case3 堕ちる者 :3
第十一話 堕ちる者
白崎透華は機関でのトレーニングに集中出来ていなかった。
「どうした白崎、動きに精細さが無いぞ」
司令である逆神律は、屋外の鍛錬場で武器の構えを解いた。
白崎はどこか調子が悪い様子で、肩で息をしていた。
武器となっている『罪』の凛も形状を人型に戻った。
「逆神さん、今日は透華、調子が悪いんです。ここまでにしましょう」
凛がそう言うと、逆神は持っていたトンファーを仕舞う。
「……まぁいい。今日はこのくらいにしよう」
白崎は彼女の言葉で機関の内部へと戻る。
施設内に入ると、柏が廊下に背を預けていた。
「あ、律さん。白崎さんちょっと借りてもいいかな」
珍しく彼から話があるそうで、逆神と凛は執務室へと戻っていく。
柏は彼が普段いる医務室に白崎を入れ、ソファのひとつに座らせる。
「ここ、覚えてる?白崎さんが初めて機関に来た時にいた場所だよ」
勿論白崎は覚えていた。
高校の保健室よりも薬品の匂いが強い部屋。
ベットは二つしかなく、スペースの殆どは彼のデスクと白崎が座っているソファ、テーブルが占めている。
柏は白崎が話さないことに何も言わず、ポットとスティックタイプのカフェオレを持ってくる。
「砂糖、いるかい?」
小さな陶器の入れ物には幾つもの角砂糖が入っている。
白崎はただ首を振るだけで返事をすると、柏はいつものような笑顔で応える。
「とりあえず飲もうか」
彼に促され、カップに口を付ける。
口の中に少しほろ苦い香りが広がる。
「紅林くんのことで気持ちは落ち込んでいるのは分かってるよ」
柏は白崎の口から言葉が出るのを待っていた。
「他にも何かあった……のかな?僕の想像だけどね」
彼はこういった時に勘が鋭い。
白崎は彼のそんなところは大人だと思っている。
「……柏さんが、知っているなら教えて欲しいことがあります」
御影は逆神に紅林の異形化を報告しなかった。
それが何を招くかは分からない。
ただ白崎に分かっていたのは、御影が紅林に何かを配慮したということだった。
柏は白崎の言葉の続きを静かに待っている。
「適合者ってなんなんですか……私たちはどうなるんですか」
白崎は間接的に、それでいて自身の不安の種となっていた異形化、覚醒について、そして自分たちのこれからについて、広い意義で質問を投げた。
柏は白崎の言葉の真意を図るように、目を瞑って考える。
「そうだね。君も自分の体の変化に気づいていると思う」
白崎は戦いの中で負った傷を思い出す。
佐々木に付けられた切り傷は、自分の想像よりも早く完治し、先の戦いでの火傷も数日も経たないうちに跡すら無くなっていた。
「適合者について話そうか。君たちは特別だ。言い方を悪くするなら上位者言ってもいい」
柏は一度デスクに戻ると、数枚の資料を持ってくる。
「僕が採ったデータだと、まず発達した器官、異常な治癒能力、封域という空間を発生させる能力、自然現象を意のままに操る能力。どれも人間をはるかに超えてしまっている」
紙を一枚捲る。
「そして白崎くんが葦原くんと初めて会った時の会話だね。適合者は信念、考え、欲望を宿している。これが制御出来ないと異形化する」
その言葉に白崎は不安と恐怖を覚えていた。
「そして最後、覚醒についてだね。獅童くん、覚えてるかな」
白崎が機関に入った際に聞いた10年前の事件。
それを抑えた人物の名前だった。
「彼は中々の自信家でね。正直取っ付きにくかったけど根はいい人物だったんだ。彼が生み出したのが御影くんだね」
柏は落ち着いた声のトーンで続ける。
「僕たちが反転者だと呼んでいたものが、葦原くんの発言で覆された。彼は異形化しないそうだったね、でも『罪』は生み出しているし、封域も扱える」
柏は少し真剣な目で白崎を見つめる。
「適合者は自分の感情や思いをコントロールすることが出来れば異形にならない。でもこれはかなり不安定な回答だと僕は思うよ」
白崎はただ黙ってカップの中に映る自分を見つめていた。
「そこは僕が何とかすると約束するよ。白崎さんたちが最前線に立ちながら不安定になっていくのは僕も嫌だ」
柏は一度自分のカップの中身を啜ると、続ける。
「最後にこれからだね。律さんの妹さんの件が何とかなった後も、白崎さんたちには動いてもらうかもしれない。『予言』は少ないけどまだあるからね」
白崎は何も言うことが出来なかった。
「『予言』が終わったあとの事はまだ分からないんだ。この機関がどうなるのかも、白崎さんたち適合者がどうなるかも」
柏ははっきりとそう言った。
白崎も自分の質問がどれだけ意地が悪いものか分かっていた。
「……ごめんなさい」
白崎がそう言うと、柏は笑った。
「大丈夫だよ。白崎さんの不安も分かる。僕が君たちのこれからも何とかできるようにするよ。これでも一応結構優秀な研究者だからね」
自信なさげな彼に、白崎もつい笑みがこぼれる。
「それじゃ、凛ちゃんも待ってると思うし送っていくよ」
白崎は柏について行き、凛と共に車に乗り帰宅する。
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数日たち、日付は年の瀬を迎えようとしていた。
白崎は逆神から大晦日は自宅で過ごすよう言われ、自宅で掃除をしていた。
「透華〜、これって捨てていいの?」
当然のように自宅で掃除を手伝う凛。
母は、料理家事が完璧にでき、透華の保護者代わりができる彼女をたいへん気に入ってるようだった。
「それは……捨てていいよ」
白崎は凛と母について完全に諦めていた。
時刻は夕方を迎え、白崎が携帯を開くと黒咲から連絡が入っていた。
昨年の年末は、彼女と街の外れの河川敷近くにある神社に鐘を突きに行った。
今年もかと思うと、急にこの一年を振り返りたくなる。
そんな気持ちになりながら彼女の連絡に目を通すと、少し意外なメッセージが入っていた。
『今年は家族旅行で年越し一緒にできないから、せめて一緒にカウントダウンの番組観ようよ』という内容だった。
白崎はそんな年越しもいいかなと考える。
しかし、鐘は20分前ほどから突けることを考え、ついでに黒咲に学業成就のお守りを買いにいく事にする。
彼女に返信をして白崎は綺麗になった自室で横になる。
時刻は夜11時30分。
白崎はひとりでに出かける準備をする。
台所では凛が蕎麦を用意しており、母は炬燵で番組を見ていた。
「母さん、除夜の鐘突きに行ってくるね」
白崎がそう言うと、凛は母に残りの準備を任せ、出かける準備を始めた。
時間的にはちょうどいいと言ったところだろうか。黒咲との約束の時間には間に合いそうだった。
「う〜、寒…」
外に出るなり凛は肩を震わせていた。
外は車の音一つせず、白崎と同様に鐘を突きに行く人が数名見えた。
「別にそんなに遠くないから無理に着いてこなくてもいいのに」
白崎がそう言うと凛は笑う。
「まぁ、何かあったらってのもあるけど、一番は透華と一緒にいたいからね」
彼女の距離感には白崎も思うところがあり、本人に聞いてみることにする。
「前から思ってたんだけど、凛ってどうしてそんなに……うーん」
どう言った言葉で表せばいいのか白崎は悩む。
「……透華に拘ってるかってこと?」
白崎の意思を汲むように、凛が言う。
「そうだね……私はちゃんと個人的に透華の事を気に入ってるよ。でも、私が生み出された時、詩杏は透華の事を考えてたみたいなんだ。どんな感情かはあんまり分かって無いけど、あの子が想った子なら私も大事にしたいなって」
少し恥ずかしげに彼女は頬を掻いた。
「そっか……」
佐々木詩杏の感情こそ理解はしていたが、良い方に転んだとなると白崎の気持ちも少し軽くなる。
「じゃあさ、私も凛を大事にするね」
何気なく白崎がそう言うと、凛は顔を真っ赤にした。
「……ありがと」
冬の寒空は雲ひとつなく星がいつもより輝いて見えた。
河川敷の方面では、既に行灯と鐘を突く人の列ができ始めている。
白い息を吐きながら、白崎と凛もそこへ向かう。
「……っ!」
白崎の耳に何かが聞こえた。
凛も察知したようで、白崎に目を合わせる。
「ほんと、最悪」
凛は冷や汗を流しながら、忌まわしいように苦笑いを浮かべる。
「あっち!」
近くの河川敷。
水位の深いところは基本的に立ち入り禁止となっている場所。
そこから声は聞こえた。
「透華、封域が展開されてる。司令に連絡したら行くよ」
凛の言葉で白崎は携帯電話を取り出す。
逆神に緊急用の信号を出し携帯を仕舞おうとする。
その時、白崎の携帯が鳴った。
「え……」
着信は黒咲からだった。
時間までもう少しだからだろうか。白崎は電話を取る。
「あ、透華ちゃん、もうそろそろ番組始まるよ!」
いつもと変わらないテンションで彼女は電話に出た。
「あ、黒咲さん、ちょっと今取り込んでて……時間にはまた電話するよ」
白崎が取り繕うためにそう言うと、黒咲は不思議そうに返す。
「え、あれ透華ちゃん今外にいる?……もしかして一人で鐘突こうとしてるの?ダメだよー、私も行きたかったのに」
そんな会話に、凛が目線で急ぐように伝えてくる。
「ごめん黒咲さん。破魔矢くらいは買っておくね!」
白崎はそう言うと一方的に電話を切った。
「ごめん、行こう」
白崎と凛は何者かの封域へと足を踏み入れる。
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どこかの町の摩天楼。
煌びやかな街並みは賑わっているように見える。
しかし、人は一人も居らず、たった一人の少女だけが息を荒らげながら走っていた。
「……っ。なんなのあいつ、どこにいるか分かんないし」
少女の手には一丁の銃が握られていた。
「すおー、大丈夫か」
気の抜けた声、少年のようなそれは、少女が手に持った銃から発せられていた。
「大丈夫じゃないから……!」
どこかから飛んでくるナイフ。
それは少女の目の前に刺さる。
「そろそろ鬼ごっこは終わりにしましょ?」
どこかから現れたのは大宮琥珀だった。
少女は銃を向け、叫ぶ。
「アンタらの仲間になんかならない!」
少女の被っていたパーカーのフードが、ビル風で暴れる。
「そう、残念ね周防綾芽さん。その力の使い方もしっかり教えてあげられるのに」
大宮は妖しく笑う。
彼女は普段の様に白衣を纏っており、その手には一本のナイフが握られている。
「そんなの要らない……こんなの……」
周防の手は震えていた。
「怖いんでしょう?いつ化け物になるかも分からない、あなたには他の人に感じられない事も分かってしまうんだから」
風の音以外何も聞こえない空間に銃声が響く。
「……はぁ、はぁ」
銃弾は大宮を捉えていない。
彼女の後ろにある街灯に傷をつけただけだった。
「もっと良く狙いなさい、仲間にならないならあなたの処分は私が決めることになってるんだから」
いつの間にか大宮の手には幾つものナイフが現れている。
大宮が笑い、両手のナイフを一斉に投げようと振りかぶる。
「……!」
大宮の手が止まる。
「……大宮先生」
大宮の後方、そこに白崎は立っていた。
凛は既に白崎の手に細剣と盾となっている。
「……大晦日でも、深夜の外出は注意しないといけないわね」
大宮はゆっくりと白崎を確認する。
あくまでも周防は視界から外さなかった。
「その子は誰ですか、どうしてこんな所で封域を出してるんですか」
白崎も、大宮の背後にいる周防に警戒しつつ問う。
「彼女は周防綾芽ちゃん。私は彼女をスカウト中。抵抗されると怖いから封域を出しただけよ」
白崎は周防を見る。
彼女には数箇所切り傷があり、肩で息をしていた。
「スカウトには見えませんけど……」
白崎が剣の切っ先を大宮に向ける。
大宮は余裕の表情を崩さない。
「なかなか難しいのよ。でもここからは出られないからいくらでも時間はあるのだけれど」
大宮が白崎の方へ体を向ける。
周防はその瞬間を逃さず、ビル街の路地へと消えていく。
「この間のリベンジを先にしようかしら。今度は本気で……ね」
大宮が持っていたナイフを一気に投げる。
白崎は盾を構え、守りの姿勢をとった。
ナイフは直線的に飛んでくる物もあれば、全く狙いの定まっていない物もある。
白崎は距離を詰めるため、正面のナイフを捌きつつ前進した。
「大丈夫かしら、ただのナイフじゃ無いのだけれど……」
大宮が笑う。
ビル風が吹いた。
「透華!」
凛が叫んだ。
風は様々な方向から吹き荒れ、ナイフの軌道が変わっていく。
白崎の上下左右。刃すら向いていなかったナイフたちは、まるで意思があるように白崎に襲いかかる。
白崎は前進を辞め、バックスステップする。
「……っ!」
ナイフはさらに軌道を変え、その全てが白崎に向かって進路を変えた。
「こっちまで来れるかしらね」
白崎の脳裏に以前の大宮との戦闘がよぎる。
「元々そういう戦い方ってことですか……」
ナイフの触れる数センチで白崎はターンする。
「お見事ね」
大宮が次のナイフを取り出す。
白崎はそれが放られる前にと、一気に走る。
「はぁぁぁ!」
剣に青い炎が灯る。
突進後の切り上げは大宮の攻撃を中断させた。
「もう、投げさせません」
大宮はいつの間にか篭手を装着しており、少し焦げ目の着いた篭手の合間から笑みを見せた。
「困ったわね、積極的に近づいてくるのって苦手よ」
白崎がさらに踏み込んで剣を振ろうとした時、凛が盾を持った腕を後方に振った。
数回の金属音と共に、ナイフが地に落ちる。
「透華、投げてくるものは全部落としとかないとマズイかも……」
大宮が隙を逃さず上段蹴りを放つ。
白崎はそれをしゃがんで躱し、突きを放つ。
火花とともに大宮が後退する。
「鉄甲……」
大宮の足にも装具がつく。
「タネも殆どバレちゃったし、いつもとは違った趣向で遊んであげる」
大宮の履いていたヒールの先端から刃が現れる。
彼女はそのまま手のナイフと足の刃で舞うように攻撃を繰り出す。
「……くっ」
何とか猛攻を捌いた時、遠くで音が聞こえる。
感覚的に白崎は横へ飛ぶ。
「……あら、逃げるだけじゃないのね」
白崎のいた所には、小さな銃痕がついていた。
「透華、あの子が撃ってくるなら動き続けるしかないよ」
「分かってる!」
白崎は体勢を整えると走り出す。
銃痕の角度からある程度の場所は把握出来た。
銃弾も音の方が情報が早い。
白崎は頭を思い切り回転させた。
「最短で!」
炎を纏わせた突きは大宮に簡単に躱される。
追撃を仕掛けようとした時、また銃声が聞こえる。
大宮の蹴りが白崎に襲いかかる。
白崎はそれを避けずに盾で受け止めた。
「この距離で耐えれるかしら」
大宮は笑う。
「そっちこそ、止まって大丈夫なんですか?」
大宮が遅れて銃声に気づく。
「っ!」
銃弾は大宮の太腿を掠めた。
彼女が後退したことを確認すると、白崎は盾を構えながら突進する。
「白崎さん、あなたかなり耳がいいのね」
風の音がした。
背後から白崎の肩に一本のナイフが刺さる。
「……なんで」
白崎は足を止め、しゃがみこむ。
大宮は彼女を見下ろして笑った。
「ごめんなさいね。あなたが来る前にちょっと鬼ごっこしてたから」
肩のナイフを引き抜く。幸い傷口は浅く、剣を振るうことには問題なかった。
周防の銃撃は続く。
規則性は無く、足が止まった方を撃つというもので、白崎は聴覚のお陰で大宮よりも早く反応出来る。
白崎は何度も剣戟を繰り返すが、決定的な一撃は入らない。
大宮も銃撃に苦戦していたが、白崎の動きから逆算するようになる。
「キリがないわね……」
大宮はそう言うと、腕と足の武装を解いた。
白崎は驚きながらも好機とみて剣を振る。
斬撃が大宮に接触する瞬間、刀身がブレる。
高い金属音と共にナイフが飛んでくる。
「もうそれは見切ってる!」
白崎は背後に警戒しながら更に踏み込む。
大宮は後ろに下がりながら、風で運んだナイフで白崎の一撃を妨害する。
「いい加減に……!」
白崎が大きく踏み込む。
剣を振り下ろそうとした時、隣で靴の音がした。
「間に合ったわね、夜留」
白崎が動きを止める。
そこに居たのは眼帯をした美青年だった。
黒いスーツで執事のような雰囲気の彼の脇には、気絶した周防が担がれていた。
「少し手間取りましたが、しっかり生け捕りにしましたよ」
夜留と呼ばれた男は乱暴に周防を転がす。
「これで邪魔は居なくなったわ」
男が大宮の近くまで寄る。
「『ラスト』」
大宮が呟くと、男が溶けだす。
彼女の全身にまとわりついたかと思うと、一瞬で消えてしまう。
「……福袋並びたいの。早く終わらせましょう」
白崎は静かに剣を握りしめる。
大宮は自身の前に扇状にナイフを広げる。
それらは刃先を白崎に向けた。
白崎は盾を構え、背に置いた刀身に炎を纏わせる。
お互い次の一撃で決めるつもりだった。
二人は同時に動く。
大宮は正面のナイフを一気に放つと同時に、風の力で白崎の背後から数本のナイフを繰り出す。
「全部、一気に!」
白崎は纏わせた蒼炎を大きく膨らませ、切り上げる。
ビル街のネオンに負けないほどの光量で二人は包まれた。
最後に立っていたのは白崎だった。
背に数本ナイフが刺さっていたが、肩で息をしながら大宮を見下ろす。
一方の彼女は大きな火傷の傷を作り、仰向けで倒れる。
「これで本当に最後です」
白崎はそれだけ言うと、倒れている周防の元へと歩いていく。
周防もそのタイミングで意識を取り戻し、向かってくる白崎に銃を向けていた。
「そ、それ以上こっち来くるな……」
顔には数カ所打撲痕があり、彼女もまた息を荒らげている。
そんな彼女に白崎は手を差し伸べた。
「周防さん、あなたの安全は私が保証する。だから機関に来て欲しい」
保護が最優先だと判断した白崎は、周防の目をじっと見つめる。
「私は……」
周防が項垂れる。
「何も要らないんだ……機関はそこの女から聞いた。人の未来を実質的に操作してるんでしょ……」
「……否定はできないけど、それは社会の為で、皆にとって安心して暮らせるように……」
白崎の言葉は遮られる。
「そんなの要らない!……人が用意した未来なんて……嘘だ。もう、誰かの用意したレールに従うのは嫌なんだ……疲れたんだ……」
白崎に彼女の事は分からなかった。
大宮が倒れた事によって、封域が解除される。
周防はゆっくりと歩き出し、姿を消してしまう。
白崎にはその背中を追うことは出来なかった。




