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The Magic Order  作者: 晴本吉陽
Chapter5.5-B 新たなる友達 数馬編
72/124

Chapter5.5-B-3 赤尾雄三

4月8日 8:00

「それは…一体どうなってるんだ?」

 泰平は隣の席に座る男に尋ねる。色白で、学ランの上からでもわかる痩せ型の男。彼は右手でトランプの束を弄んでいた。

「これか?」

 男は泰平に尋ねながら、泰平にトランプの束の底を見せる。泰平の目に映ったのは「ハートの6」だった。

「手品だよ」

 男はそう言ってニッと笑うと、次の瞬間には僅かにトランプの束が上下する。瞬間、「ハートの6」は「スペードのクィーン」に変わっていた。

 思わず泰平も小さく感嘆の声を上げる。手品を見せた彼は、そのまま静かに笑っていた。

「すごいな」

「大したものじゃない。タネがバレたら鼻で笑われるよ」

 男はそう言って片手でトランプの束を2つに分ける。すぐに左手も加えると、さらにトランプの束を分割し、分割されたトランプの束をさらに分割して胸ポケットまで伸ばしていく。そして右手から分割されたトランプの束を折りたたむようにして左手側でひとまとめにすると、そのまま器用に左胸の胸ポケットにトランプ全体の束を滑り込ませた。

「…本当に器用だな。真似できる気がせん」

「できるさ。やればな」

 泰平の言葉に、男は答える。そのまま彼は右手を差し出した。

赤尾あかお雄三ゆうぞう。俺の名前だ」

「河田泰平。よろしくな」

 泰平は雄三の右手を握り返す。そのまま握手すると、感心した様子で呟いた。

「…右手には何も仕込んでないんだな」

 泰平の言葉に、雄三は小さく笑った。

「本当に仕込んでないか?」

「え?何か仕込んでるの?」

 雄三の言葉に、泰平が尋ねる。雄三は素直な泰平の瞳に思わず笑っていた。

「仮に仕込んでても言わないさ。イカサマはバレるかバレないかのところが1番楽しいからさ」

「騙してる時が1番じゃあないのか?」

「俺はな、スリルが好きなんだよ。どんなゲームも、ただ勝つだけじゃつまらねぇ。イカサマして、それがバレるかバレないかもスリル。バレた後、逆転されるかどうかも、それはまたスリルだ」

「ギャンブラーだな」

 泰平の言葉に、雄三はニッと笑ってうなずいた。

「泰平は…堅実そうだな」

「そうだな。そうでないとここにいないだろうな」

 雄三の感想に泰平はうなずく。雄三は泰平の意味深な言葉の意味を理解した。

「なるほど、俺たちはコインの裏表か。あの日、あの街をどう生き延び、その後どういう思想に変わったか、ちょうど真逆らしい」

「…やはり雄三もあの時の4人の1人か」

 泰平は雄三に言う。雄三の表情から笑みは消え、静かにうなずいていた。

「あの日も、俺にとっては全部が賭けだった。恐ろしかったよ。少しでも何かが違えば、ためらえば、俺は死んでたさ。その後だってギャンブルさ。狼介の親戚に養ってもらえることになってなかったら、国の補助金が出てなかったら、俺は野垂れ死んでたよ」

 雄三はそう言いながら再び胸ポケットのトランプを取り出し、片手で弄び出す。

「それで保護者に少しでも恩返しするために始めたのがこれさ。大道芸とイカサマトランプで小遣い稼ぎ。ひでえ目にも遭ったが、稼げるんだこれが。だがいつか気づいたんだよ。これをやってるのは結局金が欲しいだけじゃねぇ。スリルが欲しいんだってな」

 雄三はそう言ってトランプの束を持った右手を振るう。1番上に現れたカードは「ジョーカー」だった。

「なるほど、確かに真逆のようだ」

 泰平が静かに言う。雄三は右手でトランプを弄びながら泰平の方を見た。

「だから気に入った」

 泰平が言うと、雄三もニッと笑う。泰平も同じように笑うと、2人は声を上げて笑い合っていた。

最後までご高覧いただきましてありがとうございます

再び新しいキャラが登場しました

今後の彼の動向と、このシリーズにご期待ください

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