実はすごかった
学園初日が終わった。いろいろ終わった。
『まさか、座学がぶっとうしで3時間で、しかも聞き取りで書き込むなんてね』
地獄の文字おこし。
俺、この世界の文字書けないし。
『だからこそ、授業が文字おこしなのかな。言語は聞き取りできるし、転生者への配慮なのかも』
そう思うと、助かるけどね。
それにしても、2時間体育、3時間座学。昼食挟んで、3時間の武術ってハードじゃないか。
休憩はトイレと昼食だけって、身体がついていけない。
『そうみんなに愚痴ったら、外はそれが当たり前だもんね』
モンスターが闊歩する世界じゃ、体たらくな身体じゃ生きていけないよな。
『店でも開いて外に出なければ、いい話だけど』
無理無理。何かを作る技術も知識もないし、お店開くほどの強みはない。
『アレクたちも言ってたよね。家継ぐか、冒険者になって生計たてるか、軍に入隊して国に使えるしか選択肢はないから、転生者の多くは冒険者一択になるって』
だから、文字が書けるようになるよりも、体力作りと武術を極め、サバイバル慣れすれと。
座学はモンスターの知識や、国の歴史や文化、マナーや国同士の情勢になるわけか。
『先ずは次の魔力測定までいい数値が出ることを期待しなきゃね』
そう、学園に入学して1か月をに行われる魔力測定。
その後に控える武器練成と使い魔召喚に備えて、現状の魔力値を知っておくだって。
武術では自分に合った武器は何か知るためにもあり、魔力を身体全体に馴染ませ、魔力量を向上させる意味で授業にとりていれているって教えてもらった。
『散々愚痴ってたからね。何のためにするのってぐちぐちと』
しかたないだろう。こんなこと、中学じゃやらなかったし。
少し柔道で受け身覚えるぐらいだったよ。
『平和すぎるのも大変ね』
それからは魔力測定まで、地獄のルーティンが続いた。
その間にあったことといえば、俺以外の転生者が入学してきたことや、エーテルスライムの捕獲任務があったり、転生者がアレクに決闘を挑み死にかけていたり。
あとでクラスメイトに聞いた話だと、アレクたち4人は学園の四天王と言われるくらい強いらしい。
だからイキっている勘違い転生者をボコすために、わざと挑ませるよう仕組まれているそうだ。
最初に仲良くなって助かった。
ルイの水魔法を食らってなかったら、チート余裕とか銚子にノっていたかもしれない。
ちなみに、アレクだと肉弾戦による半殺し、ルイだと水責めによる半殺し、レイだと電気魔法による感電死ギリギリの状態、ショートは土魔法で生き埋めで半殺し・・・いや窒息するわ。
『聞いただけで生きた心地がしないわね』
知らず挑んだ勇者はもれなく全員公開失禁しているらしい。
『10歳頃からこの殺人すれすれショーしているんでしょ。性格歪みそう』
一名は喜々として殺しにきてるからな。
『それも今となってはいい思い出ね。早く朝食食べにいきましょう』
そうだな、今日は待ちに待った魔力測定日。たくさん食べて、気合いれるぞ。
アレクたちに見習って、ステーキを注文した。
「染まっちまったねー」
としみじみされ、特盛ご飯とステーキを渡された。
そこまでは入らないかもしれない。
はち切れんばかりの腹を抱えて、魔力測定のためドーム型の体育館へやってきた。
開始時間はもう過ぎていて、すでに行われている中いろんな悲鳴が聞こえてくる。
「やっぱり、手抜いてるやつはわかりやすいなぁ。授業は死ぬ気で挑まないと意味ないじゃん」
落ち込んでいる連中の大半は、神の加護にあぐらをかいた転生者ばかりなようだ。
まぁ、普通は加護なんてないし、生まれつきの才能と本人の努力次第だもんな。
「あそこ、レイ」
人だかりができている。四天王として崇められているだけあって注目度がすごい。
「また魔力量が上がったみたいだね~。はしゃいじゃってかわいい~」
「えっ、これ以上要らないでしょ」
「人のこと言えない」
そういわれたルイは別室へ連れていかれる。
「なんで別室? 」
「ルイはここの測定器じゃ測れないほどの底なし野郎だからだよ~」
「城にある国最高峰の測定器じゃないとダメ」
「げげっ」
アレクは体力バカのバケモンだけど、ルイも同じバケモンだったんだな。
類は友を呼ぶってね
「ちなみに~、ルイの次に魔力が多いのがレイで、その次が俺~」
四天王恐るべし。
「次、ノボルの番」
「えっと、これに手をかざすだけ? 」
「あら、魔力測定初めて。いやーん役得」
俺がまごまごしていると、巨乳先生が興奮気味に顔を寄せてくる。
『変態、どこ見てんのよ』
「ほらほらこの横に置いてあるナイフで指切って、大丈夫消毒済みで衛星はバッチリ」
恐る恐る左人差し指を切った。
「そのままこの水晶にかざして、ほら、あなたの血が水晶に滴って混じりあっていくわ」
その様子を見つめていると、中真っ黒に変化していく。
「え、黒っていうよりどす黒い。なんだろ、この禍々しさ」
『神様の力を授かりながら、属性が闇って。あなたどうなってるの』
「まぁ、この闇。魔力も申し分ないほどの濃さ。そろそろ数値が浮かび上がるわよ」
【∞】
・・・・はい?
「なんなのこの数値見たことないわ」
巨乳先生の声に周りがざわつく。よそで測定にあたっている先生が駆け寄ってきては驚愕する。
「ただでさえ、この国で闇属性が現れること自体珍しいことなのに、その上見たことない数値なんて。あぁ、どうしましょう。学園長になんて報告をあげれば」
『どうやらとんでもないことをやらかしたようね』
俺もそう思う。さっきから冷や汗が止まんないんだよね。ハハハ。
その後別室のルイと同じ測定器を使ったが、結果は同じ。
学園長室へ連行されました。
「君がみんなが騒ぐ異端者かい? 」
目の前にこれでもかと高く調整された椅子から、幼女に見下ろされる俺。
「そうみたいです」
「ふふふ、ははは。わたしゃ嬉しいよ。学園長の座に就いてる間に勇者級の転生者に会えるなんてね。先代の悔しがる姿が目に浮かぶと、なんという優越感。まさに快感」
やべぇ、変態しかいないわ。
「で、俺はこれからどうなるの。まさかこのまま軍隊に入隊なんて」
「阿呆。そんな勿体ないことはせんわ。じっくりたっぷり時間をかけてお前を立派な勇者に仕立て上げ、世界の平和のためにこき使ってやるわ」
あはははーっとふんぞり返る姿がもう独裁者のそれ。
え、これが学園のトップとかヤバい。
「ちなみにわたしゃ、王族に繋がりあってな。この見た目は流れる龍の血で成長が止まってしまったが所以。子供だと思ったら大間違いだよ。ま、歳は秘密じゃがな」
それだけ言って部屋を追い出された。
今から王様へ報告の書簡を作るとかなんとか。
『学園を追い出されなくてよかったな』
むしろウエルカムって感じで喜んでたしな。
体育館に戻ると、ルイが抱き着いてきた。
「ぼくよりも魔力量すごいんだって。えー、模擬戦たのしみ。思いっきりヤリアオウネ」
ちょっと怖いです。