1/4
序章
俺、田中は今日死んだ。
――はずだった。
確かに学校の屋上から飛び降りた。
それなのに今はベッドの上にいる。
病院のベッドではなく、自宅のベッドだ。
そして朝だった。
「どうしてだ」
自分の体をあちこち触ってみる。
特に異常がなかった。
明らかにおかしい。
五階建ての学校の屋上。
そこから飛び降りればただの怪我では済まない。
にもかかわらず、俺はピンピンしていた。
俺はとりあえずリビングに向かった。
いつも通り母親の姿はなかった。
テーブルには朝食が用意されている。
これもいつも通りだ。
母親は朝早くから夜遅くまで働いている。そのためあまり顔を合わせない。
しかし息子が飛び降り自殺をはかったのだ。いつも通りであってたまるか。
俺は携帯電話を開いた。
誰からもメッセージらしきものは来ていない。母親からも、普通の友達からも。
そこでふと気づいた。
「昨日の日付……?」
俺は『その日』の前日にいた。