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The Magic Order  作者: 晴本吉陽
Chapter 2 幕開け
16/124

Chapter 2-6 校内探索 2階B班

残酷な描写が含まれています

苦手な方はご注意ください

 各階ごとに分断された6年3組は各班そのまま役割分担通りに各階を担当することになった。

 2階を担当するのはB班。魅神暁広、原田茜、野村駿、糸瑞心音、洗柿圭輝、馬矢浩助、星野玲子の7人である。


「視聴覚室ね。わかった」

 心音が携帯電話から聞こえてくる明美の声に答えて電話を切る。彼らは「Z」字の構造をした校舎の上の直線部分、北棟の1番奥の3年1組の教室にいた。

「なんだって?」

「視聴覚室でシャッターを操作しているそうよ。敵がいるみたいだから気をつけろってさ」

 心音が駿に答える。メンバーの顔は引き締まった。

「視聴覚室は南棟の1番奥、歩いている内に敵と会う確率は高そう」

「大丈夫、俺たちもこんだけ武器があるんだ、なんとかなるよ」

 玲子が呟くのに対し、暁広が言う。暁広の言う通り、この班の武器は比較的多く、強力なものが揃っていた。暁広はショットガン(レミントンM870)、浩助が拳銃(ベレッタM8000)、圭輝がサブマシンガン(ミニUZI)、玲子がリボルバー拳銃(S&W M500)と4人も銃を持っている生徒がおり、みんな身体能力や知能も高い。

「じゃあとりあえずすぐ近くの理科室から見てこう。俺と圭輝で先頭行くよ」

 暁広が言うと、みんなうなずく。暁広が教室の扉を開け、隣に圭輝が立ったのを確認すると同時に廊下に出てすぐ左側の理科室の扉を開けた。

 理科室には敵はいない。そして綺麗だった。荒らされた様子は少しもない。みんなが理科室に入ったのを確認すると暁広と圭輝が入り口を確保し、残りが理科室内を調べ始めた。

「薬品とかは後で蒼に見てもらおう」

 茜が他のメンバーに言いながら理科室の薬品を回収し始めた。他のメンバーも同じように回収を始める。

 暁広は圭輝の銃を見ながら尋ねた。

「その銃は?」

「…敵を倒して奪った」

 圭輝は一瞬目を伏せてから言う。暁広はそれ以上は尋ねず、自分の銃を眺めた。

「調べ終わったわ。視聴覚室に行きましょう」

 心音が言う。暁広がうなずくと、理科室の扉を開ける。

 暁広の視界に、廊下の奥から敵が角から曲がってくるのが見えた。

「出たな悪党…ブッ殺してやる」

「どうするの、トッシー?」

 茜が不安そうに尋ねる。暁広はすぐに返した。

「俺と浩助が準備室に回り込んで待ち伏せる。玲子と圭輝がここで敵を誘き寄せる」

「やりましょ、心音、駿、茜、隠れて」

 さっそく玲子が言いながら机を倒す。心音達3人は理科室の奥に隠れ、暁広と浩介は理科準備室の入り口へ駆け出す。理科準備室に待ち伏せした場合、理科室に突撃した敵は左側から銃撃を浴びる形になる。

 倒した机から覗く玲子の瞳に、敵の2人組がこちらに向かってきているのが見えた。15m先。

「行くよ、洗柿」

「お前が指図すんなよ」

 玲子が圭輝に短く言うと2人は机から体を乗り出し、銃の引き金を引く。

 玲子が銃の反動に押されて後ろに下がる。だが彼女の銃弾は敵の片割れの頭を撃ち抜いた。

 同時に圭輝が銃弾をばら撒き始める。

 生き残った敵の片割れはすぐに床に伏せてホフク前進で圭輝に近づいていく。

 敵が反撃で持っているサブマシンガンを撃ち返す。

 圭輝は咄嗟に伏せて机の陰に隠れた。

 机が敵の銃弾を防ぐ。

 敵がホフク前進で再び近づいていく。

「死ね悪党!」

 敵の左から扉の開く音と男子の声がする。

 振り向いてももう遅かった。

 至近距離から暁広がショットガンを敵に発砲していたのである。

 敵は吹き飛び、廊下の壁が血で赤く汚れた。

「思い知ったか!」

 暁広はそう叫びながらショットガンの撃ち終えた弾を排出する。ひと通り敵は殲滅したようだった。

「みんな大丈夫か?」

 暁広が理科準備室から出て理科室のメンバーに尋ねる。みんな全くの無傷であった。

「さすがトッシー、うまく行ったね」

「なぁに、みんなのおかげだよ」

 隠れていた茜が暁広を褒めると、暁広はそこに反動で倒れていた玲子に手を差し伸べる。玲子は少し恥ずかしそうに手を取って立ち上がった。

「この様子だったらなんとかなりそうだね。みんな、頑張ろう!」

 暁広がみんなを励ます。みんなも少し自信が付いたのかそれなりに余裕のある表情でうなずいた。

 理科室を出ると、準備室の前に転がる死体を玲子が漁る。この死体はサブマシンガンを1丁持っていた。

「大きめの銃だから駿が持つべきじゃないかしら」

「そうするよ」

 玲子は敵からサブマシンガン(SAF)を奪って駿に渡した。

「重いなこれ」

「じきに慣れるよ」

 感想を呟く駿に暁広が言う。そのままメンバー達はもうひとつの死体に近づき、装備を漁った。

「玲子はよく死体触れるね…」

「率先垂範」

 茜の感想に、玲子はひとことで答える。そして敵から2丁、拳銃を奪った。

「心音、茜、どっちも持っときなさいよ」

 玲子がそう言って心音と茜に拳銃を手渡す。2人とも覚悟したように拳銃を受け取った。

「これで全員分の武器が揃ったね。これなら大丈夫そうだ。男子で前行くから女子は後ろお願い」

 暁広が指示して7人はその隊列になる。B班はそのまま視聴覚室へ進み始める。


 渡り廊下を無事に渡り切り、このまま20mも進めば視聴覚室の入り口である。だがやはり廊下は暗い。彼らの歩みはゆっくりだった。

 それでも何事もなく視聴覚室の横の階段までは来ることができた。やはりシャッターが閉まっている。それを横目で流すと、視聴覚室の扉の前に立つ。

「行くよ、みんな」

暁広が言うと、みんな銃を握りしめる。暁広はドアノブを回すと、ゆっくり扉を押しあけた。


 視聴覚室の内部は暗かった。電気がついていない。だがなぜか部屋の奥の黒板は青く下から照らされている。

 暁広達はすぐにその答えがわかった。教室の中央に誰かがいて、教卓を除いて唯一置いてある机の上にノートパソコンが置かれている。ノートパソコンのモニターは青く光り、黒板とパソコンの操作をしている人間の顔を照らしていた。

「やぁれやれ、神聖な教育の場にそんな薄汚いものを持ち込むなんて。私の生徒達とは思えませんねぇ?え?」

 ノートパソコンの前に頬杖をつきながら男は気だるそうに言う。暁広達にとっても聴き馴染みのある声だった。

「紺野先生…あなただったんですね」

 心音が言う。紺野はニヤリと笑ってうなずいた。

「そうですね。確かに私が君たちを閉じ込めました」

「開けてください、今すぐ」

 玲子が銃を向けながら脅しにかかる。

「そうしなければ殺す、ですか?」

「いいえ」

 玲子の銃を下ろさせながら暁広が前に出る。そしてまっすぐ紺野の方を向いた。

「紺野先生は何か事情があってこうしているんでしょう?俺たちは協力し合えるはずです。みんなで協力することが正しいことだから」

 暁広はそう言って笑いかける。紺野も微笑んだかと思うと、鋭く言い捨てた。

「ぬるい」

 紺野の殺気が鋭い。思わず生徒達は身構えた。

「協力することが正しいこと?ならばどうして世界はこうなってる?どうやら君たちには指導が必要なようですね」

 紺野はそう言うと机の中から拳銃を引き出し、生徒達に向けた。

 紺野はまず暁広に狙いをつける。

 暁広もショットガンを構えるが、紺野の銃弾がショットガンに飛び、銃ごと暁広は吹き飛ばされた。

 すぐに圭輝がサブマシンガンを乱射する。

 銃弾から身を隠すようにして紺野が後ろに下がり、教卓の陰に隠れる。

「待て圭輝!パソコンに当たる!」

 乱射を続けようとする圭輝に対して駿が止めにかかる。

 生徒たちはパソコンと教卓を挟んで紺野と向かい合う形になっていた。

 だがパソコンを撃てば脱出できなくなることは分かっていたので、下手に発砲できずにいた。

「浩助!玲子!クロスして前進!」

「わかった!」

 床に倒れながら暁広が指示を出す。浩助が左から紺野の方に進み、玲子が右から紺野の方に進んでいく。

「圭輝、玲子の援護!駿は浩助!」

 暁広が続けて指示を出し、それぞれ動き出す。その間に暁広は茜と心音を指で近くに呼び、小声で指示すると、彼女達2人は暁広の横に広がり、しゃがみこんで拳銃を構えた。

 紺野が浩助達を迎え撃とうと教卓から身を乗り出した瞬間だった。

「撃て!」

 暁広の声がする。茜と心音と共に暁広は紺野に銃を向ける。同時に大量の銃声が鳴り響いた。

「しまった…!」

 紺野の声を聞き、暁広は勝利を確信した。

 紺野は短く悲鳴をあげるとその場に銃を落として倒れる。右腕と右胸に銃弾の傷を負いながら、紺野は天を仰いだ。

 生徒たちは銃を向けながら慎重に近づく。紺野は銃に向かって這いずるが、すぐに取り囲まれたことに気づいて動きを止めるとため息を吐いた。

「ガキだと思って侮ったのが間違いだった…こんなに綺麗に連携を決めてくるとはね…」

「シャッターを開けてください。そうすれば助けます」

 心音が言う。紺野は首を横に振った。

「ガキに助けられてたまるか」

 紺野はそう吐き捨てると自分の銃に飛びつこうとする。

 すぐさま玲子が拳銃を構え、紺野の背中に銃弾を叩き込んだ。

 紺野がパタリと床に張り付くように倒れ、玲子は銃の反動に負けて体勢を崩していた。

「なんでだ…俺たちは助けるって言ったのに」

「死んで当然のクズだったのさ。俺たちは正しかった」

 暁広は紺野の死体を見下ろしながら呟き、圭輝がそう言って暁広の背中を叩いた。

 玲子が紺野の死体から拳銃を回収している最中、心音がパソコンを調べる。

「なんとかシャッターは上げられそう。やるね」

 心音が言うと、みんなうなずく。そのまま彼女は慣れない手つきでパソコンのキーボードを叩き、携帯電話を取った。

「みんな、シャッターは開いたはず。どう?」

 心音が尋ねると各階の携帯電話を持つ生徒たちが答え始めた。

「1階C班です、階段も窓も使えるみたい。職員玄関は後で確かめる」

 1階の明美が電話で答える。次に答えたのは3階の美咲だった。

「3階A班、こっちも同じ。だけど…今屋上にいて…外に…」

 美咲の声が詰まる。嫌な予感がした暁広はすぐに視聴覚室のカーテンを開き、外を見る。

 曇り空に大きな黒い点が浮かんでいる。暁広が改めて目を凝らして見ると、黒い点はヘリコプターだった。

「あの方角は体育館に向かってる…各班で1人か2人強いのを送ってくれ!俺と一緒に体育館の様子を見に行く!残りは保健室で待機してくれ!」

 暁広が電話越しに言う。心音も非常事態を察して暁広の指示を反復して携帯に叫ぶ。暁広はすぐに圭輝と浩助に声をかけた。

「待ってトッシー、私も行く!」

 駆け出す暁広の隣に並んで茜が言う。暁広はうなずくと心音に指示を出す。

「俺たちが体育館から戻ってくるまで保健室で待機しててくれ!」

「わかった!」

 暁広は走り、その横に圭輝、浩助、茜が並んで走る。

「トッシー、どうしてそんな焦ってるんだ?」

「ヘリの飛んでった方向が体育館の方だったんだ、もしかしたら手遅れかもしれない…!」

 暁広は家族の安否が不安だった。不安を押し殺すようにして、ただひたすら走るのであった。

最後までご高覧いただきましてありがとうございます

まだまだ急展開が続きます。どうぞお楽しみください

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