意地悪そうな侯爵家令嬢様に毒見係を命じられましたけど、ご飯が美味しすぎて役得です!
思い付き短編です。
よろしければお楽しみください。
「美味しい!」
思わず上げた声に、周りの人の視線が集まる。
いけないいけない。
貧乏とは言え男爵家の娘。
みっともない真似はしないようにしないと。
あぁ、でもこの白身魚の美味しい事!
さくさくに揚げた上にとろりとしたソース!
作り方、後で聞けないかな?
そうしたら家でも作ってみたい!
「あら、随分とその料理がお気に召したようね」
「え、あ、はい!」
一目で分かる高級な服!
見事な金髪縦ロール!
従えている令嬢の皆様!
この社交会の主催者、ハイプライド侯爵家の長女、マリーアネット様!
まさか話しかけてもらえるなんて!
「そんなに我が家の料理が気に入ったのなら、貴女を私の毒味係に雇って差し上げますわ」
「え? ど、毒見係!?」
「そうですの。料理を私が口にする前に貴女が食べて、不審な点がないかを確認するのですわ」
「つ、つまり、マリーアネット様と同じ物を食べられるのですか!?」
「その通りですわ。もっとも毒などが入っていた場合には、貴女は死ぬかも知れませんけど」
「う……」
「その際には月々のお給金の他に多額の補償金をお支払いいたしますわ。確かプーア男爵家はお金にお困りだったはず。お家のためにもなりますわよ」
「……」
悔しいけどマリーアネット様の言う通りだ。
優しいお父様といつも笑顔のお母様。
家を継ぐ弟と、まだ幼い妹。
そして小さいながらも暖かい人達が住むお父様の領地。
それを守るためなら、この命を毒にだって晒してみせる!
「……承りました」
「! そ、そう! 英断ですわ! ではすぐに手続きを! 誰か! 誰かこちらに!」
あ、お父様とお母様に相談してからの方が良かったかな?
そんな事を考えているうちに、書類は整えられ、私は署名をしてしまったのだった……。
やりましたわ!
あんなにご飯を美味しそうに食べる子、今まで見た事がありませんわ!
愛らしくて可愛らしい……!
そんな子と毎日食卓を囲めるなんて……!
我が家の料理人が毒を入れたり食材を腐らせたりする事は万に一つもありませんから、あの子の美味しそうに食べる姿を堪能できる……!
あぁ、明日からが楽しみで仕方ありませんわ……!
読了ありがとうございます。
連載に詰まると短編に逃げるのが僕の悪い癖……。
明日にはどちらか更新しますから……(震え声)。
お楽しみいただけましたら幸いです。