番外編-17.コルメ、1発ぶちかます!
あたしは浮遊大陸から地上に降りようとして飛んでいる。
浮遊大陸は嵐をまとっている。だから、暴風が吹き荒れているのよ。
「うわぁ〜、これは高速飛行魔法でも厳しいわね〜!なかなか思うように進まないわ〜!」
なら仕方ないわね!ちょっと魔力消費量が多いけど、コンが得意な超音速飛行をやってみようかしら!一気に抜けるわよ〜!
これが間違いだとはこの時は思ってなかったのよね···。
ゴーーーー!!
「いくわよ〜〜!それ〜〜〜!」
あたしは高速飛行魔法に超圧縮した魔力を供給した!すると!
ドーーーーン!!
「いっけぇ〜〜!えっ!?ちょっと!?言う事聞きなさいよ!?きゃあーーー!!」
後で知ったのだけど、高速飛行魔法は空気の流れで発生する揚力って力を利用してるのよね。だから、空気の流れが乱れていると姿勢制御ができないのよ!
そして制御不能に陥ってしまい、あたしは墜落しちゃったのよ···。
そして気づいたら、あたしは建物の中にいた。···えっ!?ここってどこよ!?
どうやら誰かに助けられたようね···。しくじっちゃったわ〜!今度やる時はあんまり力に逆らわないようにしましょう。
そうやって反省していると、誰かが入ってきた。見たところ、人族の少年のようね。この子が助けてくれたのかしら?
「おっ?目覚めたみたいだな」
「ええ、助かったわ。それと、ありがとう。あたしはコルメって言うの」
「おれはクランだ。翼がある獣人なんて初めて見たぜ···」
「あぁ~、そりゃそうよね。あたしはドラゴン族だからね。赤竜よ」
「ドラゴン族だって!?あの伝説の!?」
「へ···?伝説···?」
「知らねえのかよ!?かつて地上から魔獣を倒しまくってて、災厄戦争でいなくなったって。本物かよ···」
「なるほど、そういう話になってるのね。まぁ、本当の事ね。ドラゴン族はもっとたくさんいるわよ」
「そうなのか···。ところで、なんで空から落っこちてきたんだ?」
「あ〜。恥ずかしい話だけど、飛ぶのに失敗しちゃったのよ···」
「へぇ~。そんな立派な翼があるのに落っこちる時は落っこちるんだな」
「そりゃねぇ〜。鳥だって翼があっても落ちる時は落ちるわよ。こんなことわざを聞いた事ない?『竜も空から落ちる』って」
「聞いたことねえよ···。そもそもドラゴン族って伝説の存在だって話だから」
「って事は、このことわざは浮遊大陸限定って事ね···。悪意あることわざだと思ってたけど、まさかあたしがこんな失態やっちゃうなんて···」
「ところで、コルメって何しに来たんだよ?」
「あたし?そりゃ、魔獣相手に魔法をぶっ放しに来たのよ」
「へぇ~。本当に魔獣を狩るんだ」
「そりゃそうよ!あたしたちドラゴン族は、魔獣狩ってたんだから!まぁ、浮遊大陸にはいなかったからちゃんとやれるかは疑問だけど···」
「そうなんだな···。じゃあ、うちの集落の南に住み着いてる魔獣たちを倒すってできるか?」
「まっかせなさーい!あたしが1発ぶちかましてあげるわ!」
「おぉ~!実は通りすがりの冒険者たちが帰ってこなくなって困ってたんだよ!ギルドに依頼出しに行こうって思ってたから、直接依頼したんだよ!大金払ったのに···。すぐに長に話してくるぜ!」
そう言ってクランは飛び出していったわ。冒険者ってのがいるのね···。秘伝書にもご先祖様が昔やってたって書いてあったわ。そういう仕組みが今も残ってるって事ね。
しばらくしたら長と呼んでた人を連れて、クランが戻ってきたわ。
「おぉ、本当に翼がある···。伝説のドラゴン族が目の前にいる···!」
「ちょ、ちょっと!?いきなり拝まないでよ!?」
いったいなんなのかしら···?いきなりあたしの顔を見て長と呼ばれるおじさんが拝み出したのよ!あたしは神様じゃないんだから!
「これは失礼···。クランが話したそうですが、魔獣退治に出かけた冒険者たちが戻ってこないのです···。集落の皆で集めたお金で依頼してましてな···。もう新たに冒険者に依頼する資金もなくて···」
「そういう事ね。いいわよ。あたしは魔獣退治できればそれでいいから」
「本当に···、ありがとうございます!伝説が正しかったと末代まで伝えさせていただきます!」
「そんな大げさな···。あっ!食事だけいただければそれでいいわ」
「わかりました!お帰りをお待ちしております!」
それじゃあ行きますか!
まぁ、神器のスマホの魔獣レーダーのおかげで探す手間はないから、さっさとぶっ放しますか!
そして飛んで向かい、クランが言っていたと思われる魔獣の住処を発見した。
それじゃあ、まずはここを潰しておきましょう!そうしたら魔獣が戻ってくるから、そこを叩く!
まずはこれね!
「エクスプロージョン!」
あたしは爆裂系の魔法を撃ち込んだ!もちろん、全力全開でぶっ放したわよ!
ズドーーン!!
跡形もなく吹っ飛んだわね〜!周囲の森の木々も根こそぎ吹っ飛んだり爆心地から広がる方向になぎ倒されちゃったわ。浮遊大陸で撃ったら木こりのおじさんから猛烈に怒られたけど、ここなら大丈夫ね!
すると、魔獣が戻ってきたわ。
「次はこれね!水鉄砲!」
水系魔法を収束させて超高圧で細く撃ち出すこの魔法、威力が強すぎて何でも貫通させちゃうのよね〜。もちろん、狙うのは魔獣の頭だ。小さな穴が空いて倒れたわ。
やっぱりご先祖様の魔法は少ない魔力量で高威力ね〜!こんな魔法をバンバン撃ってもギリギリだったっていう昔の大魔王って、とんでもないヤツだったのね···。その時代に生きていたかったなぁ〜!今よりももっと気兼ねなしで魔法を撃てたでしょうからね〜!
戻ってきた魔獣を倒しまくり、レーダーに反応はなくなったわ。トータル23体もいたわね。証拠として無限収納ポシェットに入れときましょ。
う〜ん!やっぱり全力全開で魔法を撃つと気持ちいいわぁ〜!満足してクランの集落に飛んで戻る途中、あたしは森の中で人を見かけたのよ。
もしかして、クランの集落が頼んだ冒険者かしら?そう思って近づくと、様子がおかしかったのよ。
いたのは3人組の冒険者だったわ。でも、向かう方向が魔獣の住処とは別方向だったのよ。なんか嫌な予感がするわね···。身体強化魔法で聴力を上げてみましょうか。
『ホント、田舎の連中は世間知らずよねぇ〜。直接依頼は禁止だなんて知らないし〜』
『さっさと離れるぞ!集落に遅効性の魔獣寄せを仕掛けてるんだ。そろそろ効き始める頃だしな!』
『ははは!依頼金もらった上で、魔獣で滅ぼされた後で金品を大切に回収しなきゃなんねえしな!ホント、いい商売だぜ〜!』
···こういう下衆もいるのね。ちょうどいいわ。こいつらに1発ぶちかましますか!
あたしは連中の前に降り立った!
「なあっ!?つ、翼が生えた獣人だと!?」
「話は聞いたわ。ずいぶんひどい事やるじゃない?依頼の金をくすねるどころか、魔獣をけしかけるなんてね!」
「な!?な、な、なんのことだ?さ、さっぱりわからねえな!」
「あっ、そう。それじゃあ一緒に集落に来てもらいましょうか?」
「なに!?そうはさせねえぞ!」
「こっちは3人よ!3人に勝てるわけないでしょ!?そんな事もわかんないの!?」
「いいわよ。同時にかかってきなさい。後悔させてあげるわ!」
まさか魔獣退治だけでなく悪人退治までやることになっちゃったわ···。
コルメちゃんは生き生きと魔獣相手に魔法をぶっ放してましたね〜!これまでは威力を相当抑えて練習していたので、ストレスが溜まってたんですよ。
地上なら人の住んでる場所以外なら全力全開で撃っても問題は···、多少はありますけどね(笑)。
そして悪い冒険者がいましたね。こういった時代でも悪い連中はいるんですよ。ここまで出なかったのもたまたまですけどね。
こういった連中を排除するためにギルドを通して依頼するのが一般的です。請けた冒険者がしくじったり逃げた場合はギルドが責任取りますのでね。
これは何もエーレタニアだけの話ではありません。現実世界でも一緒です。···責任取らない悪質な会社もありますけどね。
さて次回予告ですが、悪の冒険者は依頼主を消す目的で魔獣寄せのクスリを撒いていましたが、コルメちゃんが戻ってしばらくすると魔獣の大群が押し寄せてきました!
またまた魔法の的がたくさん現れたので、またまた全力全開で魔法をぶっ放しますよ〜!
それではお楽しみに〜!




