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The Magic Order  作者: 晴本吉陽
Chapter 1 少年たち
10/124

Chapter 1-8 秘密基地

 翌日 12月25日 12:50

 数馬は自宅から先端が三角形の、長柄のシャベルを片手にリュックを背負って近所の天見山にやってきた。

 天見山は、山といっても実際はただの小高い砂で出来た丘である。街灯の1つもないような空き地で、代わりに慰霊碑がひとつ置いてあり人もあまり通らないので子供達の遊び場になっていた。

 数馬は坂道を登り山頂の広場に出ると、そのまま北側、正面の松の木がたくさん生えている斜面に立つ。そして出来るだけ木に囲まれながらも掘りやすそうなポイントを見つけると、そこにシャベルを突き立て、黒い軍手を両手にはめた。

「よう数馬、早いな」

 数馬の後ろから声がして、振り向くと佐ノ介が同じように長柄のシャベルを持ってやってきた。

「よ、忘れ物はないな?」

「あぁ、エアガンにペーパーナイフ、ドライバーもあるぜ。お前こそ忘れ物ないよな?」

「当然。十徳ナイフにカッター、エアガンまでありゃ十分だろ」

「何と戦うんだろうな俺たち」

 佐ノ介の冷静なひとことに数馬は大笑いする。着ている紺色のフリースの内ポケットに入れていたソーダシガレットの箱を取り出し、中から1本取り出すと口にくわえた。佐ノ介も自分の焦茶色のフリースのポケットからソーダシガレットを取り出してくわえる。

「やっぱこれっしょ」

「食い終わったらやるか」

 佐ノ介の言葉に数馬もうなずくと、くわえていたソーダシガレットを噛み砕き、飲み込む。

 改めてシャベルを握ると、山の北側の入り口から同い年くらいの男子が3人ほど登ってきているのが見えた。

「お、待ってました」

 数馬が軽妙な言い口で3人に笑いかける。左から、河田泰平、魅神暁広、馬場浩助である。

「待たせたな。もう始まってるか?」

「これからさ」

 暁広の言葉に数馬が軽口で返す。みんなすぐに背中のリュックをそこに置いた。

「じゃあ俺と浩助は木材取ってくるよ」

 暁広は言うが速いか浩助を連れてその場を立ち去る。スコップを持っていた泰平は数馬と佐ノ介に合流して穴を掘り始めた。

「泰さん、ブルーシートは?」

「リュックにある。ところで木材はどこから取ってる?」

「廃材置き場があるらしいぜ。鉄板もあるそうだから取ってくると思う」

 3人は短くやり取りを交わしながら穴を掘り進んでいく。泰平が持ってきていた砂を入れる布袋に砂を詰めながら3人はやはり掘り返していく。


 数分後、暁広と浩助はそれぞれ長さ1mくらいの薄い木材の束と、縦横80cm×80cmくらいの薄い鉄板を持って戻ってきた。

「お、いいじゃん」

 暁広は戻ってくるなり言う。穴の大きさは直径50cmくらいで深さは15cmくらいだった。

「まだまだッ。やると決めたからにはどんどん掘るぞ」

 泰平が持ち前の勤勉さを穴掘りに向けて言う。どちらかと言うとガリ勉の泰平が遊びに熱中する姿が、暁広にはどこか面白おかしく見えた。

「ほれイケメン君よ。顔汚したくはないだろうけど働いてもらうぜ」

「何すればいい?」

「泰さんとかわりばんこで穴掘ってくれ」

 佐ノ介が言うと、暁広もうなずき、泰平からスコップを受け取る。そのまま5人は穴を掘るのだった。


14:00

「いい感じじゃないか!?」

 暁広がそう言ったのは穴を掘り始めて1時間が経とうとしている時だった。穴の深さは1mほどになり、中に入るとこの中で1番背の高い数馬の胸の高さまで入るほどになった。

 穴の直径も1mほどで、かなり窮屈ではあるが5人入るほどの大きさになった。穴の淵には砂袋を置き、その上に鉄板を被せれば簡単に落ちることはない。それをさらに木材で支えるので穴の中に隠れるのには最適である。

「あぁ、必死に掘った甲斐があったな」

 浩助が呟く。後ろでは数馬、佐ノ介、泰平がハイタッチを交わしていた。

「さぁて、あそび」

 少年たちが意気込んで穴に降りようとした刹那だった。



 1発の銃声が町に響き渡ったのである。



Chapter 1 完

最後までご高覧いただきましてありがとうございます

Chapter1はここで完結です。一気に不穏な空気が漂ってまいりました。

The Magic Order、ここからが本番です。お楽しみください。

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