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おろかもの

作者: 椏萬弖

『わたしの目をください』

その目には何も映っていないはずです


『わたしの耳をください』

その耳では何も聞こえないはずです


『わたしの口をください』

その口から何も話せないはずです


『わたしの心をください』

その心は暗く黒く濁っているはずです



それらは全て必要無いもの

わたしがもっとも嫌悪したもの

みんなが嫌うわたしのすべて


それらは全て必要だったもの

わたしが唯一愛してきたもの

みんなが愛したわたしのすべて


愚かでみじめで妄信的なわたしは

とても大切な不要物を

全て捨ててしまいました

全て失くしてしまいました



こうして

愚かな嫌われ者の(皆に愛された)わたしは

皆に愛される(愚かな嫌われ者の)わたしに

生まれ変わったのでした


めでたし

めでたし

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