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第14話 郷に入っては

臨時で開店したりんご飴屋の売上は好調。

勇者オトメと占い師ミドは、ルーに支払う手付金のために

売って売って売りまくる。

しかし約束の銀30枚には程遠く・・。

どうする、オトメ!

 日が暮れかかり、今度は仕事を終えた町人たちが、物珍しさに釣られて次々にりんご飴を買っていく。

店先を貸してくれたおばさんは、

こいつはたまげたね、と感心しきり。

「あたしは長いこと、ここで焦がし飴を売ってきたけど、

こんな光景は見たことがないよ」


しかし、俺の表情は浮かない。

しばらく前から嫌でも気づいていた。

いくら単価を上げようが、好調に売れようが、飴は飴。

銀30枚には、到底届かない・・。

どうしよう、これじゃルーを仲間にできない。


人だかりの外側が何やら騒がしい。

人々が道をあける。

なんだ・・?


こちらに歩み寄ってきた人物を見て、おばさんは相好を崩した。

「おや、ベル爺!」


目線の先には、翁の姿。

背は低いが矍鑠として、皆に慕われているようだった。

おばさんは俺たちに向かって、

「組合長のベル爺だよ。この町の実力者だ」

と教えてくれた。


「ベル爺、どうしたんだい?」

「いやなに、珍しい飴を売る若者がいると聞いてな。

ほう、これか。確かに美しいの」


ベル爺と呼ばれた翁は、そのままりんご飴をひとつ手に取り齧った。

「うん、こりゃ味のほうもなかなかじゃの」


銀一枚を俺たちに差し出す。

「ここまでの活気を生み出すとはたいしたもんだ。これは

取っておけ、若者よ」


おばさんは驚きながらも大喜び。

「あんた、ありがたくもらっておきなよ!」


「ところで」

とベル爺が俺たちに向き直った。


「見かけん顔じゃが、なぜ急にここで商売をしとる?」


俺は、ことの顛末を説明した。

自分たちは旅の勇者と占い師で、トレントには魔法使いを

スカウトしに来たこと。

酒場のルーを連れていきたいが、そのためには多額の手付金が必要なこと。


「ふむ」


ベル爺は立派な顎髭をひと撫でして、

「あの馬鹿が、法外な金を要求しおって」


その時、ルーの声がした。


「ったく、ほんと馬鹿だなお前は!1日で銀30枚も稼げるわけないだろ?商売ナメんな」


「ブルー!」


頭を掻きながら歩いてきたルーの頭を、おもむろにベル爺がひっぱたいた。

「なんじゃお前は、欲を出しおってからに。ワシに言われるがままに店をやってはいるが、お前が魔法使いで身を立てたがっていることくらい、とっくにお見通しじゃ!」


え?

てことは・・。


「こやつはワシの末の息子じゃ。ワシには何十人も子供がおるでな、町の者も全部はわかっとらんじゃろうがな」


おばさんは驚いて目を丸くした。

「おや、そうだったのかい!」


驚いたのはこちらのほうだ。

ルーの店のオーナー、ルーの父親ってのは、ベル爺だったのか。

ルーの奴、お坊ちゃんじゃねーか!


ルーは叩かれた頭をさすった。


「はなっから、そんな金取る気はねえよ。こいつらの本気を見たかっただけだ」


ベル爺は再びルーを小突いた。

「なんじゃ、大物ぶりおってからに!」


ルーはハァ、と息をつき、

りんご飴をひとつ手に取った。


「お前は商売人じゃないからわからなかったんだろうが、

銀30枚なんてどだい無理なんだよ」


大きく一口、飴を齧り、


「ま、目の付け所はよかったけどな」


そのまま一気にひとつ食べてしまった。

呆気に取られる俺とミド。


「シャンティとメイジョーには、もう話をつけてある」


それって、もしかして・・。


「しょうがねぇ、お前らのパーティに入ってやるよ。

郷に入っては郷に交われが俺のモットーだ。俺ほどいいセンいってる魔法使いは、そう見つからねぇだろうしな」


「やっ・・」

「たぁ!!」


俺とミドの声がハモった。

やった、やった!


集まっていた町人たちの間からも拍手が起こった。


「なんか知らないけど、良かったな兄ちゃんたち!」


おばさんが俺の肩に手を置いた。

「お疲れさん。よく頑張ったじゃないか。よかったら、このりんご飴はウチの店の新商品としておくれでないかい?

それで店の貸し賃は、もらったことにしよう」


「姉さん・・!」

ミドはおばさんの腰に抱きついた。

1日一緒に働いて、ミドはすっかりおばさんに懐いていたのだった。


誰かが言った。


「ルーの店に行こうぜ!祝杯だ!」


おばさんは、売上金の詰まった袋を俺に手渡した。

「あんたが稼いだ金だよ。いっといで」


俺はルーの肩に腕を回した。


「言っとくが、道中のギャラはもらうからな?」

「平気平気!任しとけって!」


最高だ。

最高にいい気分だ。







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