捕まりましたが、なにもしてません
人間に囲まれた。
「見ない格好ね、さてはスパイ?!」
「だたの旅人です」
「ねぇねぇ、君も見たよね? エーテルスライム」
「なんですかそれ。」
「嘘良くない」
「うそじゃ「ぼく嘘ついてないもん。みたもん。アレクのばかー」え、そっち?! 」
「あーあ、泣かしちゃって君酷い人だね」
「いや向こうが勝手に泣いたんだよ」
なんなんだよ、こいつら。
俺より年上そうなやつや、下っぽいやつ。なんかのグループか?
『ここに子供がいるということは、彼らが住んでいる町が近いのでは? それにしてもスパイなんて見る目ないですね』
一言余計。
「旅人なら保護案件ですわね。今この森は規制対象になってますの」
「そうそう、だからおとなしく俺たちについてきてね~」
「え、いやだって言ったら? 」
「そんなの、ぼくが見逃すはずないじゃん。【ウォータープリズン】」
「あっ、ばかっ」
くく苦しいぃぃ
『あなたバカなんですか? 子供相手にそんなこと言ったて何されるかわかったもんじゃないでしょう。あ、あなたも子供でしたか。まぁあと、よくて数秒意識が保てれるかですけどご愁傷様』
パーン
水がはじき、地面に倒れた。
なんか言い争ってるみたいだけどダメだ、呼吸するので精一杯。
「このバカルイ。いきなり魔法で拘束するなんて死んだら怒られるのは私たちなのよ」
「ごめん、ついうっかり」
「どっちにしても先生に報告だよ~。で、誰が運ぶのかな? 」
「俺一択。そうだろ? 」
「さっすが、アレくわかってる~。ということで、よいしゃっと、はい先生への報告も頼んだよ」
「おい、それはズルいって逃げ足だけは一流だな。さてと、面倒だが、やるか」
はい、意識が戻って、誰このイケメンマジ滅びろ。
「ほう、黒髪か。また珍しいもん拾ってきたな」
俺は野良ねこか。
「ルイが見つけた」
「で、本人はどこに行ったんだ」
「スライム探し」
「そういや、お前らのグループだけまだ捕獲できてなかったな」
「ほかのやつらは? 」
「みんなノルマクリアして学園に戻った。食堂でランチ中じゃねぇか。先生も腹減った」
学園? 先生? え、こいつこの見た目で学生かよ。
たしかに制服っぽい格好してるけど、背高いな、それに腕に筋肉すごい。
俺の腕なんてごぼうじゃねぇか。
『遺伝子とは時に残酷なものね』
同感しかない。
「あの、さっきから話がよくわからないんですけど。あ、俺遠いところから来たんで、規制中なの知らずに森に入ってすみません」
「遠いところ? それならしかたないな。規制になったのは昨日からだからだ。まぁ、規制といっても、これ以上のエーテルスライムを増やさないための対策なだけで、対処さえ知っていれば特に問題はない」
「先生こいつ、そのエーテルスライムを知らないっぽいっす」
「えー、そいつは面倒だな。ダメじゃないかそんな状況で森に入ったら」
言ってることがさっきと違うんだが。
「エーテルスライムってあの緑のスライムのことですか? 」
彼らの背後を指すと、
「アレくっ」
「はい、確保」
あれよあれよと、スライムは麻袋の中へ入れられた。
「ふぅー、これじゃ一人ノルマ1匹じゃ足りなかったかもな」
「あの、捕獲が面倒ならやっつけちゃえばいいのでは? 」
「それができたら苦労はせん。おい、アレクそいつ出して殴ってみろ」
麻袋から出たスライムが、あっという間に真っ二つになったかと思うと、割れた部分がそれぞれ個々のスライムとなってポヨポヨ跳ねている。
「これが森を規制した理由だ。どっかの国のバカが攻撃してこないこのスライムを切りまくってくれたおかげで、大量のエーテルスライムが発生したんだよ」
「俺たちが数の把握と正常な数になるよう捕獲することになった」
「で、お前らはなんでてこずってるんだ? 」
「ルイが巨大エーテルスライム見つけたっていって、ほかには目もくれず走り出した」
「で、かわりにこいつを見つけたと。からぶってるねー」
「そんな個体いたら、前もってギルドなり情報が回るはずだ。あいつはバカなんだ」
もしやそれは、俺がホームランしたミックススライムでは。
『そうかもしれんが、今は黙っておこう。ややこしくなりそうだ』
「で、お前たちはどうする? アレクはノルマ達成したから帰っていいが、他が終わる気配あるか? 」
「あいつら回収してきます。3匹はこっちで確保するので詰め合わせていいっすか」
「今回は許可しよう」
お辞儀すると、森の中へ去っていった。
いや、あいつ足早くない?
『ここは異世界だぞ。あなたのいた世界の基準で考えちゃだめだ』
確かに。
「さーて、君は先生と一緒に楽しいところへ行こうか」
「えっ、あいつら待たなくていいのか」
「大丈夫、アレクたちの敵になるようなモンスターはここにはいないし。問題ない」
「監督不行きとかならない? 」
「ほう、難しい言葉よく知ってるね。でも大丈夫。この国にはそんな法律ないから」
あ、目がヤバい
『完全に怪しいやつに向ける目だな、うん。あきらめろ』
手首を掴まれ、石を持ってブツブツ言っている。
「【転移】」
視界が捻じれ、一瞬の浮遊感があり、硬い地面にお尻を打って泣いた。
「悪い悪い。転移石って珍しい代物だったの忘れてたわ。森から飛んで、この国の中心アレキアンド城の前に到着だ。ほら、今から謁見だから背筋伸ばして、しっかりやれよ」
何をだよ。て、待て。謁見ってなんだ? 何をすればいいんだ?
『この国一番のお偉いさんと会うんだ、下手打ったら打ち首で死だな』
なんでやねん。どうしてこうなった。
なんだよ、両脇に並ぶ兵の異形な姿。
なんで翼生えてんの?
爬虫類みたいな尻尾があるの?
「この城を警護している兵のほとんどは、この国を創った偉大な先祖の身内でな。他国にも負けない強さを誇るこの国の自慢の一つさ」
気になるワードがあり過ぎる。
え、ここ人間の国だよね。なのに国創ったのはドラゴンもどきってこと?
『いわゆるドラゴニュートという種族だと思うぞ。人間がドラゴンと交わってできた国なのだろう』
え、そんなんありなんですか。なんてファンタジー。
「さぁここからは君一人で行かなければならない。大丈夫。王様は見てくれはアレだけど取って食うことはないから」
見てくれって、つまりドラゴニュートの親玉なんですね。わかります。
今まで見たことのないサイズの扉がゆっくり開かれる。
くぐり、赤い絨毯を歩いていくと、何段もある上にドンと置かれた椅子に座る大きいトカゲ。
「よく来た旅の者。してどこから流れてきた。」
地響きのような低い声がズーンと耳に入ってくる。
「えっと、とても遠いところです」
「ハハハ、ふむ、誰もがそう言う。私が知りたいのはそこではない。」
「お前がどちらから来たのだ。この世界かはたまた別の世界か」
『なぜそれを知ってる』
別の世界、その認識があるってことは俺以外にも別の世界から来た人間がいるのか?
「直に白状した方がいい。この国では行わんが、他国では兵力として捕えようとありとあらゆる手段を応じるものもいるそうだ・・・あくまで噂だがな」
「兵力」
「ふむ、その反応みてもわかりやすい。実に滑稽で哀れだ。戦争を知らぬ平和な世界から来たのだな。そう、この世界、プシズムは他国同士が争いあい、魔族が生きる、血なまぐさい世界よ。勝者が敗者を蹂躙する。それが許されるのだ。その中で異世界から来たものは特殊な力に目覚めるものがたまにいてな、兵力として他国へにらみを利かせる道具にしか思っとらん輩がいる。だからこそ素直に白状し、この国に身をおけばいい。我らがいる限り、争いに民間人を巻き込ませはしないさ」
『なるほど、理解しました。ここは提案に乗りましょう』
待て、早いよ。そういって騙されたってパターンもあるだろう。
「不安がるのも無理はない。我の見てくれが信用ならんのだろう。ならこれでどうだ? 」
大きなトカゲがちっちゃくなって、成人男性になった。あれ? なんか見たことあるような。
「我は遥か太古にこの世界へと渡ったローマ人ぞ」
通りで堀の深い顔をしている。なんか教科書で見たことある。
「どうだ親近感がわいたであろう。」
そういい、ニコニコ顔だ。
『この人物も同じ地球人なのですか。ではあなたもいずれドラゴニュートに』
いや、ならないよ。
「さて、話を戻すが・・・お主はどこから来た」
「地球の日本から来ました」
「ふむ、最近はよう耳にする国名。だが、我の時代には無き故知らぬ国ぞ」
「よく耳にするって、そんなに転生者がこの国に集まるのか? 」
「ハハハ、急に威勢が良くなった。その通り、この世界にはよく流れてくる。だからこそ、危険である。先も言ったが、流れ者には神の加護が大なり小なり存在する。」
『嘘、私以外にも優れたものがいる可能性があるというの。あの方がそんなに雑に選択なさってるなんて』
「それは俺に信じ込ませようとしている嘘じゃないだろうな」
「ふっ、我に嘘と問うか。誠に愚かだ。が、正しい。よし、我の話をしよう」
新たに豪華な絨毯が、美しい女性たちによって敷かれた。それに王様が腰を下ろし、俺にも座れと手招きする。
「腹を割って話すのだ、気軽に構えればよい」
『思ってたよりいい人』
同感。
「我はな、大陸を滑る主、今となんら変わり映えせぬが王であった。血なまぐさい争いで、友も家族も民も傷つけ、建国により大地を得て繁栄と富を手にした。死を迎えた時でさえ、我が生涯を誇りに思いつつ、全てを成し遂げたかと問えば心残りもあった。」
「そこに目を付けられた」
「あの何もない無の空間で、我が信仰する神とは違うモノと会い、この世界へといざなわれた」
『心残りがあるとするならば、新たな世界で新たな国を得て、永遠の時間を過ごせ』
「気づけばこの世界の柱である始祖、ニルと名乗る龍が我と同化し、結果この地にこうして縛られ続けておる」
「ちなみにこの国ができたのは」
「はて、もう何千年も前の話だったか」
『ちょっと待ちなさいよ。こいつの話が本当だったら、地球最古の国を創ったとして、辻褄が合うわけ? 』
「納得できん顔をしているな。我も思うところはあるが、答えるとするならば、時間の流れが異なる次元にこの世界があるのだろう」
「どっちにしても、もう自分のいた世界には帰れない」
「なんだ、お主は死してこの世界へ来たのではないのか?! 」
「へっ、いや、気づいたらそこにいたし、死んだとしても自覚がない・・です」
ガタガタと身体が揺れる。この人力強い。
「はぁ、お主みたいな者は初めての反応を見せる。まぁ、我は楽しいからよい」
「よいか、この世界の名はプリズン。我は知らぬ言葉だが、流れたものが教えてくれた。その者の国ではこれを監獄と呼ぶそうだ。ククク、笑えるぞ。死してなおそんなところへ我を閉じ込めるとは、いやはや、神の考えることはわからんわからん」
「監獄? というと牢屋みたいな、犯罪を犯した人がいる場所のことか」
「お、お主は見た目通りまだ幼いのだな。そうか、そんな言葉が似つかわしくないところから流されたか難儀。実に悲しき事実。もとい、転生者の中には血なまぐさいやつも混じる。そいつらにとって食われんよう身を守るといい」
『うきゃー、犯罪者の巣窟なんて。ぺっぺっ、気持ち悪い』
「そう言ってあなたは何もしないのか」
「我か。我はただこの国と世界の安定のため人柱になっている。あとはそうだな・・・学園を一つ設けておる。いや恥ずかしい。まさか学園なるモノがここまで有能とは、生きてた頃知りえたら、どれだけの民が喜んでいただろう」
学園ってまさか
『うむ、十中八九あの先生とアレクといった者がいる場所だな』
「そこで自分自身の力と知識を学べば、生存競争が激しいこの世界の生物とも渡り合える。自分の身を守るためと思い、この地に留まらぬか? 少年よ」
答えは出さなかった。しかし、
「遅かったな。どうだ驚いたろ? うちの王様の規格外さに。 はいこれ制服と学生証と学園案内」
逃げ道はすでに潰されていた。
『まぁ、もともと高校ってとこに通うはずだったんでしょう。いいじゃない、楽しい青春が君を待っている』
異世界に来てまで勉強したくねぇーーー