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The Magic Order  作者: 晴本吉陽
Chapter 3 復讐
21/124

Chapter 3-2 黒鳥の城

残酷な描写が含まれています

苦手な方はご注意ください

今回やや長めです

 バンに乗り込む少し前、子供達は準備をしている間、作戦もまとめていた。


「あの男からもらった地図によれば洋館には4方向から入りこめるみたいだ。また4つの班に分かれて行こう」

 暁広が情報と作戦をまとめて、他の子供達に伝える。

 心音が付け加えるように提案した。

「4つの班は時間差で突入した方がいいんじゃない?」

「だったら1番最初に突入する班は地獄を見ることになるな」

「でも裏を返せば敵の戦力を釘付けにできる」

 泰平と数馬が口々に言う。暁広はしばらく考えると、防弾ベストの上にパーカーを羽織りながら口を開いた。

「数馬の班、C班か。1番手をお願いできるか?」

 C班の面々は顔色には出さないが驚く。

 遼がメンバーの顔を見回す。不安そうな香織、明美、竜雄。全てを受け入れている桃と武。そしてその上でなお闘志を瞳にたたえている数馬の表情があった。

「どうせどっから行ったって地獄だもんな。引き受けていいか?」

 遼が軽い口調で尋ねる。

 C班のメンバーは不安を押し隠しながらうなずいた。

「ごめんな、1番きつい役を押し付けちまって」

 学級委員の駿が言う。遼がやはり軽く答えた。

「なに、お互い様だろ?」

 一度命懸けの状況をくぐってきた彼らには小学生とは思えない異様な空気感があった。

 暁広が続けた。

「最後に突入する班は確実に敵のリーダーを殺さなきゃならない。護衛もたくさんいるはずだ。俺たちに任せてくれないか?」

 暁広の言葉に全員がうなずく。もはや彼はこの生き残ったメンバーの中で中心的な存在だった。

「となるとA班とD班が残ったが、どうする?」

「ほぼ同時でいいだろう。そうして敵が混乱した隙に、B班が敵のボスを殺す」

 佐ノ介と泰平が短くやり取りを交わす。

 作戦は決まった。



 目的地に向かうバンの中、竜雄は隣に座る数馬をチラリと見た。数馬は黙々と拳銃の整備をして、右の手首にナイフを仕込むとただ前を向いていた。内心は数馬もきっと恐れを抱いているのだろう。しかしその様子は一切見せない。竜雄もそんな数馬の様子を見て懐の湘堂神社のお守りを握りしめる。

(父さん、母さん、あゆみ…みんなまた会おう)

 生死不明の父、母、妹に思いをはせる。必ず生きて帰るという決意を胸に、竜雄は前を見た。

「着いたぞ」

 バンの運転手が言う。暗い車内の揺れがゆっくり収まり、子供たちはお互いに素早く目配せをする。

「ありがとうございました」

 遼が短くそう言うと、子供たちは無言でバンを降りていく。挨拶した遼も最後に降りると、白い息を吐きながら周囲の様子を見る。

 正面に見えるのは巨大な洋館だった。雪雲が紫色に染めた空を背景に、赤焦茶色のレンガの塔が不気味に彼らを見下ろしていた。周囲には人の気配はない。都会から忘れ去られた場所にそれはあった。

「ここが…」

 黒い格子の門の前に立った桃が呟く。冷たい雪が子供たちに降り掛かり始めた。

「みんな、装備は良いな?」

「バッチシよ」

 遼の言葉に数馬が返す。子供たちが不安そうにお互いに目配せする間、数馬が門を開いた。その先に洋館の本当の入り口である木の扉がある。

 いつも通り数馬が先に進む。その横に竜雄、少し後ろに桃と武、さらに後ろに遼、香織、明美と続いていく。

 数馬がドアノブに左手をかけた。右手に拳銃(M92F)を握りしめ、竜雄と目で全てやり取りすると大きく息を吸った。

「いくぞ」

 数馬が短くそう言うと、全員うなずく。数馬はそのまま扉を勢いよく開き、部屋の中に銃を向けて周囲を見渡した。


 薄暗い。正面に大きな階段があり、左右に何か通路もある。だが細かいところは見ていられない。数馬は考えを巡らせながら何度も周囲を見渡すが、敵の姿が見えない。

 遅れてみんなが入ってくる。銃を向けながら隈なく敵を探す。

 最後の香織が入る。不安そうにしながら銃を構えて遼の隣に立つ。

 彼らの背後の扉に鍵がかかったような音がする。明美が扉に手を伸ばすがやはり開かない。

 薄暗い部屋が一気に明るくなる。子供たちは上からの光を遮りながら銃を構えた。

「来るとは思っていた。が、まさかこんなのが来るとはな」

 階段の1番上から声がする。不気味な低い男の声。そして方々から聞こえてくる金属音。湘堂の町で嫌というほど聞いた銃の音。子供たちは覚悟を決めて上を見る。

 見えるのはこちらに向く10数個の銃口。階段は長く、敵の居場所まで登っていけばその間に蜂の巣にされるだろう。

 となればできることは少ない。

「だが、子供だろうと容赦はしない。死んでもらう!」

 敵の指揮官は覚悟を決めたように言う。子供達は瞬時に目配せをした。

「撃て!」

 敵の指揮官が叫ぶと同時に、子供たちは3手に別れる。数馬と竜雄は正面の階段のすぐ下に、武と桃と明美は左側の通路の方へ、遼と香織は右側の通路に駆け込み、飛んでくる銃弾に対して影になるようにしゃがみこむ。

(なんだこいつら?統率が取れすぎている…)

 仲間たちの銃声を聞きながら指揮官は階段の上から状況を見て思わず考え込む。だがそんなことをよそに、仲間の1人が悲鳴を上げていた。

「がぁあっ!」

 見ると階段下にいる2人の男子、数馬と竜雄が拳銃で下から2階の手すりに並ぶ敵に銃撃を浴びせていた。彼らを援護するように、マシンガンで左右から遼や桃が銃撃を浴びせてくる。

(的確な弾幕だ。下の2人を撃つために頭を上げれば左右の銃撃で殺される)

 指揮官が考える間にも、仲間がひとり、ふたりと数馬と竜雄の銃弾に倒れていく。指揮官は拳銃を片手に手すりにしゃがみこみ、通信機を手に取る。

「こちら東門の白堂はくどう、敵襲を受けた、増援を!」

「了解した。こちらからも派遣する」

 白堂指揮官は通信を終えると、改めて状況を見る。

 味方がどんどんと子供の銃弾に倒れていく。15人はいた仲間が、10人ほどになっていた。

「左右のマシンガン持ちを狙え!」

 白堂が叫ぶ。彼の部下たちは指示通りに左右に銃を向けて銃弾を浴びせる。

 その間に白堂は階段の手すりから階段の下を見る。左右の通路の陰からの援護を失った数馬と竜雄は窮屈そうに身をかがめて銃弾を凌いでいた。


「勝負かけるぞ」

 数馬は小声で竜雄に言う。竜雄は持っていた拳銃をしまい、突撃小銃(AK47)に持ち換える。数馬も持っている拳銃(M92F)の弾数を数えると、覚悟を決め、もうひとつ腰に差していたリボルバー拳銃(S&W M686)を抜いた。

「援護頼むぞ」

 数馬は竜雄にそう言って階段の影から飛び出した。

 敵の銃撃はまだ左右の遼や桃を狙っていた。数馬はその裏をかいて正面突破を図る。

 竜雄は階段を駆け上がる数馬を援護しようと小銃を乱射する。数馬たちから見て左側に陣取っていた敵の部隊は竜雄の銃撃によって身動きが取れなくなっていた。

 数馬はその間に右側にいた敵に銃を向ける。敵は6名。

「くたばれ!」

 数馬はそう叫んでいたかと思うと流れるような速さで敵に狙いをつけ引き金を引いていた。

 357マグナム弾の重々しい銃声が6つ響く。

 それらは全て的確に敵の頭を撃ち抜いていた。

「バカな…!」

 白堂は様子を見て思わず呟く。敵は一斉に数馬の方に向いた。

 一瞬の隙ができる。竜雄はすぐさま階段の陰から飛び出すと、上にいる敵に向けてより当たりやすいところから銃撃を浴びせる。

 敵が倒れていく。残り8人程度だった敵は4人にまで減っていた。

 数馬はその間にリボルバー拳銃を投げ捨てると、もう片方の拳銃であるM92Fを抜き、連射する。

「ぐぅぁあっ…!」

 白堂以外の敵は軒並み数馬に撃ち抜かれて倒れる。白堂も数馬に肩を撃ち抜かれてそこに倒れた。銃を落とし、天を仰ぎながら後ろへ這いずる。

「みんな!あがってこい!」

 竜雄が叫ぶ。数馬は白堂を見下ろすようにして拳銃を向けた。

 白堂は驚いたような表情をしながら自嘲的に笑っていた。

「ここまでか…まさかガキがこんな手強いとは思わなかったよ…」

「覚悟はできているな?」

 数馬は冷徹に言う。彼はとても子供とは思えないような殺気で白堂を見据えていた。

 白堂はやはり内心驚いていた。こんなにも冷静かつ獰猛に戦い、自分すらも倒した人間がこんな子供だとは。末恐ろしいとしか言いようのない戦闘の才能を数馬から感じていた。

「…できるか!」

 白堂はそう叫ぶと落とした銃に飛びつこうとする。だがすぐに数馬は引き金を引き、白堂は赤色を撒いて息絶えた。

 少し遅れて竜雄や他のメンバーが階段を上がって数馬と合流する。すぐに数馬は他のメンバーに声をかけた。

「敵が来るぞ、備えて!」

 数馬に言われてみんな武器を取る。そのまま周囲を見回して、遮蔽物となりそうなものを探す。

「桃!」

 数馬が桃を呼び、階段すぐ近くの巨大な扉を指差す。

「これ破れるか?」

「さぁ。やってみる」

 桃がそう言ったのとほぼ同時に数馬と桃の横を銃弾が掠める。2人はすぐさまその場からはけて階段の手すりの陰にしゃがみ込んだ。

「さっきの通路から来てる!」

 明美が言う。彼女や他のメンバーたちもすでにしゃがみ込んでいた。

 やってきているのはやはり10人程度。しかし全員小銃を携帯しており、殺気立っている。

 銃声が鳴り響き、銃弾が飛んでくる。子供たちはしゃがみながら周囲を見て逃げ道を探す。

「おい、あっちに通路があるぞ!」

 遼が叫ぶ。数馬と竜雄が牽制している間、他のメンバーたちはそちらの方へ走り出した。

 数馬たちも遅れて敵から見て左側の通路へ走る。銃弾をかわしながら物陰に入ると、手早く銃の弾を交換する。

「どうする?」

 数馬が他のメンバーに尋ねる。遼もサブマシンガンのマガジンを交換しながら答えた。

「下手に逃げてもみんなに迷惑がかかる!ここでなんとか踏ん張るしかない!」

「ノってきた」

 数馬は皮肉っぽく言う。

「ねぇ、他の班どうなってるか連絡取れない?」

 香織が明美に尋ねる。しかし明美は首を横に振った。

「携帯の電波が繋がらない!山奥だから…!」

「孤立、か」

 武は呟きながらアサルトライフル(HK416)を発砲する。子供たちの表情がより引き締まったものになった。

「やってやるさ」

 数馬はそうぼやくと身を乗り出して引き金を引き始める。

 銃声が部屋に響き渡り始めた。





 数馬たちが激戦をかわしている頃、暁広たちはバンで洋館の裏に回り込んでいた。

「他のみんなは突入したみたいだね」

 車の窓から外を覗いた茜が呟く。暁広はうなずいた。

「みんなは敵を引き付けるために戦ってくれてる」

「その間に中央にいるであろう敵の総指揮官を倒す」

 駿と心音が作戦を確認し合う。玲子はそれを聞きながら自分の銃の弾薬を確認した。

「何があってもこの人間を倒す。いいな?」

 暁広が言う。他のメンバーたちは力強くうなずいた。

 車が止まる。

「行こう」

 暁広がそう言うとバンの扉を開き、素早く全員降りる。

 玲子は真っ先に門へ駆け寄り、しゃがみこみながら開けると、そのまま扉へ駆ける。暁広と浩助が遅れて扉に走ると、呼吸を合わせて扉を蹴り開けた。

 中に入ると同時に全員一斉に周囲を警戒する。

 部屋の壁越しに銃声が聞こえてくる。だが暁広たちが狙われているわけではない。

「ホントにやりあってんな」

 圭輝が呟く。

「だったら作戦は成功だ。今のうちにいくぞ」

 暁広は淡々と言う。目の前の階段を上り、エレベーターと思わしきもののボタンを押す。エレベーターはものの数秒で暁広たちのもとへ辿り着き、暁広たちは乗り込んだ。

 薄暗いエレベーターにいたのも数秒だった。扉が重々しく開くと、薄暗く細い通路と、その先に怪しげな広間があった。

 玲子が先頭を進んでいく。その少し後ろから暁広と茜、圭輝と浩助、駿と心音というように隊列を組み進んでいく。部屋は不気味なまでに静かだった。

 通路を抜けて全員広間に並ぶ。階段がふたつあり、2階は通路とその奥にいくつかまた通路があるようだった。

「ここが敵の中枢?」

 心音が拳銃を構えながら呟く。

「その通り」

 部屋に低く響き渡る不気味な声。子供たちは改めて各々の銃を構えた。

「姿を現せ!」

 暁広が叫ぶ。

 靴の音が鳴り響く。

 2階の階段近くの柱の陰から黒い服に身を固めた男が1人。鋭い目つきに真っ黒の髪と無精髭。そして右手に黒光りする拳銃。

 彼は目に殺意をたたえたまま口角だけをギュッと上げていた。

「お前が俺たちの街を襲った張本人だな!」

 暁広が叫ぶ。彼は暁広たちを見下ろしたまま答えた。

「その通りだ。私はヤタガラス。君たちは我々の攻撃を生き延び、私を殺しに来たようだな」

「あぁそうだ!お前みたいな悪人は!法律なんかじゃなくて俺たちが裁いてやる!」

「楽しみだ」

 ヤタガラスと名乗るその男は暁広と応酬すると、銃をそちらに向けた。

 それとほとんど同時に玲子が持っていたリボルバー拳銃(M500)を発砲する。ヤタガラスはすぐに柱の陰に隠れてやり過ごす。その間に暁広は他のメンバーに指示を出した。

「圭輝!浩助!左側から!駿と心音は右に!俺と茜と玲子は下から援護!」

 暁広が言うとそれぞれ動き出す。圭輝と駿はそれぞれ持っていたサブマシンガンを発砲しながら、全員を移動させる。

(各自の武装を理解して最適な作戦を執っている。その指揮官はあのショットガンのガキか)

 ヤタガラスは柱に隠れて銃撃をやり過ごす。自分の拳銃コルトウッズマンの弾数を確認すると、まだ状況を見る。

「詰めろ!」

 暁広が指示を出すと、全員で階段を登り、発砲しながらヤタガラスとの距離を詰めていく。

「もらった!」

 暁広がそう叫ぶと、ショットガンの散弾を柱に撃ち込んだ。散弾はそのままヤタガラスを撃ち抜くはずだった。

 柱の陰から何かが伸びた。次の瞬間には柱の陰にいたヤタガラスは、宙を舞っていた。

 風にたなびく黒のコートは、カラスを思わせるようだった。

 一瞬気を取られた子供たちは反応が遅れた。

 ヤタガラスは1階に降りると、そのまま拳銃を暁広たちに向けて発砲する。

「ぅぁっ!」

 2階にいた心音がまず肩を撃ち抜かれる。そのまま彼女はそこに倒れ込む。

「こんの…!」

 階段の1番下の段にいた玲子は目の前にいたヤタガラスに狙いをつける。しかしヤタガラスはすぐに横に飛び退き、玲子の拳銃を撃ち落とす。

「ぅっ…!んのぉ!」

 玲子は跳ね返るようにしてヤタガラスに殴りかかる。

「格闘戦か。面白い!」

 ヤタガラスは殴りかかってくる玲子の最初の一撃をバックステップでかわす。

「今のうちだ!茜!心音の手当てを!残りは玲子の援護だ!」

 玲子がヤタガラスと殴り合う間、暁広は指示を出す。指示を受けた駿や圭輝、浩助は階段を降りてヤタガラスに近づく。同時に茜は心音を柱の影まで引きずると、包帯を取り出して治療を始めた。

「適切な指揮だ」

「よそ見してんじゃないわよ!」

 ヤタガラスが余裕綽綽と言わんばかりに暁広の指示に感心する。一方の玲子は小馬鹿にされたことが癪に障ったのかヤタガラスの股ぐらに蹴りを入れる。

 一瞬怯んだヤタガラスの首を掴むと、玲子はヤタガラスの顔面に膝蹴りを入れ始めた。

「くたばれっ!くたばれっ!」

 玲子は裂帛の殺意を込めてヤタガラスの顔面に膝を叩き込む。それなりにヤタガラスも消耗しているはずだった。

「軽い」

 ヤタガラスはそう呟くと、自由になっていた左腕を大きく振り回し、玲子の肋骨に拳をたたき込んだ。

「うぐぁあああっ!!」

 人生で初めて味わう肋骨が折れる感触。玲子は思わぬ激痛に手を離してしまった。

ヤタガラスはほとんど同時に玲子の首を締め上げる。そして彼女を盾のようにして拳銃を抜くと、階段に向けた。

 ヤタガラスの視界にいるのは駿と圭輝だけだった。

「なるほど」

 ヤタガラスはそう呟くと玲子を突き飛ばし、しゃがみこむ。ほんの数秒遅れていたら浩助のナイフに貫かれていただろう。

 ヤタガラスはそれをかわして浩助の腹に左の蹴りを入れる。浩助は吹き飛ばされて身動きが取れなくなった。

 そんなヤタガラスを攻撃しようと駿と圭輝が引き金を引こうとする。それよりもヤタガラスが拳銃の引き金を2度引く方が速かった。

「ぐぉっ!?」

「くそっ」

 銃の威力が低いことと当たりどころが良かったのも相まって致命傷ではないものの、駿も圭輝も倒れ込んだ。

 瞬間、ヤタガラスはその場を飛び退いた。そうでなければ2階から暁広が撃ったショットガンの銃弾がヤタガラスを穴だらけにしていただろう。

 ヤタガラスはすぐに左手で腰に差しているフックショットを抜き、どこかに撃ち込むと2階の暁広の方へ飛んでくる。

 暁広はすぐにその場を飛び退きながらショットガンを撃つ。しかしワイヤーで飛び回るヤタガラスに当たらない。ヤタガラスが発砲するのも当たらないが、暁広は転がって距離を取る。

 ヤタガラスが2階の暁広の目の前に着地する。暁広はすぐにショットガンを撃つが駆け寄ってきたヤタガラスは銃口を蹴ってズラしそれを外させる。

 暁広はショットガンを振り回すが、ヤタガラスはそれをすぐにかわして銃を蹴り上げる。暁広の手からショットガンが離れた。

「あの戦場を生き抜いた君たちだ。そして君はその中で積極的に指揮を執っていたようだな」

「だからなんだってんだ!」

 暁広は右の拳を振るう。ヤタガラスはすぐにそれを左手で受け止めると、暁広を自分の後ろへ投げ飛ばした。

「君の指揮能力の高さは見せてもらった。次は戦闘力を見せてもらおうか」

 ヤタガラスはそう言うと、拳銃を腰に差す。暁広はファイティングポーズを取るヤタガラス相手に軽く舌打ちをしてから肩を回した。

「そりゃあああ!」

 暁広はヤタガラスに駆けながら右腕を伸ばし、それを振り回す。ヤタガラスはその勢いを利用して暁広を投げ飛ばした。

「なるほど、大したことないな」

「まだまだ…!」

 暁広は落ちていたショットガンを拾いながら立ち上がりつつヤタガラスに発砲する。ヤタガラスは冷静にそれをかわし、ショットガンを蹴り飛ばし、その足を返すようにして暁広の顔を蹴り飛ばした。

 暁広が倒れる。ヤタガラスはため息を吐いた。

「この程度とはな」

 呆れたように言うと、ヤタガラスは暁広を踏みつけようと近づく。ヤタガラスが脚を振り上げた瞬間だった。

「そこだ!」

 暁広は腰に差していたナイフを抜き払う。ヤタガラスは瞬時に殺気を感じて後ろへバック宙返りをする事で攻撃をかわしていた。

「いいぞ、そう来なくては」

 ヤタガラスはそう言いながら改めて身構える。暁広はナイフを向けて立ち上がった。

「人を試すような物言いをしやがってこの悪党が!殺してやる!」

 暁広はそう叫ぶと、ヤタガラスの喉を狙って突きを放つ。

 ヤタガラスは微動だにしない。

(もらった!)

 暁広がそう思った瞬間、彼は地面に転がされていた。暁広の勢いを生かしてヤタガラスは暁広を投げ飛ばし、ナイフを奪っていた。

「間合いの取り方も何もなってないな。攻撃方法も感情や本能に任せたそれだ。頭は回るようだが腕はまだまだのようだな」

 ヤタガラスは暁広を踏みつける。そのままヤタガラスはナイフを振り上げる。

「ここまでだ。少年」

 刃がきらめく。暁広は覚悟を決める。

 同時に銃声が1発鳴り響いた。


最後までご高覧いただきましてありがとうございます

街を滅ぼした強敵、ヤタガラス。彼の並外れた戦闘能力の前に少年たちはあっという間に蹴散らされてしまい、暁広も絶体絶命の状況。

果たして暁広の運命は...

次回もお楽しみください

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