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The Magic Order  作者: 晴本吉陽
Chapter5.5-B 新たなる友達 数馬編
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Chapter5.5-B-1 横山隼人

4月7日 朝7:30

 珍しく寝坊した佐ノ介を置いて、数馬は1人で学校に来ていた。

「ったくよ、もう3ヶ月7時起きの生活してんだぞ。今更寝坊なんかするかっての。どーせマリと夜中まで励んでたんだろうよ、そーでしょーよ!佐ノクン!」

 数馬は1人で文句のような嫉妬のようなことをぶつくさと並べながらリュックを自分の机の上に転がした。

「あーちきしょう!俺だって中学生になったら女の1人や2人作ってイチャイチャチュッチュするって決めたんだよ!見てろオメェら?」

 数馬は誰もいない教室でそう言いながら椅子に座る。両脚を机の上に乗せて教室の扉の窓を見た。半透明の磨りガラスだが、誰かが来ればそのシルエットはそこに映る。

 さっそく誰かの陰がそこに映った。

(おぉっ!今なら2人きり、さ、カモン!麗しの女の子!)

 数馬は下心丸出しにして身構える。

 扉が開いた。

(お・ん・な・の…)

 男だった。

「嘘ぉ〜…」

 数馬は小さな声で落胆する。

 入って来た男子は構わず1番窓際の1番後ろの席まで歩いていく。数馬は落胆のあまり後ろの机に頭を預けて天を仰いだ。

「なぁ」

 入って来た男子は数馬に声をかける。数馬は力無く答えた。

「何さ」

「湘堂では世話になったな」

 耳慣れた地名。同時にここで聞くはずのない文字の並び。数馬は瞬時に机から脚を下ろしてそちらに振り向いた。

 ボサボサの短髪に、広い肩幅。だが数馬もその顔に見覚えのあるような気がした。

「…見た顔だな…」

 数馬は呟く。記憶の糸を手繰らせ、辿っていく。約3ヶ月前の記憶が繋がった。

「あぁぁっ!あの、最後に駅に逃げて来た4人組の!」

「そうだ」

「いやぁここで出くわすとは。無事だったんだな!」

「お前の方こそ」

 数馬はこの男の名前も何も知らないが、懐かしい友人に会ったように弾んだ声で話し出した。

「なんかあの時会った時よりゴツくなってねぇか?」

「お前もな」

「まぁ俺はあの後色々あったから」

「だがすぐにわかったぞ」

「まぁこんな変な顔は俺しかいねぇからな」

 男の方は数馬の冗談に笑う。口数の少ない男だったが、笑うと年頃の少年だった。数馬もつられて笑いながら、尋ねた。

「そいで、お前さんの名前は?」

 数馬が尋ねると、男は首を傾げた。

「あれ、名乗ってなかったっけ?」

「うん、全然」

「あぁ、そうか。俺は横山よこやま隼人はやとお前と同じ湘堂の人間だ」

「俺の名前は重村数馬。世話になるぜ、隼人」

 数馬が言うと、隼人は無言で右の親指を立てた。一見無言で無愛想な隼人からは中々想像できないジェスチャーに、数馬は声を出して笑っていた。

「他の3人は無事か?」

「全員このクラスだ」

「お、いいじゃん。先生方もそこは気ぃ遣ってくれてんのかね」

「かもな」

「あの街生き残るのは、楽じゃなかったもんな」

 隼人は数馬の言葉に無言でうなずく。

「あの日から、何もかも変わった」

 隼人は静かに言う。数馬もうなずいていた。

「俺は、自分の家族がどうなったのか知らない。俺は、自分たちで逃げるので精一杯だったからな」

 隼人は静かに声を発する。数馬もうなずいていた。

「誰だってそうさ。あんな状況じゃあな」

「もし今同じ状況に置かれたら、俺は家族を守りたい。俺は今、そのために鍛えてるんだ」

「何やってるんだい?」

「柔術を少し。数馬も、何か武道をやっているんだろう?」

 数馬は内心驚いていた。

「まぁ、空手に近い何かを少し。なんでわかった?」

「湘堂で見かけた時の身のこなし、あれがどうしても素人に見えなかったんでな」

「よく覚えてるなぁ」

「いつか一緒に稽古をしないか」

「いいぜ。その時はお手柔らかにな」

 数馬と隼人は静かに微笑み合う。

 朝の日差しが、僅かに教室に差し込み始めていた。


最後までご高覧いただきましてありがとうございます

今回からは数馬の新しい友人たちを描いていきます

今後もこのシリーズをよろしくお願いします

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