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The Magic Order  作者: 晴本吉陽
Chapter 4.5 束の間の日常
38/124

Chapter 4.5-4 束の間の日常 佐ノ介の場合

 安藤佐ノ介はシャワーを浴び終え、夕食を済ませると真っ暗な自室のベッドで天を仰いでいた。

「いつつつ…」

 筋肉痛が佐ノ介の太ももに走る。数馬、玲子、竜雄というかなり格闘の上手い面々に混ざって格闘の訓練をしてしまい、さらにはマリの手前カッコつけたくなってかなり無茶な動きもした。その結果がこれだった。

「あーなっさけねぇ…」

 佐ノ介はそう言いながら枕元のウォークマンに手を伸ばす。

 ほとんど同時に扉のノックが鳴った。ただノックではない。2回鳴らして、間を空けてもう2回、最後に素早く3回。マリがやってきた合図だった。

「どうぞ」

 佐ノ介が言うと、マリは扉を開けて部屋に入り、すぐに扉を閉めた。

「こんばんは、佐ノくん」

「こんばんは、マリ」

 2人は優しい声で挨拶を交わす。佐ノ介が軽く自分の隣のスペースを叩くと、マリは嬉々として佐ノ介のいるベッドに寝転んだ。

「今日もお疲れさま」

 マリは佐ノ介の胸元に自分の顔を置くと、上目遣いで佐ノ介に言う。佐ノ介はマリの頭を撫でながら笑顔を作った。

「いんや、疲れてないよ。全然」

「ほんと?」

「んー…やっぱ疲れたからチャージ」

 佐ノ介は言うが早いか急にマリを抱きしめる。マリは小さく甘い悲鳴を上げたが、すぐに佐ノ介にされるがまま抱きしめられていた。

「もぉ〜急だよ〜」

「元はと言えばマリのせいなんだぞぉ?マリにカッコいいって言ってほしくて無茶したらこうなったんだから」

「ごめんね、佐ノくん。すっごくカッコよかったよ」

 真っ直ぐマリに見つめられて言われると、佐ノ介は恥ずかしくなって思わずマリのことをより強く抱きしめ、頬擦りしていた。

 マリも幸せそうに頬擦りに応えていると、佐ノ介の背中にあったウォークマンに気づいた。

「あ、もしかして音楽聞くところだった?」

「ん?あぁ、でもいいよ、喋ってようよ」

「待って待って。一緒に聞こ?」

「perfume入ってないよ?」

「いいのいいの。ナッシングスでしょ?一緒に聞きたい」

 マリに押し切られるような形で佐ノ介はうなずく。ウォークマンに挿したイヤホンの右側をマリの右耳に、左側を佐ノ介の左耳に当て、佐ノ介とマリは寄り添うようにして横になる。

「流すよ」

「お願い」

 佐ノ介はウォークマンの曲を選ぶ。自分の最も好きな曲である、Nothing’s Carved In Stoneの「November 15th」


「俺はさ、いつも不安なんだ」

 音楽を聞きながら、佐ノ介はふと呟く。マリは静かにうなずく。

「死ぬのは怖くない。でもいつかマリを失うんじゃないかって、眠れない時がある。そんな時、いつもこの曲を聞いてる」

 音楽がサビに入った。

「明日を恐れるな、希望はある、ってね」

 佐ノ介はそう言ってマリの手を握り締める。マリも黙ってその手を握り返した。佐ノ介はそのまま話し続けた。

「俺はツイてる。マリがいてくれて、こういう勇気をくれる曲を聞けて、だから戦える」

「うん」

「俺はこれからもこんな時間を過ごしたいんだ。マリと一緒に」

「私も」

 佐ノ介は寝返りをうつようにしてマリの上に覆い被さる。佐ノ介の真剣な眼差しは、マリの目を真っ直ぐ撃ち抜くようだった。


「好きだ。俺が生きてる限り、俺はマリを愛し続ける。それが俺の生き方だから。」



「これからも一緒にいよう」


「マリがいてくれるなら諦めない」


「マリと一緒ならどんなことも必ず乗り越えてみせるから」


「何年経ってお互い歳を取っても」


「俺の人生には」


「マリが必要なんだ」



 曲が終わる。静まり返った2人の世界には、お互いが優しく唇を重ねる音だけが響いていた。


最後までご高覧いただきましてありがとうございます

今回は佐ノ介の日常を描きました。

佐ノ介のセリフの行間に空白があるかと思いますが、本当は『November 15th』の歌詞の一部が入る予定でした。権利とかの都合がよくわからなかったので全部削除しましたが、ぜひこの曲を聴きながらこの作品を読んでいただければと思います。

ちなみにこれは裏設定ですが、佐ノ介の誕生日は11月15日です

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