5-4.ギルド内での思惑
「いらっしゃい!おや!?あんたたち!久しぶりだねぇ〜!大きくなったねぇ〜」
「こんにちは。ボクたちを覚えてたんですか?」
「そりゃそうさ。今まで見た中で1番ちびっ子の冒険者だったしね。それに翼を持った獣人なんていな···、おや!?お仲間さんがいたんだね!?」
「おう!おばちゃん。そうだぜ〜!」
「今日からボクたち泊まりたいんです。ギルドから話が来てると思いますけど···」
「ああ。聞いてるよ。あんたたちだったんだね。311から320の部屋を用意してるよ。狭い部屋だけど、ゆっくりしておくれ」
「ありがとうございます!」
ギルドで話し合いが終わり、昼食を食べたあと、ボクたちは早めに宿へ入った。事前にギルドから話をしてくれていたみたいで、すぐに入れたよ。
ここ『まんまる亭』は以前ボクたちが泊まっていた宿だ。懐かしいなぁ〜!部屋にはベッドしかないけどね。
「あ〜、狭いがいいんじゃねえか?」
「···問題ない」
「今までが豪華過ぎましたからねぇ〜」
「雰囲気はいいわね!」
サムもウインも、トルムもコルメも気に入ってくれたようだ。ちなみにボクたち担当の職員もここでしばらく宿泊の予定だ。状況が分かり次第、ギルド職員の宿舎へ引っ越すそうだよ。
そして夕食の時間になった。
「みんな。ここはオススメ定食がおいしいよ〜!」
「じゃあ、オレはそれにするぜ!」
「···それで」
「僕もそれにしますね」
「あたしもいいわよ〜!」
ここの食堂も久しぶりだなぁ〜!みんなにはオススメ定食をオススメしておいた。ハズレないんだよね〜。
「はいよ!おまち!」
「おっ!?これは···」
「···おいしそう」
「量も多いですね〜!」
「それじゃあいただきましょう〜!」
みんな、料理がやって来ておいしそうに思ってもらえたようだね。それじゃあいただきま〜す!
うん!久しぶりだよ〜!おいしくいただきました〜。
さて、食事も終えて部屋に戻った。本当は食堂でいろいろ話をしようかな?って思ってたんだけど、サムからこんな話があったんだ。
「話し合いはギルドのあの会議室でやろうぜ。ここだったら誰が聞き耳立ててやがるかわかんねえからな。ここまでやりやがったって事は、向こうもそれなりに作戦あっての事だ。そういう意味ではギルドの会議室もヤバそうなんだがな···」
「大丈夫。カソドさんたちは信用できるよ。ただ、中央本部が圧力をかけてくる可能性があるけどね」
「どうしてこうなっちまったんだろうなぁ〜?」
「···身に覚えがない」
「僕たち、悪い事してないんですけどね」
「そうよ!アイツが来てからおかしくなりだしたのよ!」
ホント、ボクたちを追い出してギルドは何がしたいんだろうね?ギルドが何を考えてるかわからない以上、ボクたちがヘタに動くと事態が悪化しそうだよ···。
一方、中央ギルド本部では···。
「Sランクの連中が逃げ出しただと?」
「はい···。宿の部屋にはいませんでした。担当者も無断欠勤していますね」
「ふん!私のギルドのやり方が気に食わんか···。現状の戦力でやるしかあるまい。報酬は倍にでもすればやってくれるだろう。そのように手配しておくように」
「はい!」
「そうそう、腕に自信のないものには強くなれる特別教育を施す。無償ですぐに強くなれるとして掲示板に出しておくように」
「おお!?ついにアレをされるのですな?確かにアレは素晴らしい!わかりました!」
···いいぞ。予定通りだな。ここからが第2段階だ。せいぜい私の手のひらの上で踊り続けるがいいさ···。すべては···、あのお方の望みを叶えるため!そして···、私の永遠の命のために···。
一方、ダイナモのギルドでは···。
「レート、新総帥はどこの出身なのだ?」
「はい、カソド先輩。キャビの町でギルド長をしていたとの事です」
「キャビ?···妙だな」
「と言いますと?」
「あそこはそこまで大きくない町だ。ギルドの規模としてもここよりもかなり小さい。しかもレクトからだと1番遠い町だ」
「怪しいニオイがプンプンするな〜。調べようにも移動だけで時間かかっちまうから、何か隠したいって事だろうな」
「イグニス先輩···?」
「さらにキャビの町って、相当治安が悪い町よ。そんなところからトップを引き抜くなんて考えられないわね。ギルドとしての機能が大幅に下がって維持できなくなるわ」
「ポーラ先輩···。確かにそうですね」
「情報が少ない以上、内密にうちで調査した方がよさそうだな。あいつら暇だろ?協力してもらったらどうだ?」
「···バンドの言う通りだな。おそらく中央に問い合わせたところで、まともな返答は期待できそうもない。あるいはこちらが疑われかねんな···」
「···カソド。これは時間の問題かもしれねえ。やっぱり早めに動いた方がよさそうだぜ?」
「そうだな、イグニス···。では、明日にもライくんたちに調査を頼むとするか。彼らなら移動に時間はそうかかるまい。あとポーラ。彼らの冒険者証の偽造を頼む。Dでやってくれ」
「えっ!?···あ〜、そういう事ね?そこまでやってくると···?」
「おそらく···。ここまでやってきた以上、さらに追撃してくる可能性が高い。万が一そうなった場合、彼らを守る必要がある。どこまで有効かはわからんが、こちらも打てる手は打っておいた方がいい」
「わかったわ。まさか中央とケンカすることになるとは思わなかったわね···」
「まったくだ···。どういう意図かがわかりかねるな···」
そして翌日···。
ボクたちはギルドにやって来ると、ポーラさんが気づいてボクたちを奥の会議室に呼んだんだ。そしてカソドさんから直接の依頼の話が出たんだ
「おはよう、みんな。さっそくで悪いんだが、1つ依頼をしたい。いいだろうか?」
「はい。どういったものでしょうか?」
「キャビの町の様子を見てきて欲しいのだ」
「えっ?」
「キャビは治安の悪い町で有名だ。レクトからもっとも北にある町だ。総帥はどうもそこから来たようだ。おそらく今回の理由がそこにはあると思われる。潜入任務になるが、やってくれるか?」
「···はい。やってみます」
「そういう事だったらオレの出番だな!」
「サム?」
「ライ、オレのあだ名を忘れたか?『忍者』だぜ?潜入任務は得意なんだよ」
「あっ!そうか〜!」
「ただ、現地までの足が必要だ。コルメ!頼めるか?」
「いいわよ〜!ついでにぶっ壊す?」
「それはダメだ!そんな事したら悪評が広まっちまうだろうが!」
「ぶぅ~!ちょっとぐらいいいじゃないのよ?誤射って事で!」
「お前の1発はシャレにならんわ!」
「あはは···。ボクもテオと一緒に行こうか?」
「いや、やめておけ。気配消せないだろ?これは侵入の痕跡すら残しちゃダメだからな!」
「···そう。わかった。気を付けて!」
「誰に言ってんだ?心配いらねえよ。え〜っと、カソドさんだっけ?様子見るだけでいいのか?ほかにも調べるぜ?」
「だったらギルドも調べてくれ。書類とかはいい。雰囲気だけで十分だ」
「了解!そんじゃあコルメ!行くぜ!」
「ええ!あたしが飛べばあっという間よ!カソドさん!場所を詳しく教えて!」
というわけでサムとコルメがキャビの町へ潜入することになったんだ。ここでとんでもない事態が判明するんだよ···。
ギルドの新総帥の思惑が見えてきましたね。周りには建前で話をしています。
実際には違うんですが、やはり権力がある人が本気で建前を言ってしまうと信じ込んでしまうものです。本格的にこのあと恐ろしい計画が実行に移されます。どんな計画かはすでに匂わせていますけどね。
さて次回予告ですが、サムくんがキャビの町へ潜入します。すると、町中には人がいません···。
ギルドに行ってみると、閉鎖されているものの、人の気配がありました。さらに調査すると、サムくんは恐ろしいものを発見してしまいますよ?何があったのでしょうか?
それではお楽しみに〜!




