第7話 ルー
魔法使い候補がいる酒場を見つけた勇者オトメと占い師ミド。
結構な繁盛店のようだ。
二人目の仲間をゲットするため、いざ、店内へ!
「旨そうな匂いしてんなぁ。いいか?ミド。行くぞ」
俺はミドを庇いながらハネ戸を押して中に入った。
どのテーブルにも数人の客が酒を持って談笑していて、どのテーブルにも香草焼きの皿があった。
ラムチョップのような形をしたそれに齧り付きながら、どの客もガハハハと笑っている。
椅子はなく、みんな立ち飲み。
格好から察するに、客層は商人や町人が主みたいだ。
脂とすすが顔についた兄ちゃんが注文を取りに来た。
調理場とホールを兼任してるようだ。
「お二人さん、何にする」
「あー、ちょっと訊きたいんだけど、この店に魔法使いは来てるかな」
「そりゃ魔法使いくらいどこにでもいるだろうさ。
で、何にするんだよ?」
この世界で、日本のような接客を期待してはいけない。
親切丁寧は、地球の、いや日本特有の文化なんじゃないかと、俺は転生してつくづく思った。
「あー、じゃあビアと、この子には甘めのソーダ」
「肉は食わねぇのかよ?ルーの店に来てペグー食わねぇなんてあり得ねぇな」
確かに、この匂いは旨そうだ・・。
「じゃあ、ペグー二皿と、固パンを頼むよ」
ギリギリ、フランスパンと言えなくもない固パンが、俺は好きだ。
やっぱり食い物に関しては、転生前の記憶がどうしても影響するんだよな。
この世界は、似たようなものはあっても何もかも微妙に違うから、慣れるまで結構かかった。
ミドはあたりを見回している。
「みんな声がでかいからな。野郎ばっかだし。怖くないか?」
「いえ、それは大丈夫です。魔法使いの気配を読んでいるのですが、なかなか見つからなくて。でも、いるのはわかるので、このまま様子を見ましょう」
「へい、お待ち!」
運ばれてきたビアとソーダを見て俺は少し驚いた。
アルミのマグカップには、氷が入っていて飲み物が冷やされていた。
こっちの世界では冷やした飲み物が出てくることは滅多になく、井戸や川の水より冷たい状態では出てこない。
氷そのものはあるんだが、発想がないんだな。
こっちの酒はもっぱら、ぬるい、微炭酸、味が濃いの三拍子揃ってるのがお決まりだ。
ミドもカップに口をつけて思わず笑顔になっていた。
見ると、ソーダの底には手作りジャムが沈んでいる。
「おいしい、です」
俺もビアを半分くらい一気に流し込んだ。
うまい!
「はいよ、お待ち!」
続いて運ばれてきたペグーの香草焼きが、これまた旨そう。
滴る脂、数種類の香草のいい薫りが湯気と共に立ち上る。
こちらの世界の魚は臭みがない分、旨味も少ない。
逆に肉は、かなりクセがある。
ただ焼いただけでは獣臭いのが当たり前なんだ。
ここの店主、かなりやるな。
ミドが俺の腕を掴み、一際騒がしい一団を目線で示した。
町人たちに混じって、目立つ風貌の男がいる。
水色に紺の縁取りのスーツを着た金髪の青年。
勇者か?それにしては剣も何も差してない。
彼はリーダー格なのか、余程の常連か、随分顔が広そうだ。
客たちが次々声をかけては、男は陽気に挨拶を返す。
ミドが俺に耳打ちする。
「オトメさん、彼が魔法使いです」
その時さっきの店員が戻ってきた。
「旨いだろ?ここの飯は。これは全部、あの人が考えたんだよ。オーナーの息子の、ルーだ」
店員が指差す先には、あの魔法使いがいた。




