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The Magic Order  作者: 晴本吉陽
Chapter5.5-B 新たなる友達 数馬編
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Chapter5.5-B-2 鈴木狼介

4月7日 15:00

 学校が終わると佐ノ介は数馬や泰平とは別方向へ歩き出した。

「俺コンビニで買い食いしてくるわ」

「うっす」

 佐ノ介はそれだけ言うと、数馬達が右に行くのに対して自分だけ左に歩いていく。

 この先にあるのは港と海だけで、家は少ない。したがって中学生たちもこちら側には来ない。だからこそ佐ノ介は歩いていた。

「わっ!」

 曲がり角に差し掛かると、マリがそう言って佐ノ介に飛びかかるフリをする。佐ノ介の顔をハッキリ認識すると、マリはそのまま屈託なく笑った。

「ふふっ…うわぁ」

 マリの笑顔を見て思わず佐ノ介も笑顔になると、わざとらしく驚いたフリをした。マリも楽しくなって寸劇を続ける。

「ハハハ、驚いたかー!」

「驚いた驚いた。殺さないでくれー」

「ふふ、ならば私に忠誠を誓うか?」

「誓いまーす」

「じゃあ、デートしよっ!」

 マリは急に寸劇をやめると、佐ノ介の左腕に自分の腕に絡ませ、体を佐ノ介に密着させる。佐ノ介も穏やかに微笑みながらゆっくりと歩き出した。

「マリ、これじゃ見つかった時、お互い大変じゃないか?」

「別にいいもん。美咲とか明美とかにさえ見つからなきゃいいし」

 マリはそう言って佐ノ介の横顔を見上げる。佐ノ介も眉を上げていた。

「ウッキウキだね」

「だって、久々にデートできるんだよ?もう何ヶ月も一緒にお出かけできてなかったしぃ、制服デートも、中学生になったら絶対にやってみたかったんだもん」

「わかったわかった。怒らないの」

 佐ノ介はそう言ってマリの頭をポンポンと撫でる。マリも恥ずかしそうに笑って目を逸らした。

「ブレザー、似合ってる。めっちゃ可愛い」

 追い打ちをかけるように佐ノ介はマリを褒める。マリは下を向いて顔を隠そうとしたが、そのまま思わず口角が上がってしまっていた。

「笑った顔も可愛いよ?」

「ねぇ、ちょっとぉ、やめてよ〜もぉ〜」

 マリは赤くなった顔を見せないように左手で佐ノ介の目を隠す。

 そうして笑い合いながら歩く2人の前に、2人と同じ制服を着た男子と女子が現れた。

「じゃな」

「またね、狼介」

 佐ノ介とマリは固まる。女子の方は佐ノ介とマリに気づかずに去っていったが、男子の方は佐ノ介とマリの方へ歩いてきた。

「あ」

 その男子と気まずそうに佐ノ介とマリの声が揃う。

 男子はかけている細い灰色縁の眼鏡を掛け直した。

「同じクラスの安藤…下の名前なんだったっけ?」

 男子が佐ノ介に尋ねる。マリがすっと佐ノ介から手を離すと、佐ノ介は名乗った。

「安藤、佐ノ介だ」

「佐ノ介?随分と変わった名前だな?」

「君もじゃないか?鈴木すずき狼介ろうすけくん?」

 佐ノ介は言葉を返す。目の前の男子、鈴木狼介はふっと笑うと、眼鏡をかけ直し、肩にかかる男子にしては長い後ろ髪を振り払った。

「よく人の名前が覚えられるな」

「そりゃあ、『狼介』なんて特徴的な名前が居たらな」

 狼介の疑問に、佐ノ介は短く答える。マリも話に加わってきた。

「一緒にいたのは、同じクラスの雪乃ゆきのちゃんだよね、仲良いの?」

「2人みたいな仲じゃない」

 狼介は少し呆れたような様子で言う。佐ノ介は少し目を鋭くして尋ねた。

「このこと、誰かに言うのか?」

 すぐに狼介は呆れたようにしながら首を横に振った。

「誰に言うんだよ。それに、君らには借りがあるからな」

「借り?」

 マリが尋ねると、狼介は逆に尋ね返す。

「見覚えないか、俺の顔」

「んな少女マンガみたいなこと言われてもな」

「まぁ、顔は覚えてなくても仕方ないか。湘堂で最後、駅に4人駆け込んできたの、覚えてないか」

 狼介に言われ、佐ノ介はあぁ、と声を上げた。

「そういえばいたな」

「あの時はありがとうな。おかげで俺たちはここにいる」

「わざわざ礼なんていいのに」

 狼介の感謝に、佐ノ介は軽く言う。マリもうなずいた。

「そうそう、私たちのこと秘密にしておいてくれればそれで十分だよね〜」

「…わかった。そういうことにさせてもらうよ」

 狼介も納得したようだった。

「じゃあ、また学校でな」

 佐ノ介はそう言ってマリと共に狼介とすれ違うようにして前に歩いて行く。

 背中を向けた佐ノ介に狼介は声をかけた。

「おい、安藤」

 佐ノ介は振り向く。狼介は一瞬何かを考えると、質問を投げかけた。

「恋愛って、そんな良いか?」

 狼介の意外な問いに、佐ノ介は一瞬考える。

「良い?」

 佐ノ介は、ニッと口角を上げた。

「最高さ」

 佐ノ介はそう静かに答える。マリも思わず恥ずかしがって佐ノ介から目を逸らす。

 一方の狼介はむしろどこか見下したような目でうなずいていた。

「そうか」

「そうさ」

 狼介の発した短い言葉に、佐ノ介も短く返した。

「それじゃ、失礼」

 佐ノ介はそう言ってマリを連れて狼介の前から去っていった。

 狼介はそんな佐ノ介を黙って見送ると、1人静かにその場を立ち去っていった。


最後までご高覧いただきましてありがとうございます

今回も新しいキャラが登場しました。今後、彼が何を思いどう行動するのか、お楽しみください

今後もこのシリーズをよろしくお願いします

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