01 転生
気づいたら目の前に神がいた。
いや、正確には神かどうかはわからない。
あまりにも神々しいジジイが目の前に座っているのでそう思っただけだ。
よく見ると若々しくも見える。
「佐藤嶺、貴様は死んだのだ」
目の前のジジイがそんなことを言ってきた。
佐藤嶺。
確か俺の名前だ。
そうか、ここは死後の世界か。
俺は高校2年生だったはずだ。
なら死因は事故かな、
俺は健康だった気がするし。
まあ、死因なんてどうでもいいか。死んだんだし。
「お前には選択肢がある。その魂をこの世界のエネルギーとして存在を終えるか、異世界に行って第二の人生をはじめるかだ」
「あー、なるほどね。そして俺がその異世界の危機を救うわけか」
「すごいな、お前。話が早くて助かる」
まあ、おれも生前にラノベくらい読んだしな。
「では転生させるということでいいか?」
「うん、いいよ。そこいってなにすればいいの?」
「シエラという人物を殺してほしい。まあ、無理だろうからとりあえずはとりいれ」
「えー、すごい力を俺にくれて、それで倒すんじゃないのかよ」
「そんなことできるなら私がとうにやってるわ。まあ、お前には四属性の魔法を使えるようにしておいてやろう。その世界の常識とは違う部分がある能力だが、威力は絶大だ。あとそう簡単に死なないようにしといてやろう。どんどん死地にとびこめ」
「はーい、わかった。よろしくね」
「ほんとにわかっているのか?何か聞きたいこととかないのか?」
「じゃあ、あんたはなにものなんだ?」
「うーむ。あんまり詳細を伝えると、奴にばれるかもしれないしな。まあ、名前くらいは教えてやろう。アダム・スミスだ」
なんかどっかで聞いたような名前だった。
「おお、お前にも名前をやろう。せっかく生まれ変わるんだしな。では、今から貴様はダリウス・スミスだ。がんばってこいよ」
「ほーい」
こうして俺は異世界に転生した。
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気づいたときには俺はベッドで寝ていた。
大した部屋ではない。
生前の世界でいえば山小屋の部屋かと思う作りだが、掃除のよくされている清潔な部屋だった。
部屋の机に鏡があったので覗き込んでみると、そこにあったのはいるもの俺の顔ではなかった。
「おお。かっこいい!」
生前の面影は残しつつ、ややヨーロッパ系のイケメンがそこにいた。
髪色は生前の黒色がくすんで灰に近い色だ。
もともと悪い顔ではなかったと思うのだが、こんなハーフイケメンではなかったはずだ。
転生の特典だろうか。
ありがたいことだ。
元の世界であれば、簡単に100人の美女を抱けるだろう。
まあ、顔なんてなくてもやっているやつはやっていたが。
異世界の人間は顔がいい奴は多いだろうし、あんまり調子には乗らないでおこう。
部屋には金も置いてあった。
アダムと名のっていたジジイが用意したものだろう。
ありがたく使わせてもらおう。
金以外のものはこの部屋の鍵らしきものしかなかったので、それらだけを持って部屋を出た。
ここは宿屋の二階だったようだ。
廊下を抜けて階段を下りた。
この宿は一階は食堂になっているようだった。
カウンターにいた親父が声をかけてきた。
「もうでられますか?あれ、こんなお客さんいたかな。ああ、そういえば、203号室は別の人が使うと言っていたような」
「えっと。鍵を返せばいいんですかね」
「ええそうです。お代はもういただいているので」
ふむふむ。この店主らしき男が俺を始めてみたとすると、この宿のベッドに転生したのか。
もっとなんかそれっぽいところがあるだろうとも思うが、まあいいか。
それよりも店主が話しているのは知らない言語のはずだが、俺はネイティブに喋れていた。
「えっと。今話しているのって、何語なんですかね?」
「バロウト語のことですか?この辺りでは一般的だと思いますが」
「あ、ですよね」
まあ、わかるし喋れるんだから深く考えなくてもいいだろう。
「じゃあ、僕はこれで失礼します。ちなみに、この部屋を借りてた人はどんなひとですか?アダムとかいうジジイですか?」
「ジジイ?いえ、金髪の女の子でしたね。名前はレナさんでしたか」
「ああ、そうでしたか。彼女でしたか」
一応知ったかぶりをしてその場を後にした。
レナとはだれなのだろう。
おそらくは、いや間違いなくアダムの関係者であろうが。
「さて、これからなにをすればいいんだ」
思わず宿を出て口に出した。
宿の外にはヨーロッパ風の街並みだった。
かなり整備されていて、建物も高い。
生前の近代的なものは見えないが、もしかしたら現代のヨーロッパにもこういった町はあるかもしれな。
いや、これだけ人と建物が並んでいれば、元の世界では近代的なものが目についただろう。
さすがに違和感をおぼえた。
そんな街並みのことよりも、これから何をするかだ。
手元の金でどれほど生活できるかわからないが、働かなくてすむことはないだろう。
そして、アダムにやれと言われたこと。
シエラの殺害。
それは不可能だからとりいれと言っていた。
意味不明だ。
どうすればいいのかさっぱりわからん。
そういえば聞きたいことはないかと言っていたような。
聞きたいことだらけだ。
「おーい、アダムーーー」
意味はないだろうがその場で大声で呼んでみた。
近くにいる人には変な目で見られることだろう。
そう思った瞬間にはすでに俺は別の場所にいた。