番外編-05.サム、Sランク冒険者になる!
本日も夜勤のため、朝に投稿しています。
フランシスの町で滞在し始めて2カ月が過ぎた。
オレはここでのぐうたら生活が気に入っていた。なにより母ちゃんがガミガミ言わないのが精神的に心地いい···。今日ものんびり昼寝をしようとしていたその時だった。
「サムさ~ん!なんだかサムさんの知り合いっぽい人が来てるんですけど、どうします?追い返します?」
···はぁ~、また受付嬢かよ?今度はどんな無茶ぶりしてきやがるんだよ···?いい加減にしろっつーの。
···ん?『知り合いっぽい人』?どういうことだってばよ···?受付嬢だったら娘ちゃんがオレに声をかけてくることはなくって直接乗り込んできやがるんだけど?
「知り合い~?誰だよ?」
「サムさんに似た獣人のウインさんって名乗ってる女の子ですよ。Sランク冒険者って名乗ってますけど···」
···はぁ!?ウインだって!?あいつまで地上に降りてきたのかよ!?ってか、なんでオレがここにいるって知ってるんだ!?···あ、スマホの地図アプリでわかるのか。
仕方ねえな···。ここで出なかったら、あいつの事だ。この扉を叩き切って強引に入ってきやがるだろうからなぁ~。おやっさんや娘ちゃんに迷惑かけるわけにもいかないし、出てやるか。
そうして下に降りたら、ウインが本当にいやがったよ。
「···やっぱりいた。···私と行く」
「はぁ?いきなり何言い出しやがるんだよ?行くってどこへ?」
「···レクト」
「なんで?」
「···サムだから」
「意味わかんねえよ···。オレはここでの生活が気に入ってんだから行かねえぞ」
「···なら、こうする」
「へ···?(ドスッ!!)うぐぅっ···!?」
コ、コイツ···。みぞおちに強烈な一撃を食らわせやがった···!あまりの痛みに気を失ってしまったんだ···。
「···ツレがご迷惑をおかけした。···持ち帰るので心配ない」
「え···?あの、ちょっと···。うちの大事なお客さんなので、拉致されるのはちょっと···」
「···じゃ、これで。···このバカの宿泊料金」
「い、いや···、そういうことじゃなくて···」
「···さっき見せた通り、私はギルドのSランク。···そしてこのバカもSランクに今からしてくる。···手続きするだけ」
「え···?サムさんが、Sランク?」
「···ん。···こんなとこでサボらせると、サムのお母さんに知られたらサムが死んでしまう」
「え~~!?」
「···あとでサムに詫び入れさせるから。···じゃ」
これは後でフランシスに逃げてきた時に娘ちゃんから聞いた話だけどな。ウインのやつ···!これは誰から見ても拉致だろ!?誘拐だぞーー!?
ちなみにこの時、娘ちゃんは泣きながらオレに飛び込んできた。どういうことだってばよ···?そして娘ちゃんはウインに対して思いっきり文句言ってやがったな···。
そして気づいたらオレはレクトの冒険者ギルドの中央本部にいた。目の前には総帥のエマがいやがる。
こいつ···、とんでもなく強そうだな···。真のトランスをしてもギリギリってとこな気がするぞ?
「試してみるかい?」
「なっ!?」
「ははは!キミは面白いなぁ~。感情が顔に出ちゃってるよ。ご先祖様のナツちゃんを知ってるけど、どちらかといえば旦那さんの方に似てる気がするね」
「はぁ?まるでご先祖様を見てきたような言いぐさじゃねえかよ?バカにしてんのか?」
「いいや、本当だよ。私はこれでも1600年ほど、この世界を見てるからね」
「お~い?頭大丈夫か?そんなに長生きできるわけねえだろうが?」
「『人』ならね。私は別の世界の神だったから、ちょっと違うのさ」
「ちょっと何言ってんのかわかんねえんだが?本気で言ってんのかよ?」
「ああ。真実だからね。じゃあ、ちょっと見てもらおうかな?」
「はぁ···?って!?」
エマの姿が目の前から消えた!次の瞬間!エマはオレの背後に立って、オレの首筋に大きなカマが当てられていた!
「なん···、だと···!?」
「キミは目の前の見えるものしか見ていない···。もう少し『観』の目を鍛えたほうがいいね。物事の本質を見極め、弱点を見出して見的必殺を成功させる···。それが、キミのご先祖様がやってた『忍者』という暗殺術だよ」
「へっ···。まさか身内じゃねえヤツからうちの家系の話をされるとは思わなかったぜ···。で?オレに何をさせようってんだ?」
「話が早くて助かるよ。Sランク冒険者となって魔獣を狩ってほしいんだよ」
「そんなのはこれまでもやってたぞ?」
「知ってるよ。でも、その数十倍のスタンピードを殲滅してほしいのさ。ウインはもうたくさんやってくれてるけどね」
「あ~、あいつは剣術バカだからなぁ~」
「まぁ、神狼族だし得意でしょ?それなりの待遇を約束するからさ」
「···わーったよ」
ウインに拉致されてレクトの中央本部に連れてこられ、そこで強制的にSランクなんてものにさせられちまったぜ···。ホント、なんでこんな目に遭うんだよ···?
宿は豪華だったなぁ~。ここはSランク専用のフロアらしく、ほかの冒険者はいねえんだ。そしたら知った顔がいやがった!
「あっ!?やっと来たわね~!」
「あ?コルメ!?なんでこんなとこにいるんだよ!?」
「決まってるじゃないのよ?魔法のじっけ···、ゲフンゲフン!魔獣退治するためでしょ?」
「今、『魔法の実験』っつったな?」
「言ってないわよ!?ここなら浮遊大陸と違って手加減なしでぶっ放せるからね~」
「建前じゃなくて本音を言いやがったな···」
コルメは魔力量が豊富なので、大規模殲滅魔法が大好きだ。しかし、そんな魔法を浮遊大陸でぶっ放したら、ヘタしたら崩壊しちまうからな。だから地上で思いっきり魔法をぶっ放してついでに魔獣を狩るって事になったんだな···。
「んで?オレとウイン、そしてコルメの3人がSランクなんだな?」
「あともう一人いるわよ?黒竜のトルムね」
「へぇ~。黒竜もいやがんのか~。って、Sランクって浮遊大陸出身者ばっかじゃねえかよ?」
「そうね。そもそも神器のほとんどが浮遊大陸にあるからそうなるんじゃない?地上にはほとんどないって話だしね~」
「そういう事か。···もしかすると、あのエマは浮遊大陸に避難しているオレらが地上に降りやすくするためにこんなことをしやがったのか···?」
「かもね。まぁ、それを言わないって事は知られたくないか知ってほしくないかのどちらかと思うわよ?」
まぁ、別にオレには関係ない話だ。母ちゃんからガミガミ言われなきゃ別にいいしな!
ちなみに後日、フランシスにオレは逃げ出して娘ちゃんに謝罪してまたぐうたら生活をすることにしたんだが···、次の日にウインにまたもや拉致されてしまった···。
こいつ···、まさか母ちゃんに何か言われてんじゃねえだろうな!?聞いても答えやがらねえし···。
こうしてオレはSランク冒険者になり、スタンピード殲滅をやるようになったってわけさ。ここから先はもう知ってるようだから省略するぜ!
これにてサムくんの過去のお話は終了です。
サムくんがサボる先もできましたし、サムくんに好意を持ってくれる宿の娘ちゃんもいますからね~。サム君自身は気づいてませんけどね。この子もかなり鈍感です。
···作者の作品の男の子って結構鈍感な子が多いような気がしますね。熱烈だったのは前作のコルくんかな?コルメちゃんのご先祖様ですね。
さて次回予告ですが、次はウインちゃんのお話です。
そろそろ地上で武者修行しようと考えていた時にサムくんを誘おうとしたら、なんと前日に地上へ家出したと聞き、ウインちゃんも翌日地上に降ります。
そして降り立った近くの町で活動資金を稼ぐために冒険者になろうと思い、ギルドへ向かおうとした道中の交差点の角に焼き立てのパンの香りがするパン屋さんがありました。おなかが空いていたウインちゃんは、なんと無意識にパン屋さんに入ってしまいました!お金持ってないのに···?どうなるのでしょうか?
明日は通常通り21時過ぎの投稿を予定しております。それではお楽しみに~!




