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臆病な僕が電子の妖精と出会って強くなったら、夢に出てくる美少女を探すことになってしまった!? ~夢だとばかり思っていたら、きみに生身の体があるなんて聞いてないよ!~  作者: 佐々木尽左
第8章 首都近郊魔窟の攻略

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八王子魔窟下位層

 僕が初めて人を撃ってから一週間以上が過ぎた。あの後も中位層に潜っては探索を繰り返し、魔物との戦いを繰り返している。幸いにも僕はどうにか成長することができているようで、以前ほど中位層で苦労することはなくなっていた。


 そうして八月も半ばを過ぎた頃、地上に戻ってきたときにミーニアさんから告げられる。


「次からは下位層に向かいましょうか」


 どうやら僕の実力は及第点に達していたようだ。


 翌日の休みに必要な準備を済ませると、いよいよこの魔窟(ダンジョン)の最も厳しい層へと向かう。


 上位層と中位層を丸一日かけて踏破し、潜入一日目の夜に下位層手前までたどり着いた。そして、交代で休憩する直前にミーニアさんから告げられる。


「下位層の探索は三日して一度地上に戻ります。ただ、優太の夏休みの残り日数からすると、この下位層に潜れるのはあと一回でしょう。ですから、ここからは魔窟(ダンジョン)の最奥部を最短で目差そうと思います」


「行けそうですか? あいや、行けるんですね?」


「ソムニにも頑張っていただく必要はありますが、ここまで来たのなら今月中には到達したいですから」


”ふふん、任せなさい!”


「それと、ここから先はハンターチームも滅多には入りません。冒険を求めるハンターくらいでしょう。今のあなたなら、この意味がわかりますね」


 緊張した面持ちで僕はうなずいた。危険(リスク)利益(リターン)が釣り合わないんだ。危険度が跳ね上がるんだろうな。


 気になったことを僕はミーニアさんに尋ねる。


「銃や鉈は通用しますよね?」


「場合によっては通用しないです。その場合は、わたくしの魔法を付与してから戦ってもらうことになります」


「魔法の付与か。ということは、鉈で接近戦なんですね」


 小銃と大型拳銃が通用しないというのは正直怖い。今回は対魔物用大型鉈も持って来てるけど、いきなりこれで戦うことになるわけだ。


 顔がこわばる僕の様子を見たソムニが明るい調子で声をかけてくる。


”大丈夫だって! 一応この魔窟(ダンジョン)の一番奥に行ったハンターは何人かいるんだから、行けるわよ!”


「そうだよね。まったくの不可能じゃないんだ」


”ま、アタシがいる以上はどうにかしてあげるわよ。この下位層に続く坂道から結構な魔力が流れてくるし、アタシにとっては都合がいいわ”


「なんで都合が良いの?」


”なんかわからないけど、調子が良くなるのよね”


 根拠が曖昧すぎて僕には良くわからなかった。それでもソムニがそういうのなら頼れるんだろう。


 時間が来ると雑談を終えて片方は寝て、もう片方は周囲を警戒し始めた。最初の見張りは僕だ。この不寝番は眠くなるのから困る。


 それでもどうにか一晩を過ごし、パソウェアの時計が朝六時を示した。魔窟(ダンジョン)にいるから昼夜の感覚はないけど、時刻を見るとそんな気になるから不思議だ。


 簡単に朝ご飯を済ませると僕達は下位層に続く坂道を下りていった。


 下位層の内部は中位層よりも洞窟らしくない。全体的に淡く輝いているのはもちろんのこと、上下左右に曲がりくねっていなければどこかの遺跡と思えるほど人工の通路っぽい。更に緩やかな生ぬるい風が前からそよいでいた。


 警戒しつつ前に進む僕にミーニアさんが話しかけてくる。


「優太、この風をたどって進みましょう」


「この風って魔力噴出(マナバースト)があった場所から吹いてるんですか?」


「わたくしにもかすかに感じるほどの魔力が帯びていますから間違いないでしょう。ソムニはどう思いますか?」


”アタシもそう思う。迷わずにすむんだから楽でいいわよねー”


「そんな簡単に進めるのかなぁ」


”さぁどうかしらねー。あ、早速来たわよ”


 意識を前方に向けると五つの赤枠が見えた。六十メートル先に薄汚れたボディアーマーとヘルメットを装備した人らしき姿がある。


「人? うっ、なんだこの臭い?」


活動屍(ゾンビ)活動骨(スケルトン)ですね。ここで亡くなったハンターでしょう」


「あれって銃は通じるんですか?」


「いえ、燃やしきるか細かく砕かないといけません。特に活動骨(スケルトン)は中途半端に壊しても、他人の骨とくっつきますから」


「うわぁ、めんどくさい」


 顔をしかめながらも僕は小銃を手放して対魔物用大型鉈を手にした。使うのは何気に久しぶりだけど、ここで使うとは思わなかったな。


 活動屍(ゾンビ)活動骨(スケルトン)も動きがゆっくりだ。元々そうなのかもしれないけど、原因の一つは装備したままの強化外骨格にあると思う。動力が切れると重いだけだからね、あれは。


 鞘から引き抜いた僕の対魔物用大型鉈に手をかざしたミーニアさんは何か短い言葉をつぶやいた。すると、刀身全体がぼんやりと白く輝く。


「魔力を付与しました。これで活動屍(ゾンビ)を斬ってください。ボディアーマーの装甲も切れますよ」


「そりゃすごい。でも、活動骨(スケルトン)はどうするんですか?」


「わたくしが倒します。これで」


 微笑みながら呪文を唱えたミーニアの横から、四体の石人形(ストーンゴーレム)が地面からせり上がってきた。いつも素材を回収するときに使っているやつだ。


 何をするのかわかった僕はうなずくと活動屍(ゾンビ)に向かって行く。動きが遅いから僕の方から出向く必要があるんだ。


「うぅ、ああぁ」


 さすがに腐っているだけに異臭がひどかった。先頭を歩く活動屍(ゾンビ)が腕を突き出してくる。


 顔は崩れているけどかろうじて男だとわかるその活動屍(ゾンビ)の両腕を一本ずつ切り落とした。強化外骨格の上からでもあっさりと刃が通ったことに僕は驚く。


 ミーニアさんの言葉を確信できた僕は次いで左肩から右腹にかけて切断した。重みに耐えかねた体が内臓を溢れさせながら地面に倒れる。


”なるほど、とりあえず動けなくして後はミーニアに任せたらいいのね”


「ああ、そういうことなんだ」


 いつのものように動かなくなるまで斬る必要がないことをソムニの言葉で僕は気付いた。それならずっと戦いは楽になる。


 残る二体の活動屍(ゾンビ)も動きが遅いことを良いことに手早く体を切断して動けなくした。


 三体とも動けなくすると僕はミーニアさんの方を見る。活動骨(スケルトン)は床に倒されて石人形(ストーンゴーレム)に片っ端から粉砕されていた。


 何となく同情しながらも僕はミーニアさんに声をかける。


活動屍(ゾンビ)を動けなくしましたよ」


「わかりました。後は任せてください」


 そう言うと、ミーニアさんは僕と交代で活動屍(ゾンビ)の前に立ち、いつもの呪文を唱えた。そして、活動屍(ゾンビ)の肉体が溶けてゆく。


「下位層って銃よりも魔法の方が役に立ちそうですね」


「科学は物理的な相手には圧倒的な効果がありますが、非物理的なことには弱いですからね。魔力の影響が色濃いこういった場所になりますと、どうしても魔法に後れを取ってしまいます」


「そうなると、思った以上にこれが役立つんだ」


 手にした対魔物用大型鉈を見ながら僕がつぶやいた。動きが遅くて力も大したことのない相手だったからこそ何てことなかったけど、これから先のことを考える頭が痛くなる。


「これだったら、もっと格闘術と剣術に力を入れておけば良かったな」


”まーそこはね。夏休みが終わったらまたメニューをちょこちょこって変えましょ”


「銃さえあれば大抵は何とかなるって思ってたんだけどな。意外にそうでもないや」


”そもそも閉鎖環境だからすぐに接近戦になっちゃうっていう問題もあるしね”


 これからの課題を突きつけられた僕はため息をついた。ともかく、今は生き残らないといけない。


 ミーニアさんから素材回収処理が終わったと声をかけられる。残ったのは古びた装備の残骸だけ。ここで死んだら僕もこうなるんだろう。それは嫌だな。


 こうならないようにと思いながら僕はまた進み始めた。

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