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The Magic Order  作者: 晴本吉陽
Chapter 1 少年たち
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Chapter 1-1 魅神暁広

Chapter 1-1 魅神暁広


2013年12月24日8:00 湘堂市 四辻新町


「行ってきます!」

 爽やかな冬晴れの下、快活で爽やかな小学生の声がする。

 魅神暁広みかみ としひろ少年は黒いランドセルを背負うと、家から飛び出して目の前の公園へ走った。

 彼は七本松小学校の6年生で、クラスでも明るく爽やかな雰囲気で、誰からも好かれる少年だった。彼も好いてくれるクラスメイト達をかけがえのない仲間と呼び、誰に対しても明るく接していた。

「遅いよトッシー!」

 公園の中には赤いランドセルの少女、原田茜はらだ あかねがベンチに座っていた。その近くにも利広の友人の男子が2人立っている。

 彼女は暁広と特に仲の良い女の子だった。暁広の放つ雰囲気が茜にとってはとても居心地が良く、暁広にとってもくだらない話でも笑ってくれて、いつも元気な茜は、また他のクラスメイトとは別で、特別な存在であった。

「ごめんって!」

 暁広が両手を合わせて謝ると、茜は立ち上がる。そして嬉しそうに笑って見せた。

「いーよ?なんてね」

「ハハ、似合わねー」

 茜の言葉に利広が笑う。茜が暁広を叩こうとして、そこから逃げるようにして4人は歩き出した。


 4人がのんびり話しながら歩いていると、暁広の友人のひとり、眼鏡をかけた馬矢浩助ばや こうすけが突然尋ねた。

「トッシー、実験のレポート書いた?」

 暁広の顔が一瞬で青くなる。

「ゼンゼェンやってない!やばい!」

「私の、よかったら見ていいよ」

 暁広の隣に立っていた茜が、ほんの少し頬を赤らめながら言う。暁広は嬉しそうに眉を上げて答えた。

「マジ?サンキュー茜!学校着いたら見せてよ!」

「うん!」

 2人は優しい笑顔を交わす。平和な瞬間だった。

「あーら、朝からアツアツね」

 横から別の女子の声がする。暁広達が振り向くと同級生の女子が2人、伊藤美咲いとう みさきと金崎さえ(きんざき さえ)がそこに立っていた。

 さえはともかく、美咲の方は厄介な女子だった。恋愛に関しては誰よりもめざとく、さらに情報発信力もある。だから暁広としても変な噂を広められるのは厄介だった。

「違うって」

 暁広がやや強く否定する。美咲は口元を隠しながら笑って見せた。

「あーらこれは失礼?」

「美咲、よしなよ、いこ」

 まだまだからかう気満々だった美咲を、さえが押してその場を立ち去る。

 暁広は少しおこっているようだったが、少し笑ってもいた。

「あいつヤな女だな」

 利広の友人のひとりである男子、洗柿圭輝あらいがき たまきが呟く。一方の暁広は笑って流した。

「美咲だって仲間なんだ。仲間には色んな奴がいていい」

「トッシーは優しいね」

 暁広の言葉に、茜が言う。茜にとってはこの優しさが暁広の好きなところだった。

 2人が微笑みを交わすと、4人は再び歩き始めた。



 4人がちょうど学校までの中間地点、歩道橋に差し掛かると、前方に8人ほどの同級生の集団がいるのが見えた。

「みんないるね」

「合流しようか」

 短くやり取りを交わすと、暁広は彼ら8人に駆け寄って後ろから声をかけた。

「みんなオハヨッ!」

 暁広の声に呼応して8人が一斉に振り向いた。

「おー、おはようトッシー!」

 答える少年少女たちの声や表情は明るい。暁広も笑ってそれに答えた。

「個性派勢揃いじゃん!縁起良さそう」

 暁広に言われると8人は少し照れ臭そうにしていた。

 暁広にとっては彼ら8人はクラスの中心的な存在で、個性の塊だった。

 野村駿のむら しゅんは学級委員の男子で、野球でも4番でピッチャーの好青年、

 糸瑞心音しみず ここねは学級委員の女子でクラスで1番勉強ができる、

 斉藤遼さいとう りょうはクラス1サッカーが上手でしかもイケメン、

 山本香織やまもと かおりはそんな遼の彼女でクラス1の美人のムードメーカー、

 黒田武くろだ たけしは無口だがそれが逆にカッコいいと見られているサッカー少年で、

 藤田真次ふじた しんじはクラス1の長身で熱い男、

 大島広志おおしま ひろしは陰が薄いが一周回って存在感のある男子、

 黒田明美くろだ あけみはクラス1の情報通の女子。

 これだけの人間達が自分の仲間であることが暁広にとっては誇らしかった。

「トッシー、冬休み明けのレク、考えてくれた?」

 心音が学級委員らしく尋ねる。利広は明るくうなずいた。

「うん!茜がビンゴゲームを持ってるみたいだからそれを使わせてもらうよ!」

 暁広がそう言って目線を送ると、茜が明るくうなずく。合計12人の小学生の集団は楽しそうに盛り上がった。

 気がつくと12人の小学生の集団は学校の前まで来ていた。

 学校の正門の前では伊東校長先生が落ち葉をほうきでかき集めて掃除をしていた。

「校長先生おはようございます!」

 12人の集団は声を揃えて言う。伊東校長先生は嬉しそうに笑って応えた。

「はい、おはようございます!6年3組のみんなは仲が良いねぇ!」

 伊東校長先生は太い腹の上に笑顔を作って言う。すぐに暁広が笑いながら返した。

「駿と心音が頑張ってるからな!」

「いやあ、トッシー達のおかげだよ」

 駿が謙遜するのを見て、伊東校長先生は太い腹を上下に揺らして笑い始めた。

「ハッハッハ!仲良きことは良いことだ!さ、寒いから教室に入りなさい」

 伊東校長先生に言われ、12人は元気よく返事をする。

 そして12人が教室へ歩き始めたその時だった。

「生徒の呼び出しをします、6年3組、安藤君、重村君、登校していたら職員室まで来るように」

 彼らの担任の大上先生の怒気を孕んだ声だった。


最後までご高覧いただきありがとうございます。

ここから本編がスタートします。


読者の皆様の小学校時代はどのようなものでしたでしょうか?

思い出しながら読んでくださると、ジェネレーションギャップや、逆にあるあるで共感していただけるかもしれません

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