどうかしらね」
女はまっすぐオレの方に向かってきた!これは動けばバレる!そのまま動かずにいると、目の前まで近づいて止まった!
これは完全にバレてるな···。どうする!?
悪神ボイドと話している男が、番外編で登場した男ですね。時系列としては番外編がこのお話のかなり前になります。
この町の住人は全員魔獣同化能力を与えられてしまいました。しかし、生き残れたのは極わずかという結果になっています。第3章で登場した能力者もこの町出身でした。
さて次回予告ですが、潜入したもののボイドにほぼ見つかってしまったサムくん。正体がバレてしまったためにライくんたちに救援要請をしますよ!間に合うのでしょうか!?
なお、明日の活動報告は都合により日曜日に投稿します。お楽しみにされてた読者の皆さまには申し訳ありませんが、あしからずご了承下さい。
それではお楽しみに〜!




