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森の出会い 1→7 ①

 遼也が部屋の外に出ると、そこは森の中だった。


 木々の間から日の光が差し込む、とても穏やかな森だ。


 遼也は深く深呼吸をする。


「空気がおいしい。こんなところで読書とかできたら幸せだろうな」


 静かな森の中で、ゆっくりとお気に入りの本を読む。


 そんな幸せな時間を遼也が想像していたときだった。


 ガサガサガサガサ


 遠くの茂みから物音がした。


 遼也はとっさに身構える。


 ガサガサガサガサ


 物音はだんだん大きくなっていき、確実に遼也の元へ近づいて来る。


「BOW!」


 茂みの中から飛び出してきたのは一匹の犬だった。


「危ねぇ!」


 遼也は地面を転がり、犬の飛び掛かりを回避する。


 バサッ!


 地面を転がった拍子に、かばんの中に入っていた本が落ちてしまう。


「しまった」


 遼也は落ちた本を拾う。


 そのとき、たまたま開いていた本のページが目に入る。


 闘犬(ウォードッグ) HP20/20 飛び掛かり


 ページには、そう表記されていた。


「なんだよこれ、RPGかよ」


 さっきまで何も書かれていなかったはずのページに表記された、ステータスらしき文字列。 


 遼也はもう少しこの本を調べてみたい衝動に駆られたが、そんなことをしている暇はない。


 先程の飛び掛かりが攻撃だとすれば、この犬は間違いなく(エネミー)だろう。


「GARURURURU」


 闘犬が遼也を威嚇している。


 一瞬でも気を抜けば、攻撃を喰らってしまうことは容易に想像できた。


「GAAAAAAA!」


 再び闘犬が遼也に飛び掛かる。


 だが、今度は不意打ちの攻撃ではない。


 遼也は落ち着いて攻撃を回避する。


 闘犬の動きは速いが、回避できない程でもない。しっかり見ていれば回避は可能だろう。


 しかし、遼也には攻撃の手段がない。


 もしかしたら何かあるかもしれないが、遼也には何も思い浮かばない。


「くっそ、あの部屋で武器を拾って来るんだった」


 自分には扱えないだろうという理由で武器を手に入れなかったことを悔やむ。


 だが、悔やんだところでどうにかなるわけではなかった。


 闘犬が遼也に飛び掛かり、遼也がそれを回避する。


 それが何度も繰り返されていた。


「ハァ、ハァ」


 攻撃が当たったわけではない。


 だが、遼也の体力は減っていた。


「くっそ、このままだとまずいな」


 このまま戦い続けた場合、確実に攻撃を喰らうだろうという予感がした。


 攻撃ができず、この状況が続くという現実が遼也の精神を削り、それを体力の消費と感じていたのかもしれない。


 闘犬がもう何度目かもわからない攻撃を仕掛け、遼也はそれを回避する。


 そのとき、遼也の足がもつれ、遼也は転んでしまう。


「しまっ」


 闘犬はその隙を見逃さず、遼也に飛び掛かる。


 遼也はとっさに目をつむる。


 その瞬間。


 ドカンッ!


 森中に重い音が響いた。


 遼也がそっと目を開けると、焦げた闘犬が地面に横たわっていた。


「大丈夫かい、若いの」


 そう言って森の奥から現れたのは、古いコートを着て、フードを被り、杖を持った老人だった。


 そう、遼也が「WONDER WORLD」を手に入れた店にいた、あの老人だったのだ。

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