第22話 夜市
癒しの町サロームに入ることができた、勇者オトメ、占い師ミド、魔法使いルーの三人。
そこは、擬人化した蝶たちが舞う歓楽街。
賑やかで妖艶な雰囲気に飲み込まれていく。
中央広場に設けられた舞台では、踊り子たちが舞っていた。
力強い太鼓に合わせて優雅に滑らかに舞う姿は、その音とのギャップが新鮮で、俺たちの目は釘付けになった。
ヒラヒラと彼女たちが舞う度、虹色の光がキラキラと反射して降り注ぐ。
「・・鱗粉だな」
ルーが出店で買った焼き饅頭を頬張りながら言う。
鱗粉て確か、羽についてる粉だっけ?
夜の闇の中、光に照らされて舞い落ちる様は、幻想的で心が動かされる。
てっきり『そういう町』かと期待したが、茶店の主人によると、芸が盛んな町で、卑猥なことはないのだそうだ。
(残念だ)
宿もたくさんあるし、宿それぞれに工夫をこらした売りがあった。
三人の意見を取り入れて、風呂と、この町ならではの料理が充実している宿をとった。
按摩や酒場は町中にいくらでもあるそうだ。
ミドは明日にでも美肌専門店に行ってみたいと言う。
(肌ツルツルな子供のくせに)
しかも、物価が安い!
こりゃ、しばらく滞在しないとエンジョイしきれないな。
周囲から隔離されたレトロ空間のこの町は、魅力的で居心地が良かった。
いい町を教えてもらったな~。
先に宿で仮眠をとりたいと言うお子ちゃまミドを送り届けて、俺とルーは按摩に行くことにした。
出迎えてくれた姉ちゃんたちみたいな、肌の柔らかい綺麗な人が揉んでくれるのかな。
人間だった頃、新卒入社して間もなく転生しちまった田舎出身の俺は、ほぼ初めての夜の歓楽街にわくわくが止まらない。
健全てのも、建前かもしれないし♪
「旅のお供に踊り子でもいたら、癒されていいだろうなぁ」
どの按摩店にするかあちこち見てまわりながらルーがボソリと誰にともなく言った。
嫌な予感。
ジョーダンじゃない。
戦力外の娯楽要員を雇うなんて、この貧乏パーティーが出来るか!
そのとき、誰かの肩がすれ違いざまにぶつかった。
「あら、すみません」
振り向きながら会釈したその女の微笑みに、俺のハートは射抜かれた。
色素の薄い白い肌、墨色の長い髪、染めたような口元。
なんて美人なんだ!
その女は近くの店に入っていく。
「お、おいブルー!あの店にしようぜ!」