前日
俺は死ななかった。
また昨日に戻ってきていた。
この二日間を繰り返している。
意味が分からない。
何が起きている。どうしてこんなことになっている。
もう限界なのだ、この日常を過ごすのは……。
とりあえず俺はのろのろと登校の準備をし始めた。
学校に着くといつも通りの日常が待っていた。
三回目ともなれば、授業など聞いていられない。苦痛でしかない。
しかしこうやって普通の日常を過ごしていると、不思議と死のうなんて気分にはならなかった。
休み時間になり、俺は普通の友達と普通に談笑していた。同じ会話の内容を聞かされるのも三回目だ。リアクションも全く同じ。つまらない。
「おい、田中」
俺が呼ばれた方を向くといつものように友達の佐藤がいた。
「どうした?」
「ちょっと付き合えよ」
俺は佐藤に促されるまま、教室の外に出る。一緒にトイレへと向かった。
トイレに誰もいないことを確認し、いつも通り二人で個室に入った。
「うっ!?」
個室に入るや否や腹を思い切り殴られた。事前に腹へ力を入れていたが、それでも声は出てしまう。
「もうちょっとだけいいだろ?」
「あ、ああ……」
俺はさらに佐藤の拳を腹に何発か食らった。だがそれだけでは物足りなかったのか、佐藤は俺の服を掴み便器に叩きつけた。
「いっっ……」
「ま、これぐらいにしといてやるか。休み時間終わっちまうしな」
佐藤は個室の外に誰もいないことを確認して出て行った。俺は少しの間動けそうになかった。そのまま便器に座ってうずくまった。
俺は佐藤の友達なのだから、憂さ晴らしに付き合うのは当たり前だ。これぐらいなら慣れているのでなんともない。
「はぁ……」
俺は便器の上で一息ついてトイレを後にした。
その後もいつも通りの学校生活を送った。特にこれといった出来事もなく、退屈な日だった。死ぬ気にもならなかった。