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第25話 託す

幻視蝶に変化したという妹をもつ、ホウジという腕のいい按摩師に按摩を受けた勇者オトメ。

蝶になりたかった妹が、孤独な幻視蝶に変わってしまったという話に、心を痛めつつも、魔法使いルーと共に宿へ向かう。

宿では、先に到着していた占い師ミドが休んでいるはずだが・・

 俺とルーはほぼ同時に部屋から出てきた。

ルーはすっかり寝入っていたようで、間の抜けた顔をしている。

それでも満足そうに、腕を伸ばして伸びをした。


「あー、気持ちよかったな。すっかり寝ちまったよ」


ルーについたロクジって按摩も、腕がよかったみたいだ。

実は、この世界には、病気ってものがない。

あったとしても解明されていない。

医者が診るのは、怪我人だけだ。

死ぬのは、怪我か老衰。

早死にしても、個体の寿命と解釈される。

その点、按摩や鍼、薬草なんかは身近な存在だ。

ルーが言うには、回復魔法も原理は似たようなもんらしい。

身体の声を聞く、そんな感覚のこの世界が、俺は好きだ。


すっかり夜も更けたが、サロームの街は眠らない。

酒場に寄りたい気もするけど、宿にミドを一人で置いてきてるしな。

ルーも眠そうだし、今日のところは引き上げるか!


ミドの待つ宿に着くと、番頭が2階の奥だと教えてくれた。

ミドの奴、まだ寝てるかな?

それとも風呂にでも行ったか?

部屋からは明かりが漏れていないようだが・・


「ミド、寝てるかも。静かに入ろうぜ」


そう言ってルーがそっと襖を開けた。

行灯ひとつの薄明かりの向こうに、ミドがいた。

敷かれた布団の上に、呆けたように座っている。

部屋が暗いせいか?

なんだか様子が変だ。

ルーがミドの傍に屈んで心配そうに声をかける。


「ミド、どうした?」


返事がない。


「何かあったのか?」


ミドは硬直した顔を俺たちに向けた。

泣きそうな顔にも見える。


「どうしたんだ」


ミドが、絞り出すような声を出した。


「・・コパが、妹のコパがいたんです」


「え?」


「気配を感じて・・。目を開けたら、コパがそこに座っていて。でも、コパじゃない、別の何か・・」


「落ち着けよ。コパがいるわけない、夢を見たんだよ」


俺もミドの背中をさする。


「本当に、いたんです。わたくしに話しかけてきました。でも口は動いてなかったし、声もコパじゃなかった。声は・・まるでお婆さんのようでした」


俺たちは顔を見合わせた。

ルーが手早く、部屋に用意してあった湯で薬草茶を入れてミドに手渡した。

ゆっくりと飲むように促す。

こんなに心細そうな顔をするミドは、初めて見た。

幻覚を見たってことか?


ルーが、湯飲みを支えながら聞く。


「ミド、何を言われた?何を話したんだ?」


「アニさんを、連れてこいと・・」


「え?」


「言えばわかると言われました。アニさんを、明日の晩、街の外に連れてこいと。ウロで待つと・・」


まさか・・。


「幻視蝶の、妹か・・!」




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