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悠遠の執行者  作者: しゅがー
4/6

異世界の授業ってこんなにハード

木目がのところどころに丸い石が埋め込まれている。

知らない天井だ。


『あ、起きた? 着替えるなら言ってよね。最低限のプライバシーは守るから』


そうしてください。


あの後城からここまで先生に連れてこられた。もちろん拒否権はない。

yesかと聞かれればそれしか受け付けてくれない。断れば話が進まないNPCのようだ。


『朝食は昨日と同じ食堂だよね。ねぇねぇ、昨日食べてくれなかったパフェ食べようよ』


いやだよ、朝からあんな甘ったるいもの食えないから。


『ちぇっ、せっかく味覚が共有できるから楽しみにしてたのに』


それ、そんなめんどくさいオプション付けるなよな。

俺の胃袋や好み無視して、あれが食べたいだの、こっち食えだのわがまま放題。

俺は大食いじゃないんで限界があります。


『好き嫌いしてたら、これ以上大きくなれないよ。ぷぷ』


お前の言うとおりにしていたら、横には大きくなるかもな。

と、着替え終わったし食堂に行くか。


食堂はこの学生寮の一階にある。もらった学生証を見せれば、好きなものがなんでも食べ放題。

後から聞いた話だが、あの王様、飢えがどれほど人を貶めるのかと、無料で提供しているんだとか。いいね、太っ腹だ。


『ねぇねぇ、ステーキだって美味しそう。アレにしよう、アレ』


パス


「こんがりステーキひとつ」

「はいよ、今日もよく食べるのに相変わらず痩せてて、若いってうらやましいわ」

「あ、昨日の」

「どうも」


熱々のステーキが皿からはみ出しそう。それに山盛りの米。

昨日気絶した俺を運んだやつは、食べる量が規格外だ。


『あなたもあれぐらい胃袋に入れば』


無理。


「何にする? 」

「あ、メニューか。 とりあえず、この朝食セット日本式ってやつを」

「足りる? 」

「いや、普通はそんなに朝から食べれないよ」


「ドーン! ルイ様のお通りだぜ! お、アレクおはよう・・・って君どっかで見た? 」

「ばか、あなたか殺しかけた旅人でしょう。あら、あなたもここの生徒になりまして? 歓迎いたしますわ、運がいい旅人さん」


えぇー、殺しかけた相手を忘れるとかこいつないわ。

殴りたい。

それよりも隣にいる子、きつそうな見た目だけどいい子だな。


『私ほどではないけど、まぁまぁの美人ね』


いや、お前の見た目わかんないし。


『なんということでしょう。こんなナイスバディのカワイ子ちゃんを捕まえておいて、見なさいこの容姿を、そして首をたれ崇めなさい』


やだ、何この子性格悪い。


「やぁやぁ、にぎやかだな~と思ったら昨日のかわいそうな人じゃん。生きてたんだよかった~」

「おい細目、俺は気づいてたからな。お前が苦しんでいる俺をみて笑ってたの」

「おや、なんのことだろう~? 」


「それでしたら、私が代表で謝りますわ。私たちの家系はどちらも血気盛んな血筋ですので。あ、おばさま、私ステーキミドルサイズでお願いいたしますわ」


いや、あんたも朝からステーキ食うんかい。


これも何かの縁と、テーブルをご一緒することになりましたとさ。

見ろよこれ、俺以外みんなステーキなの。笑える。


「これぐらい食べないと昼までもたないんだよ」

「そうそう、結構体力使うんだよ。ここの授業~。転生者が泣いてたっけ、これならまだあっちの監獄のほうがマシだって~」


ひょう。米が喉につっかえた。


「それはマジか、細目」

「も~さっきから細目細目ってひどい。あっそっか、俺たちまだ自己紹介してなかったね。うっかり~。俺はシュート・サンド・ルクセン。サンドって昔々建国時の先祖が名乗っていた名前なんだって。カッコいいでしょう~」

「私はレイ・エレク・キルですわ。シュートと同じく、建国時から続く家系ですの」


だから二人とも所作がきれいなのか。貴族の子って感じ。

対して、


「ぼくは、ルイ・アクア・ミレーヌ。ぼくも同じだよ」


絶対違うだろ、食べ方汚すぎる。


「おいこぼしてる。アレクだ」

「え、それだけ? 」

「あぁ、俺に親はない」

「彼、忌み子ですの。だから家族もなく、家名も持てない身」

「それは、なんだかごめん」

「いい。どうせ知ることになる」


『ほら、あなたも自己紹介しなきゃ』


「あ、俺は黒木登。 えっと、この世界だとノボル・クロキでいいのかな」

「やっぱり転生者だったんだ。どおりであんなとこうろうろしてたんだ」

「え、そんなに変だった? 」

「あー、ここの王様には会ったよね? 」

「会った」

「実は王様って転生者とニルっている始祖龍が混じりあった存在なんだけど、人柱になってるからか、転生者を導く看板みたいな役割になっちゃったみたいなんだよね。」

「あの転生者がよく言っている勝手に飛ばされてきたってのですわね。目的地の目印として役割を果たすなんて偉大ですわ」

「ないない、ただ面倒だからいいように使われてるだけだと思うよ~」


なるほど、転生者の100%が問答無用であの地面に落とされるのか。


「ひっどい話だよね~。生前の姿と違う姿で、よくわからない世界で生み落とされるなんて。しかも6歳から16歳と年齢がバラバラ。だけど学園で保護できる年齢って絶対狙ってるよね~」


確かに、この世界というかこの国の現状を知らなければ、そんなこと普通はしない。


『ほら、全知全能って言ってるし、なんでもお見通しなのよ』


え、じゃ今も俺のこと見られてんの。


「でもさ時々間違えて、違うところへ飛ばされるみたいだよ」

「え、そうなの」

「私が運がいいと言ったのは、そこですわ。たまに他国から転生者を自慢する声が上がるのですわ。もうすごい武力を手にしたといわんばかりに」


そういえば王様も、転生者は神の加護を持ってるから兵力になるって言ってたな。


「勇者を語る素質がある実力者なんて、ほんの一握りにも満たないのにね~」

「すんごいらしいよ。洗脳したり、実験の玩具にされたり。噂話は商人伝手にいっぱい入ってくるよ」


『それってもしかして拷問とかもあったりするのかな? 』


やめてくれ。そんな怖いこというなよ。


「ここでよかった」

「「「「当然」」」」


新しい友達ができた朝食は楽しかった。

前の世界ではこんなに人と馴染めることができなかった。だから嬉しい。


『あなたはコミュ障ではなく、ただ単にいい人に巡り会えなかっただけよ』


そうかもしれないし、そうともいえないかも。

勝手に人を判断して、壁つくっていた自覚はあるし。


『きっかけは衝撃だったけど、結果オーライね』


確かに、あんな殺される経験、普通はないよな。

しかも、その相手と気軽に話しているし。


『うんうん、これが成長する我が子を見る母の気持ち』


いや、絶対違うと思う。


部屋へ戻ると、誰かが扉の前に立っていた。


「やっと、戻ってきた。授業のことで話あるから、部屋通してくれないか」

「いやです」

「おお、悪いなって駄目なんかい。別にいいじゃねぇか。私物ないだろうし、見られて困るもんも持ち込んでないだろう? 」


ぐっ、そう言われると断りづらい。


「そんなに時間はかからん。ここでもたもたしているよりちゃっちゃと済まそう」

「わかるました。どうぞ」


渋々、昨日森で会った先生を中へ入れた。


「まず自己紹介から。ヒョウガ=スレッドだ。担任なので困ったことがあればいつでも言えよ。次にに教室だが、修練棟2階にある【オリハルコン】だ。場所は修練棟入り口に地図があるから確認すること。この学園の授業は基礎作り、武術習得、知識と応用の3つで構成している。基礎は体力と魔力の増加を目的としたもの。武術習得は、武器の扱いや戦闘技術を身につけてもらう。この2つは実技だな。知識と応用は、魔法の知識、世界の歴史と情勢、モンスターの生態などを学習する。座学なので、紙とペンを忘れずに持って来いよ。場所は机の引き出しだ。失くした場合や足りなくなれば、都度俺に言えばいい。」


「俺、この世界の文字読めないけど」


「そこは問題ない、文字を習得したければ教える時間を設ける。授業は聞き取りになるから、自分の使っていた文字でいいだろう。転生者が多い分、ギルドや他国の関所には多国語できるやつがいるから、安心するといい」


「それなら心配いらないですね」


「あぁ、それで授業の評価だが、卒業後に未来に関わる。大多数が冒険者になるが、評価がそのままギルドへ推薦として情報が流れる。ランクにも影響されるから頑張っておいて損はない。他にもモンスターの調教師や、魔術機関、王国騎士団への入隊もできる。なにを選ぶかは、ゆっくり考えればいい」


「冒険者ってモンスター討伐とか? 」

「まぁ、実力次第では、薬草摘みや清掃みたいに雑用的な依頼しかできない場合もある。ものによっては大金が舞い込んでくることもあるから。モンスターを狩るだけが仕事じゃないぞ


「さて、これから大きなイベントが2つある。まずはそこに向けて頑張るといい。言うからメモッとけよ。新一年生は入学から一か月後、魔力の測定が執り行われる。魔力は生きていく上に必要な力だからな。しっかり自分の限界を知る機会にもなるし、そのあとに控える武器練成と使い魔償還。どちらも魔力と関わりあるから、気抜いたらショボい結果に終わるぞ。二つ目がクラス対抗試合。三か月後にトーナメント形式で各クラスが決闘を行う。武器、魔法、使い魔OKの試合だ。代表は5人だ。」


「以上で説明は終わる。わからないことがあれば周りに聞け。じゃ、授業でな」


そう言って、さっさと部屋を出て行った。


『決闘は楽しそうだな』


いやいや、代表なんて無理だから。


その後教室へ向かい、自己紹介を終え、グランドで走っている。


「最後尾、もっとスピード上げろ」

「はい、時間内に一周できなかったのであと10周追加だぞ。死ぬ気で走れ」


基礎体力作りっていっても、初日からこんなに走らされるなんて思ってもみなかった。


クラス【オリハルコン】はこの王立学園ニルの中で特別クラスにあたる。

学年ごとのトップクラスの実力と権力を持つものが在籍していて、転生者といえど、限られた者しか入れないクラス。一年のクラスには、アレク、ルイ、レイ、ショートの全員が在籍していて、そのほか王族のヒカリ(男)がいるそうだ。


で、問題なのがこの最後尾にいるのが。


「ぐはっ」


吐血しながら走っておられる王族様である。

つまり、みんなにかかる連帯責任の原因が、死に物狂いで走っている国のトップの息子なのである。


「ヒカリがんばれー。お前が一周走りきる間に、あとどれぐらい周回が増えるかな? 」


鬼かお前は。


『あのスピードじゃ、まだまだ増えそうね』


俺の体力にも限界があるんだけど。


『大丈夫、その時はアドレナリンどばどば流してあげる』


鬼がここにもいた。


「先生、アレク発動してもいいですか」

「なんだ、もう弱音吐くのか。しかたない、許可する」

「任せろ」


そう言って半周先から瞬時に吐血王子のもとへアレクが追いつき、お姫様抱っこっでゴールに到着する。と思ったら王子投げ捨てて、積み重なったノルマ30周をこなしていく。

なにあの怪人。無理、いろいろ無理設定すぎる。


「いいぞアレク早く終わらせてくれ」

「そろそろ私の体力も限界ですわ」

「いけーー!!」


などとみんながアレクに声援を送る。

それにこたえるかのように、またスピードが上がった。はげた


「終わり」


俺が10周を終える前に、アレクがノルマをやり遂げた。


「ハイ終了。お前らお疲れ様」


『どうやら誰かがノルマ達成すればよかったみたい。助かったわね』


いや、たぶんアレクのあのスピードを知っていてあえてとんでもない量のノルマ出してると思う。


「はぁはぁ、黒木登、あなたなかなか根性がありますわね。初日で弱音を吐くことなく走るとは見直しましたわ」


いや、ヒメノに愚痴ってました。もういっそ仮病でも使おうか悩んでたし。


『私がそれを許すと思う? 』


だよね。


「ほら、行くよ」


ルイに背中を押されながら、グランドの中心に移動する。


「えーみなさんお疲れ様でした。いやー、先生も心苦しかったがヒカル王子の体力向上を願い心を鬼にした授業。みんなよく耐えた」

「で、結果は? 」

「んーあと半年は同じ授業の繰り返しかな」


いやーっと悲鳴があがる。

やっぱり一名除いて、この授業を喜ぶやつはいない。

当然俺も悲鳴をあげた。一名ってあれね。あの体力バカ。


「ということなので、これからもできる限りヒカル王子はアレクと行動を共にし、体力向上に尽力すること。さもないといつまでも吐血王子の汚名が拭えないからね」


あ、適当につけた名前。そうかみんなも同じこと思っているんだな。


『第一印象が挨拶がてらに顔面に吐血食らったもんね』


あれは心臓に悪かった。もうホラゲだよホラゲ。


「では身体を動かす授業はこれでおしまい。次はみんな大好き座学だよ。楽しみにね」


「うわー、このあと絶対寝るよ」

「これ以上評価落としたくないのに」

「わかっててそういう授業の組み込み方するんだよね、いじわる」


うん、先生って結構嫌われるタイプだな。

若くて独身でイケメンでモテそうなのに、担当生徒からすっごい嫌われてるのがわかる。


『食堂ボッチ飯だったよね』


誰も周りにいなかったもんな。

いなさすぎて、先生の租借音が聞こえてきそうだった。


次の座学ってなにするんだろうな。







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