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The Magic Order  作者: 晴本吉陽
Chapter 4 悪意
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Chapter 4-8 安息

1月6日 9:00


 食堂に集まった子供たちの前に武田は立った。

「朝食が遅くなってしまい、すまない諸君。今日は小牧さんが旦那さんと喧嘩してしまって遅刻したんだ。彼女に代わって私が謝罪する」

 武田はニコニコ笑いながら頭を下げる。おおよそすでに2人の人間が自殺したところを目の当たりにしたとは思えない明るさだった。

「さて、今日は君たちにいくつかお知らせがある」

 武田が言うと、思わず子供たちは身構える。武田は笑って子供たちを嗜めた。

「そんな警戒しないでくれたまえ。私だって君たちにいい知らせを持ってくることくらいはある。まずひとつ目。今回の事件での君たちの活躍に感謝の意を込めて、今日、明日、明後日は訓練を休みとする」

 身構えていた子供たちは、一瞬歓声を漏らす。

「さらに特別なボーナスとして1人1万円を支給する。加えて日給もこの3日間普段通りに支給する。灯島市内であれば自由に出かけてくれていいぞ」

「灯島から出てはダメですか?」

「そうだな。控えてもらいたい」

 香織の質問に武田は答える。一見嫌な条件に見えるが、灯島市は金山県でも1番の都会であり、子供たちが楽しめる場所は十分にある。

 子供たちは不意にもたらされた休みに歓喜していた。そんな中、不意に心音が手を上げて武田に尋ねた。

「我々が確保した犯人はどうなりましたか?」

 真相を知ってる何人かは俯く。武田は残念そうに答えた。

「自殺を選んだ」

 泰平が怒るのではないかと思って数馬は泰平の方を見る。だが泰平は冷静な表情で武田をじっと見ていた。

 心音は静かに頷く。他の子供たちも静かに俯いていた。

「おっと、暗くなってしまったな。さぁ、朝ごはんを楽しんでくれ」

 武田はそう言って後ろへ下がる。

 すぐに食事班長の中年女性の小牧が出てきた。

「食事班長の小牧です!」

 いつにも増して大きな声で小牧は話す。それをよそに毎朝のバイキングのように食事が並び始めた。

「今日はワタクシ、大変機嫌が悪いです!バイキング形式ですが食べ残しがあったら全員ぶっ飛ばしますので覚悟するように!残さず食べてくださいね!それではどうぞ!」

 小牧が言い終えると、子供たちは配膳の列に並ぶ。子供たちの表情は和やかで、今日の午後のお出かけ先を相談し合うものも多かった。

 数馬もタイミングを見計らって佐ノ介、竜雄、めいと合流し、泰平に声をかけながら配膳列に並んだ。

「いよう、泰さん」

「よう」

「この後どっか行くか?」

「そうだな、近所の地理は把握しておきたいから、何処か出かけるか。数馬もどうだ?」

「乗った。佐ノと竜雄も、午後どっかいこーぜ」

 数馬は後ろの佐ノ介と竜雄にも声をかける。2人とも気軽に同意した。

「ちょっと数馬、私は?」

 竜雄の後ろにいためいが尋ねる。数馬は答える前に泰平の方を向いた。

「いいすか?」

 泰平は変顔をしながら両手でバツマークを作る。数馬はそれを見て頷いた。

「OKが出たわ。5人で繰り出そう」

「おい数馬」

 泰平を無視して数馬はめいも巻き込む。めいは小さくやったーと笑うと、泰平に笑いかける。泰平は口をわずかに尖らせるが、来るなとはひと言も言わなかった。数馬も泰平に笑いかけると、泰平も呆れたように笑い返した。

 そんな様子を見た竜雄は、佐ノ介に思わず感想を漏らしていた。

「数馬と泰さんさ、さっき意見が食い違ってたんだよ。一瞬すごく張り詰めた空気になってさ。それでも終わればあんなに仲良くしてる。すごいよな」

「お互いの意見をよく聞いて信頼しあってるからな。信頼は何者にも勝るもんさ」

 佐ノ介が言うと、竜雄もうなずく。少年少女たちは、微笑みをたたえたまま食事を始めるのだった。


最後までご高覧いただきましてありがとうございます

Chapter4、これにて完結です。ここまでお付き合いいただきありがとうございました

さて、Chapter4、いかがでしたでしょうか。

やはりこの流れでは武田が気になるのではないでしょうか。彼の目的は一体なんなのでしょう。そして今回は出てきませんでしたがチラチラと名前が出てくるクライエントなど、さまざまな人間の思惑が交錯していきます。これからもこの作品にお付き合いいただき、楽しんでいただければと思います



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