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白の運命(改タイトル)  作者: けい
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case4 奪う者 :2

第十四話 再戦


封域に呑まれた校舎。


封域内は夜のように暗く、校舎の灯りがどうにか視界を確保していた。


炎上した旧館を背に、多くの生徒が体育館へと避難していた。


しかし、二人だけ避難していない生徒がいた。


校舎の3階、屋上階段までの廊下にその生徒は立っている。


白崎透華と御影は、目の前の大宮琥珀によってその場を動けずにいた。


「……先生、どいて下さい」


白崎の横で御影が溶けだす。


液体になった彼は白崎の手に集まる。


「月並みな台詞ね、嫌いじゃないけど」


大宮はニッコリと笑う。


彼女の隣にいた夜留は、その形状を御影と同様に液体化させ、大宮の体に直接まとわりつく。


白崎の手には大きな鎌が、大宮は一見変化はないように見えるが、靴が高いヒールへと変化していた。


「白崎、チャンスだと思え。お前はあの女に一度勝ってる。そいつがここに居るならケリは早くつく」


白崎は鎌になった御影の声に頷くと、大宮に向かって突撃する。


鎌が青い炎を灯す。


白崎は真っ直ぐと大宮に向かって鎌を振った。


炎とともに鎌の切っ先が大宮を襲う。


彼女は大きく後退し、投げナイフを複数放つ。


白崎はその反撃を鎌の回転だけで落とすと、もう一度構えた。


「手が変わってないなら、先生には私を止める事は出来ません」


冷たく言い放ち、今度は離れた場所から炎を飛ばす。


「……っ」


大宮は何も持っていない手をかざす。


突風が窓ガラスを割り、炎ごと消し飛ばす。


「そうかも知れないわ」


彼女はあっさりと言う。


この二回の攻防で、二人の立ち位置は変わっていた。


あと数回も白崎が攻撃を放てば、屋上階段にたどり着く。


しかし、大宮は白崎を見た時に笑っていた。


奥の手はまだあると白崎は確信していた。


目の前の大宮は大きく深呼吸する。


「頼りたくはないけど、そうせざるを得ないなら」


大宮の靴が元に戻り、彼女の『罪』がもう一度人の形をとる。


「そうしないと私たちの望みが叶わないなら」


白崎は鎌を構える。


大宮の周りに真っ黒な物体が生成され始めていた。


「……まさか」


白崎が走り出す。


鎌に炎を纏わせ、大きく振りかぶる。


「……っ!?」


白崎の一撃を受け止めたのは、夜留だった。


短剣を腕に沿わせる様にして鎌の一撃を受け止める。


彼の服を白崎の炎が容赦なく燃やしていく。


「……悪いですが、琥珀さまの準備が整うまでは私がお相手いたします」


白崎の懐に入り、腹に蹴りを入れる。


白崎は、咄嗟に交わすことも出来ずに飛ばされてしまう。


「私はなんでも差し出すわ」


大宮は黒い物体に呑まれながらそう言った。


衝撃が走る。


廊下の窓ガラスは全て弾け飛び、破片となって散らばる。


黒い繭のようなそれは、何かを産み落とすように割れる。


「……異形化」


白崎が呟く。


繭から出て来たのは、真っ黒な人だった。


その両手は鋭利な刃になっており、表情は目以外はついていない。


一際目につくのはその下半身。


足ではなく、蛇ののように鱗が付いており、その尾の先端にも刃が付いている。


大宮は何も言わない。


異形はゆっくりと白崎に向かって近づいていく。


白崎は鎌に炎を灯し、異形に向かって走る。


彼女は引くことができる距離で、鎌から炎を打ち出した。


異形は炎を受け、煙を上げる。


白崎は冷静に偉業を観察していた。


「……大宮先生」


白崎はもう一度仕掛けるため、距離を置こうとする。


彼女が後ろに一歩出した時、異形に異変が起る。


「……オォォォォォォォォォ!!」


異形の口元が割れるように裂け、口内が現れる。


雄叫びを上げると異形はとてつもない速さで突進してくる。


両手の刃物を交差させるように向け、白崎に襲いかかる。


「くっ……」


白崎は鎌を前に出し、異形の突進を受ける。


異形は止まる様子を見せずに、白崎を押し込んでいく。


両者の武器が火花を散らす。


教室の並ぶ廊下から、広い通路まで戻される。


白崎はそこで大きく跳ね、突進を躱した。


異形は目の前から白崎が居なくなったことに気づくと、再度白崎に向かってくる。


白崎は鎌に炎を纏わせ、異形に向かっていく。


炎の一撃を異形の脳天に当てる。


「え……」


白崎はその硬度に驚く。


鎌の刃は、異形をを捉える事が出来なかった。


「違う……」


白崎はまた数歩下がる。


最初の炎は異形に傷一つ付けられて居なかった。


そして先程の斬撃も異形に届いていなかった。


「……白崎、気づいてるか」


御影は白崎と同じことを考えていた様で、白崎も頷いた。


「うん、あれ全身に風を纏ってる」


白崎はもう一度炎を打ち出す。


炎の塊は異形を捉えるも、掻き消えるように炎が弾け飛ぶ。


「やっぱり……」


その挙動を確認すると、白崎はまた頭を働かせる。


幸いなのは、目の前の異形が好戦的には動かないという事だった。


白崎は異形の背後にいる夜留を見る。


彼は全てを彼女に委ねるようで、校舎の壁に寄りかかって静かにこちらを見ていた。


彼の妨害がある可能性は低いとみて白崎は鎌を構える。


大宮が使う風の力は白崎の炎をかき消す程強い。


「風が生まれる可能性を下げる……」


白崎は走る。


炎は灯さず、素のままで切りつけた。


「……っ!」


腕に振動が伝わる。


異形は腕の刃物で白崎の一撃を受け止めていた。


痺れるほどの力で打ち込んでも防がれ、手応えが無い。


「硬い……」


異形の反撃を躱し、後ろへ飛ぶ。


白崎は大宮の風の力を自身の炎が助長させていると考えていた。


空気内の温度差を作らない攻撃で、風の力を弱めようとしたが、異形自体の硬度が白崎の予想を上回っていた。


白崎は息を吐くと、もう一度鎌に炎を灯した。


「……良いじゃねぇか、嫌いじゃないぜ」


御影は白崎の意図が分かったように笑う。


白崎は炎の規模を格段に上げていく。


蒼い炎は校舎内部を少しづつ燃やし始める。


「一撃で、終わらせる!」


異形は炎を見て咆哮を上げると、凄まじい勢いで突進を仕掛ける。


「オォォォォォォォォォォォォォッ!!」


交差した刃の腕が白崎に向かって振り下ろされる。


白崎は鎌を持ったまま跳ね、一回転しながらそれを振るう。


「はぁぁぁぁ!」


異形の纏った風が炎を消し飛ばしてくる。


熱風と火の粉が周囲を包み、白崎も飛ばされそうになる。


お互いの武器が交わった所で、白崎は更に力を込める。


炎はそれに呼応するようにその規模を上げた。


刃が通った感覚が白崎の腕に伝わる。


腕の刃は溶けだし、鎌は胴体に触れる。


鎌は形状的に引くか、引っ張る事でしか刃を向けることが出来ない。


白崎は刃より先行して異形の隣に位置していた。


異形は胴体を焼かれながらも、白崎に風の刃を放っていた。


鎌鼬となった風が白崎を細かく傷つけていく。


一つひとつは致命傷にはならなかったが、全身の切り傷は白崎の視界を眩ませる。


「……燃えろ!」


白崎は更に火力を上げた。


彼女の長い髪は先端から燃え始め、消えていく。


最後の力を振り絞り、鎌を振り抜く。


白崎の背後で異形は咆哮を上げ、何かが落ちる音がした。


「……お見事」


夜留は無表情でそう言うと、白崎の後ろに倒れたの元へと歩いていく。


「息はありますね。白崎さん、ありがとうございます」


白崎は彼の方向へと振り返る。


夜留は大宮を持ち上げ、横目で白崎を見る。


「琥珀さんの無理に付き合わせてしまったことは、僕から謝罪します。元々この人には向いていない役回りだったんです」


彼はそう言うと、下り階段の方まで大宮を担いで歩いていった。


白崎は黙ったまま、この後ろ姿を見送ると、屋上までの階段に向かって走り出す。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


室内に煙草の煙が漂っていた。


対峙していたのは逆神律と周防綾芽。


周防の傍らには、頭から出血した柏が横たわっている。


「……もう一度灸を据えないと分からないらしいな」


逆神は眼鏡を外す。


周防は柏を話した際に、もう一丁の拳銃を顕現させ、一方を柏に向けていた。


「あんたが動いたらコイツの息の根を止める。大人しく全部終わるのをここで待って」


逆神はため息をつくと、申し訳なさそうに話す。


「なら仕方ないな」


両手を上げ、降参の様に首を振った。


周防は彼女の様子を見ながら拳銃を下ろす。


「それでいい、そのまま……」


逆神の手から煙草が落ちる。


彼女はそれを足元まで見送ると、煙草を蹴った。


「惜しいが、柏くんには死んでもらおう」


煙草は回転しながら周防の左手に命中する。


「っ!」


火のついた部分が周防の手に火傷を作る。


柏に向けていた銃が落ち、周防はもう一方の銃を逆神に向ける。


その時には彼女は既に駆け出していた。


「方向が違うな、そういう時は捕虜を殺して見せるべきだ」


放たれた弾丸を正面から避け、低い位置から周防の顔面に目がけて蹴りを繰り出す。


周防は寸前でそれを避け、後ろに下がる。


「おぉ、躱すか。前回はコレで終わっていたんだがね」


逆神は柏の襟元を掴むと、自分の後ろに引きずる。


周防は拳銃からマシンガンに持ち替え、打ち始める。


「人質がいなくなった以上、キミの相手をする必要はない」


逆神は近くのドアを開け、盾替わりに銃弾を受ける。


「……うるさい」


周防は俯いてそう言うと、大きく息を吸い込んで叫ぶ。


「『スロース』!」


言葉と同時に、周防の背後で幾つもの銃が円形状に広がる。


それらは自律しているように銃口を逆神に向ける。


「素晴らしいな、どうしてそれを手放したい?」


逆神は目を見開き笑う。


ドアから体を出すと、周防に向かって走り出した。


彼女は逆神の突進に、苛立ちを込めた表情で銃を向ける。


「……必要ないからだ!」


銃の掃射が始まる。


轟音と共に銃弾の嵐が逆神を襲う。


床はあっという間に銃痕で埋め尽くされ、硝煙の匂いが充満する。


逆神は楽しそうに笑いながら、その全てを躱し、避け、近づいていく。


周防は必死に手に持った銃で逆神を狙うも、前後左右にステップし、異常な反射神経で避ける彼女に当たらない。


銃弾はその数で、彼女に掠りはしていたがその足を止めることは出来なかった。


「相性が最悪に悪いな」


逆神は周防の腹に蹴りを入れる。


周防はそれを避けることも出来ずに吹き飛ばされる。


「柏が言うから見逃してやったのに、恩を仇で返すとはな……」


倒れた彼女に、逆神はゆっくりと近づいていく。


周防は意識を失ったようで、全く動く気配がない。


逆神は彼女が持っている銃に手を伸ばす。


その瞬間銃声が響く。


落ちた薬莢は一つ。


周防の近くに落ちる。


「……嘘」


逆神は咄嗟に向けられた銃弾を手で握りしめていた。


弾丸が床に落ちる。


「悪くない策だが、如何せん経験が違う」


上体だけ起こした周防の頭部に、逆神の蹴りが入る。


「適合者同士の戦いに『罪』の有無は関係ないんだ。覚えておくといい」


壁に激突した周防に、逆神は言う。


彼女は後方に放置した柏を一瞥し呟く。


「あのままなら良くて失血死か。惜しい男だったな……」


車の鍵を指で遊ぶように回しながら、逆神は機関を出ていく。


「もうすぐだ……。桂花、迎えに行くぞ」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


数刻経ち、逆神の車が出ていったあと、倒れていた柏が起き上がる。


彼は倒れた周防に近づくと、一言謝罪の言葉を述べる。


「ごめんね、後は僕が何とかするから……」


周防の手にある『罪』に手をかけようとした時、周防が動き柏に頭突きを浴びせる。


「……死んでないから!」


見事にヒットした頭突きは柏を二回転させる。


「てか話と違うし、このままじゃ不味いんじゃないの?」


不貞腐れたように言う周防。


転がった先の柏は微妙な表情で笑う。


「あはは、実はかなりやばい……」


柏は頭に付いた血糊を白衣で拭き取ると立ち上がった。


「まぁ、僕らは最後に間に合えばいいんだ。それまでは白崎さんと凪ちゃんを信じようか」


柏は周防を立ち上がらせ、自身の研究室に向かって歩き出す。


棚のひとつから小さな箱を取り出す。


「……何それ」


近くで見ていた周防が彼に問う。


柏は笑顔で彼女に言う。


「君との約束の品だよ。まだ君に使えないのは申し訳ないけど……」


柏は周防の手にある拳銃を手に取る。


「……!?」


柏は白衣から空のマガジンを取り出すと、箱の中身を開く。


そこには空の小瓶と、液体の入った同じサイズの瓶、そして一発の弾丸が入っていた。


その弾丸をマガジンに込め、周防から受け取った銃に入れる。


「ちょっとの間だけ、陽君を借りるね」


そう言って車の鍵をポケットに入れ、機関を出ていった。

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