表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/5

02 リュウとの出会い

気づくとそこにはアダムがいた。

まさにデジャブだ。


「ここにはいつでもこれるのか?」

「馬鹿を言うな。前とは違う、私がお前の精神に語り掛けているのだ。」


体感としては違いはないのでよくわからないが、前回と違い俺はまだあの街の中なのだろう。


「あんまりお前と接触をするとリスクがあるかもしれんので、こういうことはしたくなかったが、何をすればいいかもわからんのは困るからな。今説明してやる。今後は簡単に呼び出せるとは思わないようにな」


「わかったよ。で、俺はこれから何をすればいいんだ?」

「うーむ。私は全能だからな。選択肢が多すぎるんだよな。」


何の話をしてるんだろう、このひと。


「そうだな。まずは赤い豚亭という飲食店に行って、たらふく飲み食いしたくせにかねないバカな男を助けろ。」


なんでいきなりそんな話になるんだろう。

まあ、いい。素直に聞いてやろう。

どうせよくわからん。


「それはいいけど。男ってアバウトすぎだろ。誰のことだよ」

「名前はリュウというやつだ。肩にいつも黒い子供を乗っけているからすぐわかる」


なるほど。

相変わらず抽象的な表現だが、それならわかりそうだ。


「それだけでいいのか。シエラを殺したいってのとどういう関係があるんだ」

「フラグを立てているんだ。まあ、そんなにややこしいもんじゃない。関係者に恩を売るってだけの話だ」

「なるほどな。わかった、じゃあな」


俺もそもそもややこしいことは考えないたちだ。

それにこいつの計画を完遂してやる義理もない。

なんとなくやってみて失敗したら失敗しただ。


「まてまて。こうして言える機会も少ないから、次にすることも言っておこう。この国の第五発電所と言われてる場所に行け。そこには聖騎士の聖剣がある。それを盗んで来い」

「おいおい。俺に盗みの技術なんてないぜ」

「大丈夫だ。お前は強力な魔法が使えるようにしてるから、そこにいるやつを皆殺しにして、なるべく痕跡をつぶしてくればいい」


なんて脳キンな発想なんだろう。

そんなことでうまくいくのだろうか。

まあ、うまくいかなくてもいいか。

もしかすると失敗することも想定して作戦かもしれない。

全能なんていうくらいだから、フラグを立てた先の未来もはっきり見えているのかもしれない。


「はいはい。わかったよ。聖剣をとってくるのね。それをどうするの?俺が使えばいいのか?」

「いや。シエラは聖剣が好きだからな。奴に渡せば取り入るには手っ取り早い」

「なるほどね。じゃあ、きょうのよるにでもいってくるわ」

「おまえ、聖剣の形状とかわかってるのか?」

「全知全能なら必要は伝えてあるはずだろ。俺は言われた通りやるだけだ」

「ちょっといいように言っているが、なげやりなだけのようだな。まあ、あんまり考えて動かれても読みにくいから私には都合がいいが、、、。聖剣は見ればわかる。とにかくすごい剣だ。発電所の奥にすすんでいけばいい。これ以上言っても忘れるだろうし、終わりにしよう。さらばだ」


アダムがそういった瞬間俺は、ヨーロッパ風の街に戻っていた。

自分が瞬間移動の使い手になったかのような錯覚を覚える。


アダムの話は全く要領を得ない。

上司とかがあいつだったらさぞ苦労することだろう。


ふと周りの人たちを見てみたが、多くの人間が行ききしているが俺の方に注目している人は少ない。

せいぜいいきなり大声を出したやつに向かっての反応だろう。

おそらくだが、アダムと話している間の時間はこちらではカウントされないらしい。


「さて、まずは赤い豚亭かな」


そうつぶやいてみたものの場所がわからない。

しかし、言語も通じるんだから誰かに聞けばいい話だ。


とりあえず人のよさそうな、落ち着いた身なりの少女が近くを歩いていたので聞いてみることにした。

そういえば、服装も古臭い感じの人はほとんどいない。

元の世界に彼らがいてもあまり違和感はないかもしれない。


「すみません。道を教えてもらいたいのですが、、」


「あ、はい。どちらにいかれるのですか」


彼女は道を聞いただけの俺に笑顔で応えてくれた。

よかったいい人そうだ。

もしかすると育ちのいい、金持ちの子供かもしれない。


「えっと、赤い豚亭という店に行きたいのですが」


「それでしたら、あちらに向かって一時間ほどしたら,ありますよ。大きな赤い豚の像があるので、すぐわかると思います」


「わかりました。ありがとうございました」


「いえ、では失礼します」


彼女はそのまま人ごみに消えていった。


かわいかったな。

ナンパしてみてもよかったかもしれない。

今の俺の顔ならいけそうな気がする。

まあ、そういうのはまた今度だな。


俺は言われた通りの方向に向かっていった。

道がある程度広いので走っていくことにした。

生前より身体能力が上がっている気がする。

しかし、漫画で見るような超人的な動きはできない。

せいぜい、ボルト並みの速さを維持して走り続けられる程度だ。

それでも十分に壮快だがな。


しばらくすると、巨大な赤い豚のオブジェが見えてきた。

店のオブジェにこんな巨大なものを使っているのは少なくとも日本にはなかっただろうな。

1時間と聞いていたが、10分かそこらで着いた気がする。

走ったから当たりまえか。


赤い豚亭。

なぜか読めるこの国の言葉ではっきりと書かれていた。

とても広い店で大衆的な雰囲気もあるが、内装を見るに高いお店のような気もする。

にぎわっていたが、席の数も多いので普通に入れそうだ。


とりあえず飯でも食うか。

金も手元にあるし、腹減っている。


「一名様ですか」


「ええ。そうです」


「どうぞ。こちらの席へ」


案内された席でメニューを眺める。

店の名前の通り豚料理が多くあった。

口に合わなくても嫌なのでなるべくシンプルそうな固まり肉を頼んだ。


注文を待っている間、アダムの言ったことについて考えてみる。

金がないのに飲み食いしたリュウというやつを助ければいいらしい。

どう考えてもタイミングが重要なのに、いつ起こるかを言っていなかった。

あほすぎるな、あいつ。

きかなかったおれもおれだが、、、。


今のところそれらしい人物は見えなかったので、のんびり食事をしながら待つことにした。


「おまたせしました」


運ばれてきた料理は、美味しそうなソースのついたきれいな色の肉だった。

フレンチかイタリアンか、まあその辺の味付けに近いだろう。

俺には違いなど分からん。


食ってみると普通にうまかった。

高級な感じもするが、お金は足りるのだろうか。

俺の手持ちは袋にじゃらじゃらと入った金貨だけだ。

価値はわからない。

しかし、たらふく飲み食いしたやつを助けろと言っていたので、おそらくどうにかなるだけはあるのだろう。


そんなことを考えながら、のんびり食事をしていると一つテーブルをは残だ先にいた男が目についた。

特段目を引く男ではなかったが、そいつのところに運ばれてきた料理の量が異常だった。

そしてなにより、肩に子供を乗せていた、

ダボダボの黒いフードに入った女の子、というより赤ちゃんに近い。

男の方は20代後半だろうか。

細身で背が高い、男にしては長い黒髪の男。

黒い大きなコートが少し目立つ男だった。

割と静かな店だったので、二人の会話が聞こえてきた。


「うまいな。この店。この辺しばらくすもうかな」

「マークフィールドにはもっとうまいのがあったじゃろう」

「そうだけど。こういうところの名店も見つけてみたいじゃねえか」

「そんなもんかのう」


男の方はともかく、流暢に年寄り臭い口調の子供はとても異様だった。

しかし、そんなことはいい。

こいつがリュウだろう。

あとは金が払えなくなったこいつを助ければいいだけだ。


1時間ほどでリュウの食事は終わった。

大食い、早食い大会で優勝できそうだな。


「伝票置いておきますね」

「ん。ああ」


リュウはしばらく伝票を見ながら、少し難しい顔をしていた。


「そういえば、この国の金なかったな」

「そうなのか。逃げたらどうじゃ?」

「アホか。ダサいだろ」

「じゃあ、その辺のやつから盗むか?」

「だから、なんで俺が小悪党みたいな真似しなきゃいけねんだよ」

「自分の食事だ今払えない時点で体裁などないと思うがのう」

「仕方ない。この店を消すか」

「それならいいという理屈がわからんのじゃが.....」


この世界にはあほしかいないのかな。

おっかねえが話しかけてみるか。


「えっと。リュウさんですよね」

「ん、誰だっけお前」

「えっと。名前はダリウスです。良ければ食事代払いましょうか・」

「お、まじかよ。お前、俺のファンか?」


なんだよ、ファンって。

いや、おれが知らないだけで有名人かもしれないな。

異世界だし、腕利き冒険者かもしれない。


「そんなとこです」

「おお、ありがと。さっさと払って、店出ようぜ。お礼に武勇伝を聞かせてやるよ」

「え、ああ。あざす」


俺も自分の伝票をもって一緒に店を出た。

会計のとき金貨を一枚出したら、かなりのおつりが来た。

俺の手持ちは意外と多いのかもしれない。


俺はリュウと連れ立って街を歩きだした。


「何の話が聞きてえんだ。黒龍との闘いか?天界か魔界の話か?」


そんなこと言われてもさっぱりだな。

あんたのことなんて知らん。

あんたよりも肩に乗ってる子供が気になるな。

娘さんだろうか。

やけに流ちょうに喋っていたが。


「あの、肩の子供はお子さんですか?」

「ん?いや、俺の子供じゃねえよ。相棒ってとこだな。名前はワイスだ」

「よろしくな、小僧」


ワイスは声と見た目はかわいいが、それだけに不気味だ。

俺のように転生したのだろうか。

中身はおばあちゃんなのだろうか。

まあ、詳しく聞く必要もないだろう。


そういえば、こいつはシエラの関係者なんだっけか。


「シエラってしってます?」

「え、シエラ?まあしってるけど。どうして俺に聞くんだ?」

「あ、いえ。シエラさんとは仲がいいんですか?」

「あーーー、まあな。最近はあんまり会ってないけど」


まずいな。

アダムと敵になりそうなやつだ。

いや、関係者に恩を売るって言ってたし、シエラと仲がいいのはあたりまえか。

よし、なんとかとりいってみよう。


「いやー、実はシエラさんに贈り物をしようかなと思ってて」

「おー、まじかよ。あいつに惚れたのか?」


なんだいきなり、惚れたの腫れただの。

たしかに、今のいい方だとそうも聞こえるか。

ていうか、俺はシエラの性別すら知らないんだか。


「いえ。恋愛沙汰はともかく、仲良くはなりたいですね」

「確かに利益を狙ってるやつも多いだろうな。ちなみに何を送るんだ?」

「えっと聖騎士の聖剣とかいうものを送ろうかなと」

「おお、それは喜ぶぞ!お前持ってるのか?」

「いえ、この国にあるみたいなのでいただこうかなと」

「そうか。じゃあお前が持ってきたら俺が届けてやるよ」

「えっ、、」

「もちろん、お前の名前も渡すときに出してやるよ。てか、お前なんて名前だ?」

「ダリウス・スミスです」

「ふーん。やっぱ聞いたことねな」


届けてくれるならありがたい話だが、はたしてこいつは信用できるのか。

どちらにしろ自分で直接届けた方がいい気もするが。

でも、これもアダムの作戦通りの展開かもしれない。

逆らわずに頼んでみるか。


「じゃあ、お願いします」

「おう。いつごろまでに用意できる?」

「今日中にどうにかするつもりです」

「そうか。それならまた明日会おう。明日のお昼に、そうだな、、また赤い豚亭で会わないか」

「はい。じゃあ、それで」

「よし。じゃあ、今日のところは解散するか。聖剣が手に入ったらすぐ届けてたいし、予定を切り上げて動くとしよう」

「急かしてしまったようですいません」

「なにいってんだ。礼を言うのは俺だ。これであいつの喜ぶ顔が見れる。もちろんお前の名前は伝えておくぜ、ダリウス」


このリュウという男、シエラとはかなり仲がいいようだ。

俺の操り手がシエラの殺害を目的としていることを思うと騙しているようで心が痛いな。

裏切る形になっても直接手を下したくはないものだ。


「ありがとうございます、リュウさん」

「ああ、じゃあ、また明日な」


リュウはそう言うと足早に去っていった。

歩いていたように見えたが、ものすごい速度だった。


俺ものんびりとはしていられない。

聖剣を手に入れるために第五発電所を目指して聞き込み開始だ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ