はじめてのバトル
『そういえば、私のこと聞く癖にあなたという生き物の生態を何も知りえませんでした』
いやいやいや、俺を糧にしてるんだから知ってることはあるだろう
『なんと説明すれば良いか。こう、特定の単語を思い浮かべると、ずらずらっと関連した情報が流れ込んでくるような。あなたの知識を共有できるのですが、あなた個人全てを知ることはできない』
えー、じゃあ俺のこと話すか?
『yes』
俺は黒木 登
地元では上位の難関校に合格して、親からスマホ買ってもらって人生最高って時に、地獄を見せられた中学3年の一般人。特技は泳げること。苦手なのは人と仲良くすること。
『つまりコミュ障のボッチ』
悪かったな。
『ふむ、それならますます不思議。なぜお前のような何の取り柄もない人間が選ばれたのか』
その選ばれるって気になってたんだけど結局なんなわけ。
『なんだ、あの方からは何も聞かされてないのか』
そうだよ、酷いと思うだろう。
『大方、楽しくなって大事な部分を省略したんでしょう。私に使命を授かってくださった時も、肝心な内容はほとんどなく、わかるよね? だって僕様が創ったんだもん☆ とか意味不明でしたから』
毒親、嫁がせる前にちゃんと育児しなきゃだめじゃないか。
見ろよ、パニックってるのが手に浮かぶ汗でまるわかりだぜ。
『と、とにかく、この後なにかしらの神託があるかもだし。大丈夫、結果オーライ』
なにも解決できてねー。
こいつも使命とか言ってるけど、結論何もわかっていなかった。
このまま行き当たりばったりの旅になっちまう。
『とりあえず、この森を進んでいこうじゃないか。マッピングは任せなさい』
マッピング? あ、スキルの一つか。なんだろう脳内にナビ画面のようなものが浮かんでくる。
『進めばどんどん上書きしていくからな。安心して進みたまえ』
そういって崖とか行っちゃっいけないデッドゾーンが後からわかるのは安全なのか?
危険なことには変わりないんだが。
『安心しろ。解析があるから食糧の心配はない。』
草や木の実しかないけどな。
草とか生でいけるのか知らんけど。
一応人が使っているのか、割かし地面が整っている道をいく。
車輪の後が見えるので、馬車の文化でもあるのだろう。
『いやー鋭い獣の爪痕とかなくてよかったよかった』
おいおいさらっと嫌なフラグ建てようとするなよ
『でも、モンスターと戦うのは異世界物の定番でしょ。初コンタクトはほのぼの系だったけど、リアルは血なまぐさいのさ』
そうなれば全力で逃げる
『現代人のもやし体力が通じると思うか。そ・れ・に・あの方から授かったスキルを使ってみたいと思わないか』
え、まだ何かあるか。
『当然』
たすかったー。いや、解析とかマッチングとか便利スキルではあるよ。
ただ、戦闘になるとやっぱり攻撃スキルや魔法系の何かが必要じゃん。
平和な国日本で、喧嘩の経験もない俺には殴る蹴るなんて無理よ無理。
『まっ、いざって時に教えるさ。』
はぁ? 先に教えてもよくない。
『いや、その時にならないと使えないんだよ。そういうスキルなの』
えぇー。なんたか不安になってきたぞ。
あの変人何を仕込みやがったんだ。もう、普通のありふれたものでいいんだよ、そういうのは。
一気にテンション下がるは、怖くなってきたわで足元がおぼつかない。
風に揺れる木々の音にもビビりまくっちまうし、最悪。
しかもヒメノからビビりだのヘタレだの言われたい放題。
お前は実体がないから、恐怖なんて感じないんだろう。
『それこそが私の特権 にやり』
はぁー、苦労するのは俺だけなんてなんか納得がいかない。
『何を言う。私だってちゃんと仕事はしてるぞ』
確かにマッピングは進んでいるけど、それスキルだし。俺の精神で造っていると思うと余計疲れてきた。うん、考えることをやめよう。
それからは休憩がてら、解析してもらった果物を口にして、甘さに驚いたり。
時折、先ほどのスライムと同じのがうようよと出てきてビビったり。
最初の場所からはだいぶ進んだ。
スライムが攻撃的じゃなくてよかった。
『ふむ、もともとスライムはその土地を浄化してきれいにする役割を持っているのかもしれない。特にこちら側が敵意を見せなければ、襲ってこない種族なんだろう』
へぇー、モンスターなのに平和な世界だな。
『と、言ってるそばからトラブル発生だ。身を構えろ、来る』
え、いきなりどうした
「はぁ?!」
目の前にスライムはスライムでも、何十倍にも大きくなったビックスライムが突如、木々を押しつぶしながら現れた。
『これはさっきのスライムが合体して出来た【ミックススライム】、先ほどの【エーテルスライム】と違い攻撃的で、見かけたら戦闘は避け逃げるのが鉄板のようだ』
なんだそのおっかないモンスターは。名前や見た目はかわいいのに狂暴とか、逃げるっていっても倒れてきた木で足場が不安ていすぎる。
『しかたない。バトル開始だ』
その言葉に反応してか、無意識に身を構えている。
何させるんだよ。
『安心しろ。何、あなたはただ言葉を発するだけでいい。それだけでスキルが発動する。あとは結果がどうであれ、身を任せればいい』
はぁ、何わけわかんないことを。
『言え、【執行】と 』
「【執行】」
手の中から何かが出てくるって、え? これなに、貫通マジック? 四次〇ポケット?
『今回は木製バットか。いいじゃん、おもいっきりフルスイングしてホームラン見せちゃいな』
は?え? なに身体が勝手に動いてって
キーーーン
おっふ、プルプルした俺の何十倍ものサイズがある物体が見えなくなるまで飛んで行った。
『ナイス、場外ホームラン』
ウイニングランが如く、走らされる俺。
勝手に身体動かさないでください。
『えー、打ったら走らなっきゃ』
それ野球だったらの場合。これ違うスポーツ。
『よいではないかよいではない。それで分かったかね? このスキルの実力を』
いえ全く。すごいことしかわかんない。あと俺の手からバットが生えてくるくらいしか。
『そうかそうか、なかなか優秀な部下をもって助かる』
いや部下ちゃうし。
『【執行者するもの】それがこのスキルの名前。内容は、その場にいる対象者に有利に働く獲物で確実に仕留めるもしくは、不能にする力。ただし、何が相手にとって有利になるのかこちらは知りえないので、出てくる獲物はわからない。』
チートじゃん。え、なにそれ無双できるタイプ。
『確かに能力はすごいよ。けど、そんな人間そばに置きたいと思う? 』
いえ、かかわりたくないです。
『いつでも相手を裏切れる。それも確実に貶めれる力でもってして。それ程強力なスキルはそうやすやすとは使えない。知られれば、恐れられ敵を作り孤立するだけだから。』
そして、誰にも助けられず野垂れ死endってわけか。
バッドエンドじゃねーかよ。くそっ、そんな力使えっかよ。なんちゅう力渡すかなー。
バカなの? え、神って普通とか標準とか人並って単語しらないんですかね。
『デスってもどうにもなんないよ。これは受け入れるしかない事実なんだ。 』
終わった。
辺境の地でスローライフを送れってか、それなんで俺をこの世界によこした。意味不明。
『落ち込むのは早い』
えっ? あれ、人の声がする。
「本当だってば、ぼく見たもん」
「夢を? 妄想を? そうでしたらなんてお気楽なぼくちゃんなんでしょう」
「まぁまぁ、ルイのおっちょこちょいはいつものことじゃないか」
「ドンマイ」
「信じてよーー!!」
めんどくさいイベントがやってきたようだ。
『これはわっくわくのドッキドキ』