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第11話 商売人

魔法使い候補のルーは、俺と同じ日本からの転生者だった。

以前は中年のサラリーマンで、ぼっち食べ歩きが趣味のコミュ障だったらしい。

一夜明けて、勇者オトメと占い師ミドは、改めてスカウトに乗り出す。

 ・・おはようございます。


なんだろう、遠くで女の声がする。


「おはようございますっ」


目を開けると、そこには不機嫌そうなミドの顔があった。

そっか、ミドは夕べ先に2階に行って泊まったんだっけ?

俺はどうやら椅子で寝ちまったらしい。

見渡すと、店内はすっかり片付いていて、向かいではルーがテーブルに突っ伏して鼾をかいていた。

おーおー、夕べ泣きじゃくったせいで、顔パンパンじゃねーか。


「ミド・・お前が掃除してくれたのか?」

「そうですよっ。降りてきたら二人とも寝てて、お皿も洗ってなかったですしっ」

「ああ・・悪い」


俺は立ち上がって伸びをすると、ルーの頭をひっぱたいた。


「おい、ブルー!」


起きないので2発目。

ルーはゆっくりと顔を上げた。

むくんだ顔にはテーブルの跡がついていた。


「あー・・、寝ちまったか」


のそのそと起き出すと、ルーは頭を掻きながら厨房に入っていった。

少しするといい薫りがして、戻ってきた奴の手にはマグカップが3つあった。


「コーヒーだ。豆はないから代用品で作った、カフェインレスだけどな」


コーヒー!

こっちの世界で飲めるとは。

特に好きでもなかったのに、転生してからは飲みたくてたまらなかった。


「お嬢ちゃんには、ミルクとジャム入りな」


やっぱりルーは、ムカつくけど気のきく男だ。

俺は礼をいってカップをとった。

手のひらにじんわり伝わる熱と、立ち上る芳ばしい香りに、

俺は冷ましもせずに一口飲んだ。


「あちっ」

「馬鹿かお前は。ちゃんとフーフーしなさい。

てか、さっき呼んでたブルーってのは何だよ?」


起こすときに俺はルーをブルーと呼んだ。

勇者もどきの青いスーツを着てるから、夕べ飲んでる途中からそう呼んでいたんだが、

こいつ、忘れてやがる。


「敬称だよ敬称」

「なんだそりゃ?」


ルーは椅子に座り直し、

「さて」

と俺たちを見た。


「肝心の本題を聞いてなかったな」


ミドが俺の背中をバシバシ叩いた。

「言ってなかったんですかっ?一晩なにやってたのよ!」

「いやまあ、いろいろとね・・」


俺には任せておけないと思ったのか、ミドはルーに向き直った。


「ルーさん、わたくしたちは勇者オトメと占い師ミド。パーティに参加してくれる魔法使いを探しています。わたくしの占いでは、あなた様が適任だと。どうか一緒に・・」

「断る」

食い気味にルーが言った。


「なっ・・」

「なんでだよ!」


あのなあ、とルーはパイプをふかした。


「見ててわかっただろ?俺はいいセンいってる魔法使いでもあるが、経営者でもあるんだよ。経済最優先で動いてんの。手付金やギャラの説明もなく手伝ってくれはありえねーよな」


なっ・・。

交渉が難航するって、ギャラでー!?


「俺が当分留守にするなら店はシャンティとメイジョーに任せることになる。あの二人は優秀だが、俺がいない分を任せるとなれば手当ても増やさなきゃならない。俺だって、むろんタダ働きなんぞする気はない。手付金に、そうだな、銀30枚は払ってからじゃなきゃ話になんねえ」


ぎっ、銀30枚!?

それだけあれば新しいスーツが買える値段だぞ!

有り金全部はたくわけにはいかない。


「できないのか?なら、おとなしく帰るんだな」


ミドが心配そうに俺を見上げる。


「できる!」

「ほーぅ?」

「ちょっ、オトメさん!」


何か、何か金を作る方法。

アイデアだ、アイデアを捻り出せ!


ふと、ミドの顔を見た。

昨日トレントについたとき、焦がし飴を買ってやったら大喜びしていた。

手作りジャム、木の実のバター、ホクホク気分・・。


「これだっ!」


俺は立ち上がり手を叩いた。

うん、我ながらいいアイデアだ!


「ブルー、1日だけ待ってくれ。金は必ず作ってくる」


「今夜また、ここに飯を食いに来い。そのときに用意できてなかったら、この話はナシだ」


よーし、やってやる!

ルーをパーティに入れるんだ!









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