第6話 トレント到着
商業が盛んなトレントの町に到着した勇者オトメと占い師ミドの二人。
ミドの予言によると、トレントの酒場に、新たな仲間にうってつけの魔法使いが来ているはずだと言う。
ミドはまた、スカウト交渉は難航するとも言っていたが・・
次第に道が広くなり、荷車や通行人も増えてきたなと感じていると、この先がトレントだと示す看板が。
西部劇に出てくるような木製の門が見え、その上部には、
「トレントへようこそ」の文字。
じき日暮れだが入り口まで来ると既に賑やかな雰囲気が感じとれ、トレントが活気溢れる町だということが伝わってきた。
露店や大道芸、客引きで賑わう道の左右には、飲食店やよろず屋が並ぶ。
こっちの世界にはあまり音楽が浸透していないのだが、
その分手拍子で踊る文化がある。
道端まで席を作ってある店の前では、思い思いに陽気に踊る人々が何組も見えた。
俺たちはトレントの楽しげな雰囲気に圧倒されて、キョロキョロとあたりを見渡しながら進んでいった。
すると右側から小太りのおばさんがにこやかに声をかけてきた。
「お嬢ちゃん!焦がし飴だよ!食べないかい?甘くて美味しいよ!」
見るとおばさんは両手に器用に何本もの棒に刺さった飴を持っている。
焦がし飴はこの世界ではメジャーな屋台菓子で、日本のべっこう飴のようなものだ。
俺が自分の過去を思い出し転生者だと自覚したのはガキの頃なんだけど、思い出してしばらくは、元の世界の味に似ている焦がし飴をよく食べていたっけ。
ノスタルジーってやつかな。
「ミド、食うか?手に持っていけるし買ってやるぞ」
隣を見ると柄にもなく目をキラつかせている。
レモネードを甘くしろって言ってたくらいだし、ミドは本来甘味好きなんだ。
ああ、日本のウマイ菓子をいっぱい食わせてやりたいなぁ。
「ミド、何色がいい?」
おばさんはミドによく見えるように差し出してくれた。
植物の色素で色付けしてある飴は、鉱石のように見える。
「じゃあ、赤いのを」
「はいよ、これね!まいどあり!」
おばさんから渡された飴を、ミドは満足そうに光に透かして眺めた。
「うふふ」
可愛いもんだ。
あっ、そうだ、このおばさんに訊いてみよう。
「ねえねえ姉さん、ここらに魔法使いが集まる酒場はあるかい?」
おばさんはウーンと考えて、
「魔法使いだけが来る店ってのはないけどねぇ。何人か常連になってる店ならいくつかあるよ。一番近いのは、この先をしばらく進んだ右手にある店かね。ペグーの香草焼きが名物の酒場だよ。あまりいい雰囲気じゃない連中もいるけど、あんたたち大丈夫かい」
と心配顔だ。
「この町は出稼ぎに来ている人間も多いからね。飲んで喧嘩なんて日常茶飯事だからねぇ」
俺は結構酒は強いし、勇者の研修も受けてるから大丈夫だろ。
ミドだけ気をつけてやれば・・いや、ミドなら案外、何でも切り抜けそうだな。
「大丈夫だよ!ありがとな、姉さん」
「あんたたち初めてこの町に来たのかい?何か困ったことがあったら、西の外れに組合の役場があるから行ってごらん。ベル爺って人が相談にのってくれるからね」
おばさんに礼を言い、俺たちは酒場に向かった。
ミドは大事そうに飴を舐め、時折ニコニコしている。
こりゃ、町を出るときにも買ってやらなきゃな。
地面を踏み鳴らして踊る、タップダンスとフラメンコを混ぜたような躍りに興じる人々の間をすり抜けながら、
言われた酒場を探した。
アイテムや薬草を売る店もたくさんあって、明日はゆっくり観光したいとワクワクした。
しばらく進むとひときわ賑やかな声のする店があった。
窓の向こうには酒を片手に談笑する人々。
カウンターとテーブルが並んだ立呑屋のようだ。
笑い声と共に香草焼きの旨そうな匂いも漂ってきた。
「ここっぽいな。行けるか、ミド?」
ミドは大急ぎで残りの飴を頬張った。
行くぜ、魔法使い候補!




