表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

森の出会い 1→7 ②

 闘犬(ウォードッグ)を一撃で葬った老人はゆっくりと遼也に近づいて来た。


「そう怯えんでもよい」


 老人に敵意がないことを確認した遼也は、気になったことを聞く。


「なあ、じいさん。この本、一体何なんだ」


 そう言って遼也は『WONDER WORLD』を取り出した。


「ほう、知識の書か。珍しい物を持っておるのう」


「知識の書?」


「そう、知識の書じゃ。それには目の前にいる敵の情報、自分の持ち物、自分の扱える力が記述されておる」


 つまり先程の戦闘で記されていた闘犬の情報は、知識の書とやらの力だったということを遼也は理解した。


「それにお前さん、見たところ儂と同じ魔術師のようじゃのう」


 老人の発言に遼也は驚く。


「俺が魔術師? 何かの間違いでは?」


「間違いではない。ほれ、これを見てみなさい」


 そう言って老人は遼也の手から『WONDER WORLD』を取ると、ページをパラパラとめくり、あるページを遼也に見せた。


 遼也 魔術師 HP20/20


 そのページにはそう記されていた。


「本当に俺が魔術師なのか?」


「だからそう言っているじゃろう。ただ、魔術を忘れてしまっているようじゃ」


 遼也は他のページをめくってみるが、何も書かれていない。


 老人の話では自分の扱える力が書かれているとのことだったが、何も書かれていないということは、今の遼也には何もできないということだろう。


「ついて来なさい。お前さんに魔術の使い方を思い出させてやろう」


 そう言うと老人は森の奥へ向かって進んで行く。


 どうすればいいかわからない遼也には着いて行くことしかできなかった。





「ここじゃよ」


 老人は森の奥にある小さな小屋の扉を開ける。


「お、お邪魔します」


 小屋の中には大量の本があり、中心にはテーブルとイスがある。


「そこに座りなさい」


 老人がイスを指さし、遼也はおとなしくイスに座った。


「では、始めるぞ」


「え? 始めるって何をですか?」


「言ったじゃろう。お前さんに魔術の使い方を思い出させるのじゃよ」


 そう言って老人は遼也の頭に触れた。


「ハァーーー!」


 老人とは思えないほどの力で遼也の頭を握る。


「痛い痛い痛い痛い!」


 あまりもの力に遼也が悲鳴を上げるが、力を弱める気配は一向にない。


 どのくらい経っただろうか。遼也は激痛でぐったりしていた。


「終わったぞ。どうじゃ、何か思い出したかね」


 遼也は痛む頭を振ると、何かを思い出した気がした。正確には覚えた気がしただが。


「これまでなかったものが目覚めたような気がします」


 そう言って遼也が『WONDER WORLD』のページをめくると、そこには、


 遼也 魔術師 HP20/20 火球(ファイア) 


 と書き加えられていた。


「でも、一つだけなんですが」


 あれだけの痛みを伴って使えるようになった魔術が一つだけ、ということに遼也は不満を覚える。


「大丈夫じゃよ。時が経つにつれ、思い出すじゃろう」


 この世界についての知識が何もない遼也は、そういうものかと納得する。


「今通って来た道を真っ直ぐ行きなさい」


 急に老人が遼也にアドバイスを始める。


「え?」


「そうすれば森を抜けて村に行けるじゃろう」


 遼也は反応できない。


「この世界には危険が溢れておる。だから気を付けて行きなさい」


「あ、あの、急にどうしたんですか?」


「儂は疲れた。もう寝る」


「そりゃあ、あんな力で人の頭握ったら疲れるでしょうよ!」


 遼也がついツッコミを入れるが、老人は部屋の奥で横になると、すぐに寝息を立て始めた。


「しょうがない、行くか」


 遼也は小屋を出て、この小屋に来るときに通った道を見る。


 長い冒険になる予感がした。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ