表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Magic Order  作者: 晴本吉陽
Chapter 2 幕開け
18/124

Chapter 2-8 決死

残酷な描写が含まれています

苦手な方はご注意ください

 四辻駅は七本松小学校の裏門を出て300m先を左折、商店街を通ってさらに200m地点を左折すると50m先に入口の階段やスロープが見えてくる。階段を登り切ると売店と喫茶店があり、その隣、つまり駅の中心部分に改札がある。

 数馬、佐ノ介、泰平の3人は裏門を出てすぐの直線を駆けていた。炎上した車が住宅に突っ込んで止まっていたり、死体が転がったりしていたが、3人はそれらにほとんど目もくれずむしろ違うことに違和感を感じていた。

「この辺りは街の中心部、人口が集中しているのに敵が少なすぎる」

 泰平が走りながら呟く。数馬、佐ノ介もなんとなくそれは感じていた。

 300mの直線を駆け抜け左折し、200mの直線になっている商店街を走り始める。

 商店街には様々な店があった。だがそれらの看板は全て赤色に染まっていた。店先には専業主婦であろう女性の死体が多く転がっていた。

 道の中央にある炎上した車などを避けながら商店街を駆け抜け、左折するところまでたどり着く。

 そして3人がそこまでたどり着くと、駅前の様子がおかしいことに気づいた。近くの止まっているトラックの陰にしゃがみこんで隠れ、駅の様子を窺った。

「見えるか、佐ノ」

 3人の中では視力がズバ抜けている佐ノ介が射撃用ゴーグルをズラして様子を見る。

「駅に通じる車道を軒並み車で塞いでるな。国道から正面切って逃げてきた人たちをあれで足止めして殺すんだろうな。敵も沢山いる。外にいるのだけで10…18人」

「俺たちが使うのは国道じゃないが」

「じゃなくても車で道を塞がれてる。外にいるだけであの人数だ、駅の構内にも絶対にいる。しかもこっちは南口、駅構内に入れたところで北口側にいる敵も合流してきて激戦は避けられないだろうな」

 佐ノ介が状況を報告する。その間に泰平は周囲を見回しながら何か打開策を考えていた。

「一見不可能そうに見えるが作戦次第だな。どうだ泰さん」

 数馬が泰平に振る。泰平は何かを決めたように話し始めた。

「これだ」

 泰平はそう言って3人が隠れているトラックを叩く。数馬が尋ねた。

「何すんだ?」

「移動しながら話そう。だがとにかくあれは突破できると俺は読んだ」

「楽しみだ」

 3人は学校に戻るために走り始める。そのまま泰平は数馬と佐ノ介に自らの計画を話し始めた。


15:30

 学校で待機していた他の生徒達は二手に分かれていた。片方は体育館の前で待機して治療などを行い、もう片方は校長室に武器の補充に行っていた。

 体育館前のメンバーにはこの状況でリーダー的な立場の駿もいた。彼は腕時計を見ては周囲を見回し、不安そうな表情をしていた。

「大丈夫だよ、駿」

 そんな彼に声をかけるのは暁広だった。暁広の表情は今までの無邪気なものからどこか覚悟を決めたような表情になっていた。

「あの3人だ。きっと戻ってくる」

 暁広はそれだけ言うと駿の肩を叩く。駿もまだ不安そうではあったがうなずいた。

 裏門の方から足音が聞こえた。

 すぐにその場に居た玲子と桃が銃を構える。

「おいおい俺のことが憎いのはわかるけど殺さんといてくれよ」

 そう言って現れたのは数馬だった。続いて泰平、佐ノ介と息を整えながら現れた。

「待ってたよ」

「遅くなって申し訳ない、さっそくだが全員集めてほしい、至急だ」

 駿の言葉に泰平が早口で言う。駿はうなずくと保健室で待機していた理沙に手旗信号を送り、受け取った理沙は校長室の生徒たちに呼びかける。

 3分と経たず6年3組の生徒達が全員集まった。

「よし、では伝える、佐ノ介、駅の状況を」

 全員集まるやいなや泰平が話を切り出す。佐ノ介が見たものを報告し始めた。

「駅への道は車で塞がれ、駅には大量の敵が集まってる。だが街には敵はほとんどいなかった」

「これらのことから敵のほとんど全てが駅に集結して逃げてきた人間を待ち伏せていると考えられる」

 佐ノ介に続き、泰平が言う。さらに泰平は続けた。

「結論から言うとこれは突破できると思う。駅の近くに荷台付きの大型トラックを見つけた。それを使って道を開き、駅の構内に突入、改札を抜けて電車に乗り込む」

「だが駅には敵がたくさんいるわけで。さっきみたいな撃ち合いになる」

 泰平の作戦説明に数馬が付け加える。心音が質問した。

「電車は本当にあるの?」

「この時間帯の四辻駅なら普段車両整備してるぜ。あると思う」

 答えたのは広志だった。彼は鉄道好きで通っており、そんな彼の言葉ならまず間違いはないだろう。

「それもあるし、かなりの数の敵が集まっているのも挙げられる。駅からあれだけの数が爆撃から逃げなければならないのだからやはり電車はあると見ていい」

 泰平の言葉にみんな納得する。だが玲子が尋ねた。

「トラックを動かすって言ってたけど、それは誰がやるの?」

「武」

 泰平が言う。武も眉を上げた。

「できんの?」

「まぁ親が運転手だから。見せてもらったことあるし」

 玲子の質問に武は平然と答える。玲子は面食らって黙り込んだ。

「精密な運転は求めてない。直進さえできればいいんだ」

「でもまた戦うんだよね…」

 泰平の言葉に蒼が呟く。

 思わずみんな黙り込んでしまう。

 暁広が口を開いた。

「戦おう」

 みんな暁広の方に一斉に振り向く。暁広はそのまま続けた。

「全員で生きるために、戦おう。そしてこの事件のことを伝えて、絶対に犯人に裁きを受けさせるんだ。逃げてもその先には何もない。戦わなきゃ失うだけだ」

 みんな暁広が目の前で家族を皆殺しにされたのを知っている。だからこそ彼の言葉が重く感じられた。

 茜が暁広の手を取り、彼の顔を見てうなずく。暁広も嬉しそうに茜の方を見てからうなずき、みんなの方を見る。

「泰平、勝てるんだよな?」

「断言はしない。だが可能性は高い」

 駿が泰平の方を見て尋ねる。泰平の答えを聞くと、駿はうなずいた。

「なら俺もやる」

 駿が言うと、男子の集団から遼と広志と武が言った。

「ま、どうせ死んでるはずだったんだ。やってみよーぜ」

「電車動かすのは任せてくれよ、やってみたかったんだ」

「全力を尽くそう」

 そう言ってその3人は駿の肩を叩きながら隣に立つ。さらに他の男子が続いた。

「トッシーが言うなら」

「ここまで来たし」

 圭輝と浩助が暁広の隣に立つ。彼ら3人も優しそうに笑い合った。

「これまで通りね。死にたくないから戦うわ」

「勝てばいいんでしょ?やりましょ」

「玲子も桃も怖いよ〜、明るくいこ明るく」

 桃、玲子、桜が立ち上がりながら銃の弾を込める。

「泰平が勝てるって言うなら間違いねぇ、俺は信じるぜ!」

「逃げんのも面倒だし」

「『バカにはダチが必要だ』」

 真次、正、竜の3人もそう言って泰平の隣に立つ。

「手当てする人も必要でしょ?任せて」

「生きて真実を伝えるのがブン屋ってもんよ」

「みんなイッケメェン。あたしもついてくわ」

 理沙、明美、蒼もそう言って玲子の隣に立つ。女子で意思表示をしていないのはあと半数だった。

 美咲がさえと目配せして肩をすくめる。香織、良子とも目を合わせてうなずいた。

「行くよ私も」

「私たちだけで逃げても勝ち目ないし」

「怖いけど…みんなと一緒なら」

「単独行動したら死ぬパターンなんでしょわかってる」

 女子4人がそう言うと、竜雄が数馬と佐ノ介の方を向いて尋ねた。

「数馬と佐ノ介は行くんだよな」

「まぁね」

「命懸けの戦場、怖くないのか?」

「…戦うだけさ」

 竜雄の言葉に数馬が短く答える。竜雄はうなずいた。

「わかった。一緒に行かせてくれ。友達を見捨てたくないから」

 竜雄の後ろからめいとマリが出てくる。めいも笑った。

「私も。せっかく出会えた仲間だもんね」

 めいはそう言って泰平を小突く。泰平は無視した。

 マリも佐ノ介をじっと見つめる。佐ノ介がうなずいたのを見ると、マリも気を引き締めて笑った。

「6年3組、全員一致ね」

 心音が言う。クラスメイト達は子供らしい明るい笑顔に覚悟を潜ませた。

「じゃあトッシー、号令かけてくれるか?」

 駿が暁広に振る。暁広は眉を上げた。

「俺が?」

「だってみんなの心を動かしたのはあんたじゃないか。頼むよ」

 駿がそう笑って肩を叩く。暁広は照れ臭そうに笑ってからみんなに声をかけた。

「じゃあ、円陣組んで」

 暁広に言われてみんな近くの生徒達と肩を組み、円陣を作る。

 クラスメイト達の顔を眺めながら暁広は語り始めた。

「よし…俺たちは今まで戦ってきた。大切な人を失った奴も多い。でも俺たちは生きてる。その人達の分も生きて、戦うんだ。全員で、絶対に生き延びるんだ!」

 暁広は息を吸った。

「6年3組ィ!絶対生き延びるぞォ!」

「っしゃぁッ!」

 子供達の声が寒空の下に響く。

 すぐに彼らは円陣を崩し、いつでも戦えるような態勢になった。

「よし、泰平、指示を!」

「俺、佐ノ介、暁広で先頭を行く。最後尾は数馬と竜雄、残りは間に挟まる感じで。時間がないから小走りだ。トラックに着いたらまた指示を出す」

「よぉし行くぞ!」

 泰平が言うと暁広が改めて気合を入れ直す。6年3組の少年少女たちは走り始める。

 空は灰色だった。



15:40

 小学校の裏門を出て最初の300mを少年少女達が駆ける。だが、みんな慣れない銃の重さや怪我、そもそも走るのが得意でない生徒もいることなどがあってあまり速度が出ていなかった。

 それでも全員全力で駆け抜けて左折し、商店街に差し掛かる。少し遠くに大型の引っ越しトラックが見えてきた。

「あれだ」

 泰平が言う。少年少女達は気を引き締めて全力で走り始める。

 引っ越しトラックの近くまで全員駆け込みしゃがむ。

 1番後ろの数馬と竜雄が着いたのを見ると、泰平はクラスメイト達に話し始めた。

「言った通り、非常に危険だが武に運転してもらう。助手席には数馬。トラックが止まったらみんな荷台から降りて駅の構内に駆け上がる。みんなの後ろも前も危険だから戦い慣れてる人に先頭と後ろを固めて欲しい」

「わかった。突入するときの先頭は俺と圭輝でやる」

 暁広が言うと、数馬も続いた。

「後ろは必然的に俺と武だな」

「背中は頼む」

 武に言われ数馬はうなずく。泰平もうなずいた。

「それじゃあ行こう。みんな荷台に乗って。できれば強い人で慣れてない人を挟むような形で」

 泰平が指示してみんな荷台に乗り込む。素早い動きで全員乗り込み、暁広と圭輝、浩助が最後に乗り込む間、数馬と武は助手席と運転席に乗り込む。

「キーはあるな。行けそうだ」

 武が運転席のキーを確認してから呟く。そして居住まいを正すと後ろの荷台に向けて言った。

「行くぞ!」

 武が叫ぶと、トラックのエンジンが動き出し、荷台が揺れる。

 暁広は薄暗い荷台の中を眺める。みんな銃撃に備えてしゃがみこんでいる。女子の何人かは手を組んで祈っているようだった。

「トッシー」

 暁広の隣の茜が声をかける。茜はサブマシンガンを手に緊張している様子だった。

「頑張ろう?」

「うん!全員で生き延びよう」

 暁広はそう言ってうなずくと、茜と共に外を眺める。空はやはり灰色だった。

 同じ頃運転席の武と隣の数馬は加速していく景色の中、正面の道を塞ぐ車とその周囲にいる敵の姿を見ていた。まだ銃の射程外で敵は構えているだけである。

「敵は頼むぞ」

「オメェも死ぬなよ」

 少年少女達のトラックと道を塞ぐ敵との距離が縮んでいく。

 銃声が鳴り始める。トラックのフロントガラスが割られ、荷台の女子は数人小さく悲鳴を上げる。武は伏せながら車のアクセルを踏み続け、数馬は拳銃で撃ち返すが道を塞ぐ車に跳ね返される。

 トラックは加速していく。

「ぶつかるぞぉぉおお!!」

 武が叫ぶ。みんな一斉に身構えた。


 金属同士がぶつかる激しい衝撃音が辺りに響き、道を塞いでいた車は横転した。

 トラックには凄まじい衝撃が走り、中の子供達は揺れる。

 だがすぐに体勢を立て直した数馬と暁広が叫んだ。

「走れェエ!」

 叫ぶと同時に暁広は荷台から飛び降りる。後を追って茜、圭輝、浩助と荷台から飛び降り、走り出す。流れるように次々と少年少女たちが荷台から出て左側にある左へのカーブが付いたスロープを駆け上がっていく。

 そんな彼らを体勢を立て直した敵が狙う。

 そこを数馬がトラックの助手席から2発で撃ち抜いた。

「急いで降りるんだ武!」

「ああ…!」

 武が血の流れる自分の頭を抑えながら運転席の扉を開けて銃撃の飛び交う中スロープへ走り出す。数馬もすぐに拳銃を発砲しながらトラックを降りる。

 最後尾で立ち止まって数馬を援護していた竜雄、佐ノ介、マリの3人と合流しながら5人になって銃撃しつつスロープを登っていく。

 一方で列のようになった少年少女達の先頭を行く暁広は、敵を1人至近距離からの銃撃で倒すと、圭輝、浩助、茜、泰平と共に駅の構内に突入した。

 本来障害物は何もないはずの構内に、10m間隔で3列、道を塞ぐように武器を入れる箱が並んでいる。箱の背は低く、しゃがみ込めば隠れられるが乗り越えられないほどではない。

 敵の数は多い。見たところ箱の影に隠れているものが20名、他にも奥の方に少なくとも20人はいる。

 1番手前の箱の列の陰にいる20人は暁広達にサブマシンガンを向けてきた。

「思ってた通りだ!くらえ!」

 圭輝と茜がサブマシンガンを乱射して敵を牽制している間、暁広は校長室で補充しておいた手榴弾の安全ピンを抜き、投げつける。

 放物線を描いた手榴弾は敵の密集していたところに舞い落ちた。

「退避!」

 敵が叫び、一列下がるために立ち上がる。だがそのせいで数人は圭輝や茜の乱射の餌食になった。

 爆風が舞い、さらに敵が吹き飛ぶ。黒い煙の中を突っ切るようにして暁広達は乱射しながら進んでいく。反撃の遅れた敵は倒れていく。

 暁広達の後続が来る。駿や玲子、桃といった戦い慣れているメンバーが敵を銃撃しながら暁広達の隣へ走っていく。箱の影に隠れていた敵は全滅し、北口側を固めていた敵が暁広達の方へ駆けて来る。暁広達もすぐに1番敵側に近い箱の列に陣取り、銃撃を開始する。

 敵側にも箱の列がある。暁広達が陣取っているのとは10m程の距離がある。

 敵が銃撃してくる。暁広達は箱の影に隠れてやり過ごす。

「トッシー、さっきのないの?」

「持ってない!正が来てくれれば…!」

 暁広が茜と言葉を交わす。

 暁広が周囲を見る。スロープから駅構内に差し掛かるところで正の他にも数人銃撃が止むのを待っているのがいた。彼らが来れば形勢は変わる。

「みんな、弾はまだあるか?合図したら敵に向けて撃ち続けるんだ。その間に正に来てもらえれば形勢逆転まで持ってける!」

「校長室で補充しておいたよ、任しとけ」

 暁広の言葉に駿が答える。暁広は他のメンバーを見渡す。玲子も、遼も、泰平も圭輝も、浩助も茜もみんないけるという表情だった。

 敵の銃撃が止まった。暁広は叫んだ。

「ぶっ放せ!」

 暁広の指示でみんな一斉に銃撃を開始する。敵が動けないその間に泰平が正達を手招きする。

 正と竜が走る。敵が気付いて銃だけ出して反撃しようと試みる。

 しかしすぐさま玲子の隣の桃が気づいてその銃を撃ち落とす。

 正と竜は箱を飛び越えて暁広の隣に滑り込んだ。

「待たせたな」

「頼む!」

 暁広に言われ、正がグレネードランチャーを構える。正を援護するようにみんな改めて銃撃を強める。

 正が引き金を引き、榴弾が放物線を描く。今度はしっかり踏ん張っていた正なので倒れることはなかった。

 退避しようとする敵の背中に爆風が襲いかかる。

 敵の多くは吹き飛んでいった。敵の残りは8人ほど。

 改札前に敵はいないので、逃げようと思えば逃げ切れる状況になっていた。だが暁広は叫んだ。

「追撃だ!敵は残らず殺せ!」

 暁広の言葉を聞き、玲子と茜、竜と駿が箱を飛び越えて前に出て敵に近づく。すぐにリロードを済ませた圭輝と浩助も前に出る。暁広も遅れはしたものの前に出た。

 数的有利が逆転し、敵の銃撃が薄い。そこに容赦なく銃弾の雨を浴びせる。

 瞬きする間に敵は銃撃に倒れていき、最後の1人も暁広の銃撃に自らの銃を吹き飛ばされ倒れ込んだ。さらに重傷を負っていてもう戦えないだろう。

「よし!みんなは電車へ!俺がトドメを刺してくる」

 暁広の指示を受けるとその場にいたメンバーは改札を抜けて電車の方へ駆け出した。

 その間に暁広はショットガンの装弾を済ませて最後の1人の下へ歩き出した。

「…子供?」

 歩いてくる暁広の顔を見て初めて彼は自分の敵を理解した。暁広はそんなことも気にせず銃を向けた。

「子供が…なぜ…?」

「お前たちのせいだ。子供だろうとなんだろうと生きるためには武器を取る。そしてこんな状況を作ったのはお前たち大人だ」

 敵は自嘲的に呟いた。

「そっかぁ…俺みたいなのでも…大人…なんだな…」

「罪を償えこの悪党が!」

 暁広はその敵に向けた銃の引き金を引く。床に赤色が広がった。

「おい!こっちは大丈夫か!」

 暁広の背後から声がする。暁広が振り向くと、数馬がいた。

「片付けた」

「よし!みんな先行け!」

 数馬はスロープの佐ノ介、マリ、竜雄、武に指示を出す。指示を受けた4人は改札を走り抜けて電車の方まで走って行った。

「ほらトッシーも!敵はもういないが爆撃が来るぞ!」

 数馬が言うと暁広はうなずく。

 2人は共に電車まで駆け出した。

 駆けている最中、暁広は呟いた。

「強い奴が正義、か」

「あ?」

「俺たちは強い。だから生き延びた。つまり俺たちは正義。そうだろう?」

「あー、まぁそうかも」

「みんなが強くなって、みんなが正しいことをする世の中になるといいな」

 余裕ができたのか暁広が自分の思いを吐露する。数馬は静かに、そうかもな、とだけ呟いた。


最後までご高覧いただきましてありがとうございます

Chapter2はもう少しだけ続きます。お楽しみください

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ