表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/27

第2話 ミド

ぼうけんのしょはまだ前書き部分。

田舎の村から飛び出した新米勇者オトメ。

仲間を探しながら、まずは最初の町へ。

 まあ、急ぐ旅でもなし、仲間はある程度自然に任せて見つけていこう。

気が急いてると見る目が曇るかもしれないしな。

大きな町まで行かないと、情報もあまり集められないし。


そうして、長閑な風景が続く道をいいペースで進んでいくと、

最初の水場を発見した。

綺麗な小川だ。魚もいそう。

川沿いに何人かの人影が見える。

川の水で作ったレモネード売りの屋台が出てるんだ。

川沿いのレモネード売りは、こっちじゃ定番だ。

自生してる柑橘と豊富な水でコストゼロで作れるから、簡単なテーブルさえあればいい。

子供の小遣い稼ぎにもよく使われる仕事で、旅人にとっては喉の乾きを潤すありがたい給水所だ。

川から少し離れたところに林もある。

飯は魚をとればいいし、今夜はあそこで野宿するか。


「さてと」

水筒を片手に川に近づくと、お揃いのエプロンをつけた少女が二人、小走りに近寄ってきた。


「占わせてくださぁい」


占い師見習いの研修だ。

俺の村にはいなかったが、占い師見習いの子供がこうして練習がてら経験値を積むと聞いたことがある。


深い緑の巻き毛に、上目遣いの目をぱちぱちさせている少女と、金髪ボブの少女。

胸元には練習生のバッジ。

恥ずかしそうにモジモジして、めっちゃ妹キャラ。

うんうん、頑張っておるのだな。

占わせてやろう。


「いいよ」

「わあ、ありがとうございますぅ」

ボブの子がそう言って、さくらんぼ色の唇でにっこり笑った。


「どうやって占うんだ?」

「では、両手を出してくださぁい」


俺が言われた通りに両手を前に出すと、彼女は小さな手で軽く握った。

「手から出る気の流れを読み取りますねっ」


それから、真剣な表情で俺の手を見つめ始めた。

その真面目くさった顔が可愛いから、俺は思わずニヤニヤしてしまった。

腕のほうはわからないけど、何事も経験だしな。


「町に向かっていらっしゃいますね?そこに暗雲が立ちこめています」


いきなりの不吉な予言。


「えっ?」

「お兄さんの肩に、雲のように不穏の気配がありますっ」


肩に・・雲。


「えーと、肩にひび割れじゃなく?」

「違いますぅ。町で、誰かに出会うんだと思います」

「細かくはわからないの?」

「はい・・」


なんだろう、このざっくりしすぎた占いは。

今はこういうのが流行りなのか?

内容もロクでもないっぽいし。

しかも解決策的なものはナシ・・と。


俺の不満が顔に出ていたんだろう。

金髪ボブ子ちゃんはシュンとして下を向いてしまった。


「ごめんなさいぃ・・あたし、また未熟で・・」


エプロンをキュッと握っている。

こんなに可愛いんじゃ、占ってくれただけでありがたいよ。

俺も大人げなかったな。

気にしなくていいよと言おうとしたとき、

俺の腕にぶつかる柔らかいものがあった。


深緑の巻き毛ちゃんが、よろけて俺の腕を借りたのだ。

そんなに足元の悪い場所じゃないんだが、ま、いいか。


「あっ・・。すみませんっ。でもよかったらあの、代わりに占わせてくださいませんか?」

俺を見上げる大きなおめめ。

こっちは深い森のような、神秘的な可愛さだ。


それを聞いた金髪ボブ子ちゃんの表情がパッと輝いて、

「そうですっ、ミドに占わせてくださぁい」

と一転ニコニコ元気になった。

ミドってのが、巻き毛ちゃんの名前だな。


「ミドは、占い師学校の特待生で首席なんですっ」


自分のことのように嬉しそうに話す金髪ボブ子ちゃん。


「いいよもちろん。そっちの君も、まだ見習いなんだし落ち込むことないからな!」

「はいっ、ありがとうございますぅ」

「では、占わせていただきますね」


体勢を立て直し、真っ直ぐ背を伸ばしたミドは、スッと一歩下がって俺の目を見つめると、

静かなオーラが彼女を包み込んだ。

さっきまでのロリータ妹キャラと雰囲気が違う。

髪と瞳の色が、深さを増した・・ような気がする。

そしてミドは、体の奥から湧き出る澄んだ泉のような声で、

俺に告げた。


「あなた様は、これから町に行き立ち寄る店で、魔法使い候補の方と出会います。その方は今後、あなた様を大いに助ける力となってくれる人物です」


「おおっ」


「あなた様にも直感でそれがわかります。

あなた様はその方に仲間の誘いをなさいますが、

交渉は非常に難航します」


「えっ、そうなんだ」


そんなに早々仲間候補に出会えると言うのは朗報だ。

首席が言うんだからきっとそうなんだろう。


でも交渉が難しいのかぁ・・。

俺が思いあぐねていると、それを見透かしたようにミドが続ける。


「パーティーというのは、個々にただ能力があればいいというわけではありません。共に冒険をし協力して未来を切り開く同士。誰でもいいわけではないのです。その方はあなた様の力を引き出せる、よき仲間となり得る方。決して逃してはなりません。そのための解決策があります」


ミドはすぅっと息を吸い込み、


「わたくしをお連れください」


「ええっ?」


え?え?急に?

俺は混乱した。

なんだ?新手の営業か?

だがミドは真剣そのもの。

後ろでは金髪ボブ子ちゃんも沈痛な面持ちで頷いている。


「わたくしたち、今日あなた様がこの川へ来ることがわかっていました。あなた様が仲間を探していることも。好機は様々な姿であなた様に近寄ります。

ですがそのときに、あなた様がそのことに気がつかなければ、好機は去ってしまうのです。わたくしなら、見逃しはしません。

最適な仲間を見つけ、交渉する力があります」


占い師は説得の技術も学ぶんだろう。

俺は妙に納得してしまった。

だがミドが話せば話すほど、ボブ子ちゃんは俯いていく。

唇がプルプル震えて、今にも泣き出しそうだ。


「わたくしたちの家系は代々占い師なんです。わたくしたちは生まれたときから占い師になるべく育てられました。占いとは運命を掴むこと。あなた様のお仲間に加わることは、すでに決められているのです。ですから今日は、双子の妹コパとも、しばしの別れを覚悟して参りました」


そこで堪えきれなくなった金髪ボブ子ちゃん改めコパが、

わっと顔を覆って泣き出した。

そうか、二人は双子なんだ。

離れ離れになるとわかっていて、俺が来るこの場所で待っていたんだ。

そうか・・うーん。

むげにできない、この感じ。


俺は、せっかく転生したんだからって気持ちだけで勇者になったけど、なったからには、

こうやって誰かの人生に関わってくるんだな。

そうだよな・・。


「そうか・・わかった。

いや、急だしあんまりわかってないけど。

立ち話も何だし、よかったら二人にレモネードご馳走するよ。

あそこに石のベンチがあるからさ、そこでゆっくり、二人のこと聞かせて。

一緒に来てくれるのは、ありがたく受けるから」


二人は顔を見合わせて手を繋ぐと、ミドは表情を緩め、コパも照れたように少し笑ってくれた。


「いっぱい甘くしてくださいね」


姉妹は甘いレモネードを飲みながら、これまでの暮らしを

ゆっくり話してくれた。

さすが女子、細かいところも見てくれていて、

「ピンクのスーツ、可愛い」

と、嬉しいことも言ってくれた。


序盤でいきなりの急展開。

占い師が俺のパーティーに加入した。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ