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悠遠の執行者  作者: しゅがー
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人間やめました

「いてぇっ」


顎が痛い。

そっか俺は、顔面から着地したんだな。


時間はさかのぼり、およそ3時間前


「やぁ、抽選おめでとう! 君は偉大なる神であるこの僕に選ばれた、奇跡の人。すごいよ~、自慢してもいいよ~。あ、でも気を付けて。神反対派に言ったら腸抜かれて天日干しされるから」


超絶美形のロングヘアーが、見た目に合わないぶっ飛んだ発言で宗教勧誘してくる件で、とりあえず通報する。


「もう、通報してもここは圏外だぞ☆」

バキッ

「俺のスマホー!!!」


なんてことだ、まだ買ってもらって日の浅い俺のマイスマホが真っ二つ。


「難関高校合格を条件にやっと買ってもらったのに、弁償しろよっ。俺の努力に対する慰謝料込みで億払いやがれ」


胸倉掴もうとしたら、なぜが足元に違和感。

うそっ、俺浮いてるやん。


「何ー、最近の子羊たちはそろいもそろってスマホ、スマホ。新手の宗教? こんなちっぽけな機械うつわに全知全能が負けるわけー? 」


ありえなーい、天変地異起こしちゃうぞ、とかわけわかんないこの人。

俺が浮いてるのもわけわかんない。

よく周りを見れば、ここ、店でも路地裏でもなんでもない。

真っ白。

それしか言えないくらい何もない。え、拉致監禁? ただの一般市民Aの平々凡々の俺が?


「まぁ、状況がわからない場面で動けるのはいいね☆ できれば、冷静さと判断力があればなおよしだけど、悠長にしてらんない状況だから僕様が折れてあげる。とりあえず、これ飲んで寝転んでね☆」


なんだ、口が勝手に空いて、まっずナニコレ。

苦いのと辛いのと甘いのとが混ざった味に、金属のような鉄臭さ。


「うっ、おえぇぇぇ」


「よく飲めました☆」


吐き出す前に、のど奥へナニかが通っていった。

今、腹の中で膨張して・・・「ぐああああああ」


「始まったね、それじゃあ、よい未来を子羊ちゃん☆」


そこで俺の意識は途切れた。



・・・・そうだよ。

俺は急に話しかけられたと思ったら、知らない場所で意味不明なもの食わされて倒れたんだ。

で、気づいたら地面とよろしく感動の対面とか、言ってる俺もわからん状況。


「なんだよ、この見るからに整理されてない自然な草、木。都会どこいったレベルの山しか見えない自然onlyな土地は。ここ、ぜってー日本じゃないだろう!」


あいつが本物の神なら、俺をなぜここへ連れてきた。そもそも何がしたかったんだー!!

目的を言え、目的を。

人にお願いするなら、肝心なこと言ってから連れていけ。


『ピンポンパンポン。接続が完了しました。これからあなたの専属AI内蔵型ヒメノちゃんが、あなたのお悩みをググったり、けなしたりいたしまする』


次から次と、俺のキャパ越え勘弁してくれ。


『確かにモノにつられて無理くりやる頑張り屋さんに、この現状についていけとは鬼畜です。でもそこを超えてこそ、将来性が生まれてくるのです。さぁ、過去の成果、栄光、物に金。失ったものは数知れ。、だが、取り戻せる可能性はゼロなので諦めて前に進みましょう!』


だぁー、気づきたくなかった現実を脳内で盛大に晒すなー。

やめろやめろやめろ


『そんなことし続けても、命と時間と体力の無駄なんですけども笑える』


さっきから頭の中から声が聞こえる。俺ではなく、女子の高い声が。

意味わかんないから、地面にぶつけてるけど、痛いだけでそいつにはなんもダメージはないようだ。悲しいので、やめて木に寄り添って腰を下ろした。

額はジンジンするけど血が出てない。俺そんなに石頭だったかな?


『やっと馬鹿な行動をやめてくれて大いに助かる。せっかく我らの神。あの方から授かった使命をまっとうできる。あぁ、喜びに溢れて脳汁が滝のようだわ』


なぜか知らんが、動機が激しいんだけど。おい、何勝手にアドレナリン量産してんだ!!


『はっ、歓喜のあまり脳梗塞もしくは心筋梗塞を自己発動させるとこだった。ゴメンゴ』


やってることと謝罪の落差。


そんなに嬉しいことなのか、そもそもお前は何者だ?


『もちろん、私が創られた意味がそこにあるからだ。全身が喜びで満ち溢れている。それに私自身はさっき説明しただろう? お前を糧に存在する内蔵型AI、気軽にヒメノと呼ばせてやるから光栄に思え』


俺に寄生してるのに上から目線。

絶対コレ、あの神とか基地外発言していたあいつの仕業なんだろう。それで心あたりがあるとすれば、あのまっずい謎の物体、飴に見えたけど、風味は金属という子供泣かせ使用。俺が小学生だったら飴恐怖症になってるとこだった。


『あれはいわば、取り寄せセットをぎゅっと濃縮食べやすさ満点なんちゃって飴だっけ? 私を創ったときに色々混ぜながら、コレで検問突破は間違いなし☆ とか言ってたよ』


違法薬物入りレベルの毒物。


『まぁ、身体にも精神にも特に害はない。ただ・・・』


その言葉に反応してなのか、目が痛い。

痛みに耐え目を開くと、


『人間とは言えがたいかな』


遠くにあった景色が、カメラのレンズを除く様に近づいたり遠くなったりしている。


『慣れるまでふぁいと』


揺れる視界、ピントが合わない世界に脳がパニックを起こしたのか本日2回目のブラックアウト。

俺の日常をかえしてくれ。



「うぅ」

「キュポ?」


気が付くと、俺の腹に漫画などで見る半透明の球体生物が鎮座していた。


「うわーーー」

「キュポーーーー」


声にビビったのか、そいつが慌てて木の陰に隠れた。


『脅かすなんて虐待ですー。通報した』


いや、目覚めて知らん生物とご対面なんて100人が100人同じ反応すると思うぞ。


『そんな一般ピーポーに含まれるなんて屈辱的だと気付かないのですか!』


俺が言いたいのはそれぐらい当たり前の反応しただけってことだ。気づけばか!


『うんまー、あなたを糧にしてるとはいえ、神が創りし至高の作品であるこの私に向かってバカですって。それならあなたはバカ以下のクズですわ』


その返しがあほの子だとなぜ気づかない。こいつ本当に神が創ったのか?

見た目はきれいだけど味は壊滅的な料理のようだ。


『むむむ、あの方だっけ少しはミスするくらいのおっちょこちょい性質があるのかもしれません。いやそれがあの方の魅力。目からうろこ』


こいつはダメな子だった。


「キュキュキュー?」


俺が何もしないと思ったのか、緑の球体が近づいてきて見上げてくる。

スライムのようなだけどクリクリっとした目あって可愛い。

あれ? スライムってこんなんだっけ?


『あぁ、ここの固有生物みたいですね』


なんでわかるの


『あの方が私と一緒に飴に混ぜた力。この世界でいうスキルというモノね。その【解析】で知ることができました。しかし、私もまだまだ未熟。出てくる情報が少なすぎて、個体名とわずかな生態情報しか把握できませんでしたとさ、チーン』


いや、解析ってすごい力だよ。それだけわかれば何かとこの先役に立つと思うぞ。うん、まあ落ち込むな。


『うぅ、優しい言葉をかけられるなんて屈辱』


なんでだよっ


「キュキュッポ」


俺の膝に乗ったと思ったら、少し発光した。

なんだ、温かいようなこう、ぽかぽかする感じ?

そいつがいる膝を中心に温かみが全身にまわっていく。


『なるほど、回復魔法もしくはスキルが使えるスライムなんですね。情報が更新されてクー』


うん? 魔法とスキルって違うのか。


『説明しましょう。魔法とは主に体内に充満している魔力を媒介に、使える属性によって能力が変わるものを指します。それとは違いスキルは主に、精神、肉体を媒介に扱えるようになる能力を指します。つまり、前者は属性という縛りがあり、内蔵する魔力により制限があるが、後者がそのものの努力次第で得ることができる特殊能力になるわけです。・・・たぶん』


あ・い・ま・い


「そっかお前、俺のことを治してくれるのか。ありがとうな」

「キュポ!」


お礼を言って、そっとなでると満足したのかどこか遠くへ行ってしまった。


『残念ですね、仲間になるフラグだったのに、どこで折ってしまったのでしょう』


俺はお前の知識の出所が知りたいよ。


『だから、私はあなたを糧にしていると』


はいはいはいはい。転生モノの小説さいこー。


おしいな、スライムを仲間にするなんて小説じゃあよくあることなのに。

俺にはそんなメリットも魅力もなかったのかねー。


『さっさと宿探ししますよ。日が暮れて野宿とか女の子には耐えられない』


実体のないお前に恥じらいなど無駄設定おつ。


『気づいていましたか? 私があなたの身体を支配していることを』


「んーーー」(俺が死んだら元もこうもないだろう)


『迂闊だった』


そんなこんながあって、重い腰をあげ目の前に広がる森の中へと突き進んだ。

これが道とは、さすが異世界。体力持つか心配。


『大丈夫、あの方はきっとそれを見越してあなたに細工をほどこしてます』


さらっと衝撃発言。

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