~おばあちゃんの手紙を胸に~
星野蒼月は、幼い頃からおばあちゃんと一緒に絵本を読むのが大好きだった。おばあちゃんの優しい声で物語が紡がれるたび、蒼月の心は魔法のように躍り、楽しい世界へと連れて行かれた。
しかし、ある日、突然の出来事が蒼月の人生を暗転させた。おばあちゃんは最後まで元気な姿を見せていたにもかかわらず、その日の夜、彼女は静かにこの世を去った。蒼月は衝撃と喪失感に包まれ、心の中で大切な絵本が一冊閉じられたような感覚を抱いた。
おばあちゃんのお葬式の日、蒼月は悲しみに沈みながらも、お坊さんが念仏を唱える声に耳を傾けた。しかし、その言葉は蒼月の心に届かず、彼女は深い悲しみに取り囲まれたままだった。
家に帰り、ふと思い出したおばあちゃんの書斎に行くと机に一冊の本が置いてあった。
それは、幼い頃よく読んでいた絵本だ。
絵本をみると手紙が一通挟んであった。
おばあちゃんからの手紙だ。
蒼月ちゃんへ
この絵本、懐かしいわね。
なんだか最近おばあちゃんは人生の終わりを感じつつあります。
蒼月は小さい頃から絵本がすきだったわね。
大きくなってからもこんなおばあちゃんの趣味にたくさん付き合ってくれてありがとう。
おばあちゃんは、いつも蒼月のことを誇りに思っているわ。
おばあちゃんはずっと蒼月の味方だからね。
だからどんなに高い壁があっても自分自身を信じて欲しいの。
蒼月はおばあちゃんの自慢の孫だからね。
ずっとおばあちゃんはそばにいるよ。
おばあちゃんより。
蒼月は、おばあちゃんからの手紙を読んで涙が止まらなくなった。
おばあちゃんは、行動力がある人でいつも自分の読んだ本を聞かせては蒼月を夢中にさせるのが好きだった。
一緒にお出かけをするとここはあの本の風景みたいねとこそっと蒼月に耳打ちしてくるのがおばあちゃんと自分だけの秘密みたいで嬉しかったものだ。