第3話 仲間+1
桃色の装備に身を包んだ新米勇者のオトメは、旅の始まりで最初の仲間となる占い師の少女と出会う。
ダークグリーンの髪と瞳を持つ神秘的な少女、ミド。
彼女は占い師一族の娘で、中でもとびきり早熟な才能と言われているらしい。
彼女が言うには、次の町で魔法使いが見つかるらしいのだが・・
俺と、占い師の姉妹ミドとコパは、その夜はそれぞれ近くにテントを張り、川魚を焼いて食べたりしながら焚き火を囲み、眠りについた。
二人はちゃんと、数日宿泊できるくらいの支度を整えてきていたのだ。
明日の朝には、二人は離ればなれになってしまう。
姉妹のテントからは、夜遅くまで別れを惜しみ話し込む声が聞こえていた。
俺はなんとなく、テントから出て夜空を見上げた。
いつもと同じ、満点の星空だ。
こっちにも、宇宙はあった。
だけど、これは転生前に見ていた夜空とは違う。
転生したんだとわかって以来、何度もこうして夜空を見上げた。
月を探し、星座を探してみた。
月に代わる光はあった。
だけどそこにウサギはいなかった。
北斗七星もどこにもなかった。
あのとき、寂しさがこみ上げた。
○○○○○
翌朝俺が目を覚ますと、ミドが先に起きていて川で顔を洗っていた。
声をかけていいものか迷っていると、彼女はくるりと振り返って挨拶代わりに微笑んだ。
なんていうか、カンがいい子なんだなー。
「おはようございます。コパはお寝坊さんなので、まだ寝かせておいてあげてください」
心なしか、昨日より表情がかたい。
まあ、そうだよな、しばらく妹に会えなくなるんだし、
俺とだって会ったばかりで旅をしていくんだものな・・。
顔を拭いているミドの小さな背中を感慨深く見ていると、
ミドのいるあたりから、小さな声が聞こえた。
「やれやれ」
やれやれ?
声はミドに似ていなくもないが・・
まさかね、なんか低かったし?
だいたい川のせせらぎに混じっちゃって、はっきりとは聞こえなかったし?
そもそも空耳かもしれないわけでね。
いや、そうだわきっと。
立ち上がり改めてこちらに向き直ったミドは、ニッコリ微笑んだ。
フェアリー感あるナイス笑顔。
俺に漫画が描けたなら、登場させたい少女キャラ。
「コパは泣き虫さんなので、このまま出発しましょう。
別れは、昨夜じゅうぶんできましたし・・。今から向かえば、日暮れ前には魔法使い行きつけの酒場に着けるはずです」
さよならも言わずに?
「え・・でもコパちゃんが」
「妹の泣き顔は見たくないんです。コパには笑っていてほしいから」
やけに頑なだった。
言い分も、わかるような、わからないような。
だけどミドはテントから、予めまとめておいたらしい荷物を出すと、晴れ晴れとした様子で俺を促した。
コパは本当に眠りが深い子のようで、起きてくる気配はなかった。
それとも寝た振りをしているのかな。
「いいんです。大丈夫」
まあ、そこまで言うなら。
顔を見ると余計辛いってこともあるしな・・。
俺は村を出るときの見送りシーンを思い出していた。
勇者になると言って旅立つ俺を、家族や友人だけじゃなく村の皆で見送ってくれた。
泣く者あり、はしゃぐ者あり、激励する者あり。
態度はいろいろだったが、皆が口を揃えて言ったのは、
「駄目だったら戻ってこいよ」
だった。
あんなに惜しんでもらえるとは。
俺って、愛されてるなぁ!
「よし、じゃあ行くか!ミド、これから宜しくな!」
魔法使いをゲットしに、次の町に向けて出発だ。
商業が盛んなトレントの町。
ミドの占いでは、そこの酒場に魔法使い候補がいるという。
交渉が難航すると予言していたけど、
なーに、話せばわかる!
きっとそう。